第32話 ドクターの異世界舐めプ事情 1

申し訳ありませんが、私、ここからは見物に徹します!


だって…!

ドクターのお気に入りという廃棄場が、まさかだったなんて知らなかったんでずもの!!


そして、廃棄場に着いた私達を待っていたのは、妖怪の総大将とも噂される『ぬらりひょん』。


そう、後頭部が異様に出っ張っているお爺さんです。


がっ!!


ドクターの改造により、『のらりくらりひょん』となっているとの事。


はっきり言って意味がわかりません!!


愛称が『ひょん』。

は?


もう、悪ふざけにも程があります!!

ですので、しばらくは、『ひょんさん』と、ドクターの会話を見ているだけにしたいと思います!!


でも、廃棄場の光景には、目を丸くする他ありません。


「どう?良い品入ってる??」

『えぇ…結構貯まってますよ…目録はこちらに…』


死神 1体(大鎌付き)

魔王 3体(魔剣他、装備付き)

邪神 1体(拘束結界付き)

邪剣 5本(魔石付き)


幽霊船 2艘(宝箱付き)

呪詛  50束(1束10枚)


魔の森 1万坪(魔物付き)

街の瓦礫 1000トン(金貨500万枚付き)

瘴気の泥水 500ガロン


エルフ族 50人(罪なき人々)

デーモン族 20人(上級悪魔のみ)


その、全部、どこかしらの異世界の住人やモノですよね?


何してんですか!

この人達!!


「最近、来てなかったからなぁ…廃棄口は問題無し?」

『たまに、修復に来る番人や術者が居ますが、と話をはぐらかして、追い返しております』

「お前と話してると、やる気を無くすか、怒って出直してくる奴、めっちゃ多いからな…ハッハッハ!」


あー!それで『のらりくらり』?

じゃーない!!


何が廃棄物ですか!!

どっから持ち込んでいるんですか!!

廃棄口は、どこに繋がっているんですか!!


黙って見ていても、どんどんとエスカレートしていく二人の会話に、心の中で突っ込まずにはいられません!!


「とりあえず、瘴気の沼は、瘴気を抽出して、閻魔に…泥水は、川地獄に…」

『かしこまりました』


「幽霊船、街の瓦礫、森の材木は建築地獄行き…金貨は…うーむ、俺が拠点と定めた世界では使えないな…溶かしてインゴットに…」

『かしこまりました』


「これ、誰かが街や森ごと次元の狭間に飲み込んだって事だよな?」

『おそらくは…』

「ひでぇ世界もあったもんだ。まぁ、俺には関係ないし、どこの世界からかは分からないから、ありがたくいただいておこう」


そこまでわかってて、いただくんかい!!

せめて調べろや!!


☆☆☆


「さて、こっからが本番だ…エルフ族のみなさん!君達は、何故に入れられたんだ?」

『魔王討伐を企てたからです!返り討ちにあって、無限牢獄に幽閉されていました』

「この3人の中にいる?」

『いません…逆らう者は、すべて無限牢獄に入れて封印するんです…私達も…』


なんとかならないんですか?

罪もないエルフ族を、こんな目に合わせている魔王がのさばっている世界を救おうとは思わないんですか!!


「君達には、選択の余地がある」

『何でしょう?』


①このまま、住んでいた世界に帰って、同じように支配される

②違う世界だが、エルフ族のいる世界に行って、平和に暮らす

③クズ魔王を排除して、自分達の世界を取り戻す


『『『③でお願いできますか?』』』

「ふむ、報酬は?」

『族長に聞いてもらわないと、私達では判断がつきません…申し訳ないですが…』


『閻魔!こいつらの族長を連れてきてくれ!攫ってきてもいい、すぐに返すから』

『旦那!了解しました!』


今のは念話ですかね?


話の流れから、閻魔は、どの世界にも出入り自由ならようです。

流石は閻魔、地獄の支配者。


「ついでに、その世界の魔王も連れてきてくれ!やりたい放題な奴は許せない!」


ドクター、貴方が言いますか?それ…。


『がってん承知!』

スッ!


エルフの族長らしき老人がひとり。

偉そうな魔王が1人。

閻魔さんも、大概仕事が早いです。


『我を誰と心得る!偉大な世界の覇者!大魔王デス…』

「いや、自己紹介いらないから」

『ぬ!生意気な!』

魔王はあくまで戦闘体制です。


「なぁ、こいつで間違いないか?」

『『『はい!逆らう人達を、容赦なく無限牢獄、次元牢獄に放り込んで、世界を恐怖で支配者している魔王です!!』』』


逆らう者は排除とか、地球の歴史に名を連ねる、ちょび髭の独裁者みたいな魔王です。


「魔王、四人目ゲット!」ニヤリ


ドクターが、また、わっるい顔をしています。


はてさて、何をする気なのでしょうか?


