第33話 ドクターの異世界舐めプ事情 2

次元を切り裂いて移動ができるドクターが、廃棄場に施したのは、各次元の牢獄系空間を繋げ、入れられたモノを排出する、まるで『ダストシューター』。


無限牢獄は文字通り、次元の牢獄に入れて、現世に出られなくする牢屋。

例えるなら、封印。

人間基準だと、セキュリティMAXの最新型刑務所で、終身懲役。


次元牢獄は、術者の能力により作られた次元の牢獄に拉致される、いわば術者専用の檻。


それを、『封印した』『永遠に出られなくした』『所有物にした』と、、すべて廃棄場に送り込まれるように改造したのがドクター。


やる事無茶苦茶…。


次元収納は、必要なモノ以外は、ほぼゴミ扱いになるので、遠慮なくもらっているのだとか…。


「その気になったら、次元収納を使ってる奴らの収納場所を繋ぎ合わせられるし、穴を開けて、収納されたモノを廃棄場に、落ちてしまうようにもできるんだけどな…」


やらなくてよろしい!!


という過程から生まれた廃棄場は、次元の穴が固定されているため、『自立型』にはできないとの事。


そりゃそうでしょうねっ!!


さて、ただ今の状況を説明します!


ドクターとひょんさんは、目録に沿って、何やら相談中。


私は、魔王の手のひらから血液と魔力を抽出中。

魔力枯渇により、巨大化できなくなった魔王は、ただ今貧血中…まだ生きています。


エルフ族達は、廃棄場のすぐそばに展開された『魔の森』で狩猟中。


何か、私だけヒマ…。


しかも、この魔王の血液に、毒素、魔素、とか含まれてるし…。


排出はトイレですよ?

まったく!

ドクターは、私の体をなんて仕様にしてくれちゃってるんですかね?!


仕方がないので、毒素は邪龍の毒ブレスのエネルギーに変換、魔素は、魔石に蓄積…。

その他の魔力は、私の体に内包。


これしか、をしない方法はありません!


鳥系モンスターじゃないんだから、からポンポンと、卵みたいに魔石を産んでたまるもんですか!!


ドクターは、そのへん、からっきしだってのは、わかってはいましたが、事、排出問題になったら、どうしても、意識してしまいます。


ドクターのバカ!!


☆☆☆


「イノリー!そっちはどうだ?」

「はい!血液抽出完了しました!心臓は4つあるようです!」

「よし!心臓は、2人で半分こにして食べよう」

「は?」


基本的に、魔王クラスの心臓は、2つあるのが定石で、ひとつ潰されているうちに、もう一つで活動、そして、その間に潰された心臓は、体内の魔石によって再生をする。


そのために、魔王は不死身と言われ、尚且つ長寿であるとの事。

強力な力は魔石と、体内に内包する魔力に依存し、その量で魔王のが決まる。


心臓4つの魔王は、結構希少で、食べていて損は無いとドクターは言います。


「だから、魔王を倒す時は、ちまちま削るのではなく、大魔法によってチリにするか、心臓と魔石を同時に破壊するしか倒す方法は無い」

「そんなの、倒せないんじゃ…」

「だから、封印されたんだろ?」


あー!なるほど!

って、私、倒しちゃいましたよ?

そのの魔王さんをっ!!


「普通、体内の血液を抜き切るなんて、吸血鬼でもできないからな…」

「………」

私って、いったい…。


「浄化した後の排出物は?」

「ありません!!」

「いやいや、それはないだろ??遠慮せず、排出してくれていいんだぞ?見ててやるから」

「!!!」


「ドクターのバカァー!!」


バッチィーーン!!


「ぶへ!」


ギュルギュルギュルギュル!!

ドサッ!!


チーン…。


「少し、そこで寝てて下さい!!」

あまりの失礼な発言に、私はドクターを引っ叩いてしまいました。


フン!自業自得です!

乙女心に無頓着すぎて、まだ怒りが収まりませんよ!!


「あー!!イライラするぅー!!」


私は魔王に近寄り、4つの心臓と、魔石を素手で摘出し、2つをしました。


「ふぅ…後の2つは、ドクターが起きたら渡して!いいわねっ!!」

『は、はいぃぃー!!』

ひょんさん、何故か顔面蒼白で直立不動…地獄の総大将も大した事ないわねっ!!


