第31話 ドクターとの地獄巡りは一味違いました。

ズガガガガァァァーー!


「「「「ぐわぁぁぁー!!」」」」


容赦なく発射される弾丸、叫びながら死に絶える死者。


(やっぱり!)


射撃場とは、死者を的に射撃をする場所。


いや、まぁ?

拳銃を渡された時点で、予想はできていましたけどね?


部屋にいた半数は、ボロ雑巾のように血まみれで倒れ込んでいます。


「死ぬ死体って…」

「いや、だから、あれは気絶してるだけなんだって…をしてるだけ」

「と言われましても…」

「まぁ見てな」

「は、はぁ…」


私は、言われるがまま、肉塊と化した死体の山を見ていました。


そして、瞬きをした瞬間…。


「え?」


私は、ドクター同様、視力は良い方です。

しかし、いつ、どういう過程でそうなったのか、わからないレベルで、死者は復活をしていました。


違うのは、全員が震え上がっている事。


「………」

そうした、意味不明な状況に言葉が出ません。


「ドクターは、どうやって復活しているのか、見えているんですか?血痕すらありませんけど…」

「いや、わからん。俺にも見えてねえ…ハッハッハ!まぁ、イノリもやってみなよ、全員、戦争を仕掛けたり、殺人を指示したりしていたクズだから…遠慮はいらねーよ?」


ドクターは、死者の復活に関しては、まったく興味がないようです。


ただ、延々と死者を殺し、痛みを与え、恐怖を与えるだけ。


まぁ?

ここは地獄ですし?


「では!」

「げっ!悪魔が2人かよ!」


パァーン!!


「ぐわっ!」

「何がですか!失礼な!」

とりあえず、悪魔呼ばわりした奴の肩を撃ち抜きました。


「イノリ、その拳銃、装填いらねーから、好きなだけ撃っていいよ」

「余計な事教えてんじゃねーよ!クソ野郎!!」


ムカッ!!


パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン…パァーン!!


「ドクターを悪く言う人にはお仕置きですよ!!」


まぁ?

撃ってから言うのは、ですよね?


「イノリ…結構エグいな…」

「まぁ!ドクターまで!!」

「いや、お前、1人も殺してねーじゃん…アレは痛いぞ?かなーり苦しむパターンだ」


そう、私は、誰一人として殺していません。

致命傷にならないように、全員の急所を外して、撃ち抜きました。


死んだら、無傷で復活するんです。

私の怒りを体感してもらわなければ意味がありません!


「なぁなぁ…いっそ殺してやれよ」

「ドクター!甘いです!ここは地獄ですよね?あっさり殺してどうするんですか!まして、ドクターをクソ野郎呼ばわりした奴らを楽に死なせるもんですか!!」

「そ、そうか…」

「引かないで下さい!!」


キッ!


パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパァーン!


「貴方達のおかげで、ドクターに引かれたじゃありませんか!もっと苦しみなさい!!オーッホッホ!!」

「「「「ヒィィィーー!!すみませんでしたぁー!!」」」」

血まみれでのたうちまわりながら、ドクターと私に謝罪をする死者達。


まぁ?

許してやらない事もないですけどね…。


「さぁ!ドクター!次行きましょう!次!」

「おい!まて!あの瀕死の死者達はどうするんだ?」

「そのうち死んで復活するでしょ?初めて来た私を怒らせた奴らが悪いんです!復活するまで反省しててもらいましょう!ねっ!!」

「お、おう…みんな、そういう事だ…じ、じゃあな…」

私はドクターの背中を押しながら、さっさと出口に向かって歩き出しました。


「「「「そ、そんなぁー!!」」」」

「「「「いっそ、殺してから行ってくれぇーー!!」」」」


とか、なんか言ってますが…。


無視無視…オーッホッホ!!