「族長も合ってるか?」

当の族長さんは、状況が飲み込めず、放心状態。


『『『は、はい…合っています』』』

『………お主ら…』

「魔王は、もれなく実験材料だから安心しろ!」


『旦那、そこら中から魔王を掻っ攫ってきましょうか?』

「いや、魔王でも、悪い魔王ばかりじゃない…つか、基本的に、無限牢獄や次元牢獄に幽閉された、封印が必要な奴らか、次元収納に入れられた不要なものしか、ここにこねーから」

『そうでしたっけね?』

閻魔さん、少し認知症入ってます?


「各世界の、普通の次元収納から、何か取り出してみろ!そんな事をしたら、俺達は、盗賊よりタチの悪い略奪者になってしまう」

『確かに…』

「だから、捨てられたモノだけで研究をするしかないんだよ…こんな、カス同然の魔王とかを封印しなきゃいけない世界とかには、まったく興味は湧かないが、取れる素材は、すべて剥ぎ取る…いいな」

『御意…ではまた、後ほど』

「あぁ…」


これ、私も巻き込まれる雰囲気がビンビンと伝わってくるんですがっ!!


☆☆☆


「イノリ…生きているモノ…とりあえず、そこの生意気な魔王の血抜きは任せる」 

「はい!」

やっぱり!!


「その後、一緒に色々解体、素材採取…いいな」

「はい!」

魔王だよ?邪神だよ?デーモン族だよ?


なんで、そんなに平然としてるんですか?


「それが済んだら、武器、装備の改造だ!死神の大鎌が手に入ったのは収穫だ…ハッハッハ!」

「………」


こうなったドクターを止めるすべはありません。


『あのぉ…私達は何をすれば…報酬は何をお望みで?できる限りの事はさせていただきます!』

エルフの族長は、囚われていた仲間に聞いたのか、すぐさま交渉に入ります。


流石は族長、肝が座っています。


「あぁ…こいつら、仮にも魔王に立ち向かった戦士だよな?」

『左様で…』

「ならさ、魔の森、まぁ、1000坪ほどの小さな森だが、薬草、毒草の採取と、徘徊している魔物の討伐を頼みたい」

『なるほど…恩は体で返せと…』

族長!言い方!!


「もしかしたら、見た事ない魔物かもしれないし、そこに居る、お前らの世界の魔王より強いかもしれんが、できるか?」

『エルフ族は、森の民、武器さえあれば、大抵の魔物は大丈夫だと思います』

族長の頼もしい一言。


『魔王は、その圧倒的な能力に加えて、人質をとったり奇襲をかけてきたりと、魔物との戦闘とは、まったく条件が違いますから』

「よし!決まりだ…そもそも、次元牢獄に入れられている時点で、魔王側もみんなの力を恐れたからだろうしな」


「確かに!この魔王、弱っちいです!」

『『『え??』』』

私の横槍発言に、エルフさん達、唖然としております。


「あははは!イノリ!お前、怖いって…」

「ドクター!それ、私に失礼ですよ?近寄ったら、巨大化して掴まれたんで、私を掴んだ手から、血抜きをしてるだけですから…」

「お、おう…」

『これはいったい…』

エルフさん、全員固まっています。


「あぁ、気にするな…彼女の指は、血抜き、輸血ができるんだ…血液中の不純物などは、体内で浄化できる」

『へ、へぇ…』

「相手に指を刺したら、まぁ、勝ちは決定だな…」

『なんか、魔王が赤子のように見えますな…』

「だろ?」

いやいや、やってるの、私ですから!

何でドクターがドヤ顔してんですか?!


「ドクター!魔力はもらいますね?」

「あぁ、好きにしろ!」

『あの人が居たら、魔王軍を全滅させられるのでは?』

「それより、狩りだよ狩り!頼んだぜ!それが終わり次第、お前らの世界に返してやる」

『わかりました!!』

「武器庫はそっちな…剣でも槍でも弓矢でも、好きなモノを使ってくれ…適当に…あ、弓矢は、無限矢って言う種類だから、いくら使ってもなくならないから心配するな」ニコリ


『無限矢……』

まぁ?普通は、そういう反応になりますよね?


機関銃にしろ、拳銃にしろ、ドクターって、つくづく『装填系』がお嫌いなようで…。


「俺、メスしか使わねーもん、外科医だし」

とか言っています。


さよか…すっかり忘れてましたよ…ドクターの職業。

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