ゴロン…。


「魔石…結構大きいわね…重いし…」

『そ、それは、魔石というより、魔鉱石に近いものではないかと…』

「キッ!!」

『ヒッ!!し、失礼しましたぁー!!』

すっ飛んで、山積みになっている『廃棄物』の方へ消えていく、ひょん…。


(もう、さん付けなんかいらないわよね?)


「まだ怒りが収まらない!!」


乙女心は繊細なんです!!

この世の男達は、もっと乙女心を学ぶべきなんです!!


「という事で…食べちゃいましょう!ドクターに、はあげませんからね!」


ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ…。


廃棄場に響く、ガラスを削っているような嫌な音。


もちろん、私が魔石を食べている音です!


ヤケ食い最高ー!!


☆☆☆


「ふぅ…」

味も素っ気もない、ただのでしたが、ストレス発散にはなりましたよね。


バサバサ…。


「ん?こうもり?」

『はーい!吸血鬼のチーコでーす!お迎えに上がりましたぁー!』


妖狐のヨーコ

猫娘のミーコ

雪女のレイコ


このへんまでは、なんとなく理解できます。

安直すぎて…。


で、吸血鬼のチーコとは?

まさか?

『血ー子』とか?


いや、まさかね…。


「で?何のお迎え?」

『温泉へのご招待でーす!』

「温泉??」


チーコは、私が魔石を食べた事を察知し、体に適合するように、温泉に入るよう迎えにきたと言います。


とりあえず、付いてきて下さいというので、ヒマな事もあり、言われるがまま、ついて行く事にしました。


バサバサバサバサ…。

スィィーー!


コウモリとの飛行は、何かシュールな気がしますが、まぁいいでしょう。


チーコの人間体にも興味がありましたし、温泉と適合云々が、どう関わっているのか興味があったからです。


『今のままでは、魔鉱石が体内で暴走し、イノリ様の体が維持できなくなります』

「え?」


チーコは、温泉の管理人。

自ら来る住人は問題ないですが、温泉に入りに来ない住人には、声をかけたり、連れてきたりして、住人の秩序を守っているとの事です。


私の容態は、チーコの部下には任せる事ができず、管理人自ら迎えにきたと言います。


『大王様から、衣服も生きていると聞いていますので、そのまま入っていただかないと、衣服が能力に対応できなくなりますので、よろしくお願いします』

「え、えぇ…」

まったく意味がわかりません。


が!


何やら、言う事を聞いてないと、不味い事態になりそうな予感はバリバリしています。


『そりゃあ、魔鉱石が体に適合しないと、この地獄自体がヤバくなりますからね…』

「あ、そうなのね…」


そして、先程抽出した血液を補充して欲しいとの事。


…って事は…。


『はい!到着です!』


やっぱり!

俗に言う、『血の池地獄』。


『いやぁ…吸収率がいいわぁー!』

『ほんとほんと、もっと小まめに来ないとね』

なんて話しているのは、ゾンビさん。


飲料血いんりょうけつ』と書かれた場所では、見るからにだとわかる雰囲気の人達が、『プハー!』とかやっています。


「ここに入れと?」

『はい!地獄名物の血液温泉です!』

「へ、へぇ…」

『ここで、体内にある魔鉱石のを馴染ませる事ができます!尚、イノリ様の体内に蓄積されている、血液の過剰分は、自動的に排出されるので、そのままお入り下さい』

「あ、はい」


ザブン…。

「失礼しまーす」ペコリ


『うわ!大王様の奥様!』

「違います!」ギロッ!


『『『し、失礼しましたぁー!!』』』

「あれ?」


ひと睨みしただけで、温泉に入っていた全員が、蜘蛛の子を散らすように出て行ってしまいました。


ザブン…。


『ふぅ…今のイノリ様は、オーラも魔力も凄いので、あまり威嚇しないでもらえると助かります…あぁー!いい血液!』

人間体チーコさん登場。


色白で銀髪で、真っ赤な瞳…。

まさに『吸血っ』という表現が似合う、可愛い女の子でした。


『とりあえず、最低、10時間は入ってて下さいね…付き合いますから』

「じ、10時間…」


おそらく


付き合う=監視しておく


って事でしょうね。

地獄のために…。


つか、普通だったら、湯あたりするんじゃ?と、思わなくもない時間ですね…これ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る