第35話 ドクターが珍しく、現状についていけていませんよね?

帰った私達が見たものは…。


黒龍、白龍を筆頭に、樹海の真ん中を分けての、いわゆる王族、富豪の類が帰還の際に行われる

誰をはばかる事なく歩ける主人の通路。


流石に赤絨毯はありませんが、全員が頭を下げ、服従の意を示しています。


『よく妻を助けていただきました、並びに、あの邪龍討伐、お見事でした』

『これより我ら龍族は、ドクター•テツヤ様、イノリ様を族長として、粉骨砕身仕える事をお約束いたします』

黒龍に続き、白龍が挨拶をします。


ぶっちゃけ、仰々しい!


金龍、銀龍は、黒龍の両親なのですが、すでに隠居しているため、ニコニコしながら他人事のように見守っているだけです。


何、この龍達…。

つか、並んでるメンツがヤバい!


そう、私達が出会った龍は、今、名前をあげた金銀黒白の4頭と、赤青黄緑の4色龍のみ。


しかし、8頭の後ろに行列として並んでいるのは、4色のワイバーン、4色のサラマンダー(?)、が多数、その後ろに、さらに大人数の4色リザードマン。


トカゲ類は、すべて龍族のカテゴリーに入っているようです。


珍しいのは、サラマンダー達。

サラマンダーとは、火トカゲとも言われるように、当然、背中を中心に、炎に包まれた巨大なトカゲであります。


それが、

雷を纏ったサラマンダー。

草木を纏ったサラマンダー。

氷を纏ったサラマンダー。

が居るのです。


サラマンダーって呼び名以外に何かなかったの?とは思います。

おかしいですよね?


『『『『『龍王様、お帰りなさいませ!!』』』』』

「おう!みんなご苦労!」

そんな、私の心の葛藤をかき消すかのような、ドクターの一声…。


まったく動じてません!


ちょっと!ドクター?!

龍が頭を下げてるんですよ?

両側に配置し、全員が頭を下げてるんですよ?

おかしなサラマンダーがいるんですよ?


『龍王』とか言われてるんですよ?

何故、そんなに平然としていられるんですか?!


「あー!一言言っておく!!」

『『『『なんなりと!!』』』』

「龍王とか、そういう肩書きいらねーから!」


え、えぇーーー!!


『『『あははは!!』』』

付いてきた妖怪達も、これには大爆笑。


「お前らも、大王様とかやめろよな?!」

『『『『え?』』』』

刺さりましたね…これ。


「地獄はルール重視だから、閻魔の手前、聞き流していたが、こっちに来たなら、俺のルールに従え!呼び名はだ!間違っても、イニシャルで呼ぶんじゃねーぞ!!いいな!!」

『は、はい!!』

「守れなかったら、地獄に返す!」

『『『『わかりました!!ドクター様!!』』』』

え?ちょっと待って!!


『俺のルール』って何??


☆☆☆


「よって、龍王は、引き続き、黒龍がやる事!いいな?」

『ですが…』

、解体されたいのか?」

『いえ!やらせていただきます!!』

そりゃあ、一度殺されて、もう一度、プラモを組み立てるように再生させられたんじゃ、逆らう気もおきませんよね?


「俺は、龍族を従者にして、この大樹海の権利さえもらえればいいんだよ…ハッハッハ!」

『左様ですか…ドクター様がよろしければ…』

「モンスター狩り放題!実験し放題!…コホン…いや、とりあえず、この大樹海は、好きに使わせてもらうからな」

ドクター?

本音出ましたよね?今。


『あのぉ…もしかして…とは思うのですが…』

黒龍が何か言い淀んでいます。

何でしょう?


「なんだ?何か問題でもあるのか?」

ドクターの機嫌が、少し悪くなっているような気がします。


さぁ!こんな時こそ出番ですよ!

妖怪の皆さん!


…って…!いない!

いつの間に!!


どこへ行ったぁーー!!

自由すぎるだろ!!お前らぁーー!!


従者なら従者らしく、ドクターのそばに控えてろやぁーー!!


チュドォォォーーーン!!


「え?」

私が心の中で妖怪達に毒を吐いてるうちに、遠くで何やら爆発が…爆発??


「まさか!!」

「どうした?イノリ?なんだ?今の爆発は!今、主要モンスターは、ここに集まっているんだろ?」

『あちらの方向は、獣人族領ですね』

「は?」

黒龍さん、さっき、これを言おうとしてたんですね?


で、妖怪達は、樹海すべてがドクターの所有物だと思って、探検に行ったと…。


「………」

こらこら!

お前ら、好き放題やってんじゃねーよ!!


ゴゴゴゴゴゴォォ…!


更に、ものすごいオーラを発しながら、巨大化するヨーコ。


流石、妖怪の最凶種の『九尾の狐』。

おそらく、あれが本来の姿なのでしょう。


ズバァァァーン!!

ドッカァァーーン!!


何してんですか!ヨーコさん!!


『おそらく、龍族領から出て、獣人族領に入ったから、攻撃を受けたのでしょう』

『はい、この大樹海は、龍族だけの樹海ではないのです』

「マジか!!」

黒龍もとい、龍王と、奥方の白龍が説明を入れます。


そう、私はすでに侵入した事で、弾き飛ばされていますので、知っていたのです。


『我々は、ここ、獣人族領の民である!この大樹海を龍族のみのテリトリーと考える事なかれ…では、さらばじゃ!』

とか言われましたからね。


バリバリバリバリ…!!

ガチガチガチガチ…!!


今度は、反対側から、何やら不穏な音が…。


そして…極め付け。


『ギャァァーー!!』

帝国の城門内から、赤い…おそらくは血の槍、『ブラッド•スピア』とでも言うべき物が無数に出て、明らかに数十人を殺傷しております。


バサバサ…。


『失礼しちゃうわ!!誰が魔族よ!』

チーコ…いったい何がどうなってそうなった!!


『私は精霊族じゃないっての!!』

レイコは、何やらプンプン怒りながら帰ってきました。

『精霊の森を、氷漬けにしてあげたわ!』

だーかーらー!!

あんた達、何してんの?


と言うか、この2人より、やはり獣人族領の住人が心配です。


予想が正しければ、巨大化したヨーコを見る限り、当然、猫娘のミーコも同伴している事でしょう。


「どう言う事だ?何故、あちこちで戦闘が起きてる??」

まぁ、全樹海が手に入ったと思い込んでるドクターには、理解不能な出来事ではあるでしょう。


結論

①帝国側を見てる位置から、右手が獣人族領。

②左手が、精霊族領。

これは、雪女からの話から、想像ができます。

③問題はこれ…チーコが入った帝国領の中には、魔族が居ると言う事。

つまり、帝国は『魔界』?


これは波乱の予感しかしません。


雪女のレイコと吸血鬼のチーコは、早々に帰ってきましたが、ヨーコとミーコが帰ってきません。


ヨーコが巨大化したところを見ると、相当厄介な獣人族がいるのでしょう。

そして、離脱する事も出来ない状況。


ミーコは何してんの?

一緒にいるなら、加勢しなさいよ!!

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