☆☆☆


次にやってきたのは、こじんまりとしたサーキット場。


すでに何台かの車が走っています。

人を轢き殺しながら…。


「これはいったい…」

サーキット場の路上には、無数の死者が徘徊しており、走っている車は、その死者目掛けて突進していきます。


蛇行運転しているのは、路上にいる死者が逃げまどっているから。


「ここ、自動運転システムだから…」

ふむ。

車に運転手は居ないようです。


「つまり、死者目掛けて突っ込んでいく無人の車…」

「そうそう…競走ではないから、F1みたいなスピードとかは関係ないのな、ただ、バックはできないから、何周も回って、延々と死者を轢いていく」


中々の施設だろ?と、自慢げに話すドクター。


確かに、轢かれるまでの数秒、恐怖はあるでしょう。

なんせ、自分目掛けて突っ込んでくるんですから…。


一台を交わしても、続々と後続の車がやってきます。

逃げ場はありません。


車種は、軽自動車からトラック、タンクローリーにトレーラーまで、様々な車が走っています。


ぶつかり、弾き飛ばされ、倒れたところに後続車がトドメを刺しにくる。


サーキット場自体がこじんまりとしているため、逃げ場はあってないようなもの…ただただ、轢かれて死ぬのを待つのみです。


まさに地獄…。


「ドクター、ここでも私達が運転して、死者を轢いて回るんですか?」

「いや?ここは、見て楽しむ場所だな…」

(楽しいのかな?)


「徘徊している死者を、良く見ているとわかるんだが、それぞれに色が付いてるんだよ」

「色?」

「そうそう、わかりやすい場所、衣服な」

「え?いや、まぁ…色とりどりの服を着ているなぁとは思っていましたが…」


色は、大きく分けて…1、2、3…。

ざっと5色です。


黒→自分の意思で人を轢き殺した確信犯

赤→事故に見せかけて、轢き殺すように指示したクズ

黄色→轢き殺しの実行犯

青→飲酒運転で轢き殺したバカ

紫→轢き逃げしたカス

茶色→動物をわざと轢き殺して遊んでいたボケ


色は、黒以外、黒ずんだ色から、鮮やかな色まであり、それによって罪の重さが分かるようになっているとの事。


罪を償いきり、反省をしたら、衣服は白へと変わるとの事。


はっきり言って細かい!

ドクターの解説中、眠気が来て、ウトウトしたのは内緒です。


「さぁ、次だ…」


あれ?

射撃場とサーキット場以外は聞いてませんが??


「どこへ?」

「廃棄場」

あー!

ドクターのお気に入りの場所って言う…。


廃棄場…。

興味はありますが、臭いのはちょっと嫌です。


フワッ…。


「廃棄場は、自立型にできないから、飛んで移動する必要があるんだ…イノリも飛べるだろ?」

「はい!」


フワッ…。


「ちょっと寄り道するけどな…まぁ、すぐに終わるから、イノリは見物していてくれ」

「は、はい…」

はてさて、ドクターは何をするのでしょう?


ヒュー!!


向かった先は、私も体験した川。


シャキン!


出ました!

久しぶりのメス!


メス??


「「「「ギャァァーー!!来たぞ!!死神だぁーー!!」」」」


死者の泳ぐスピードが速くなっていきます。

めっちゃ必死…笑える…クスクス!


ヒュン!サクッ!ヒュン!サクッ!

ヒュン!サクッ!ヒュン!サクッ!


必死に泳いでる死者の額に、メスを撃ち込むドクター。

全員を、つもりのようです。


ヒューン!


素早い!

次に向かったのは、高層ビル。


「「「「「うわっ!!やめてくれ!!ちゃんとから!!は勘弁してくれぇーー!!」」」」」

「だーめ!」ニヤリ


わっるい顔で、笑ったドクターの手には、いつの間にか、怪しげなスイッチが…。


(まさか、屋上を爆発させる??)


ビルの屋上には、フェンスや柵の類はありません。

爆破するなら、間違いなく全員が落ちるでしょう。


しかし、今まで見てきた、ドクターのとは違ったものになります。


ポチッ


ガコン!!


「え?」

ドクターがスイッチを押した瞬間、屋上のフロアが傾き、足を滑らせて落ちる死者が多数…。


(これはキツそう…)


更にフロアが、見る見るうちに凍っていくのがわかります。

冷気が半端ない!


これは、いわゆる


(これって、復活した瞬間、また滑り落ちるんじゃ…)

って、間違いなく、屋上に居続ける事はできませんよね?


「さぁ、行こうか…」

「は、はい…」


ヒューン!


ゆっくりと空中を移動しながら、ビルを見つめる私に、ドクターは言います。


「大丈夫!氷が溶けたら、フロアも戻るシステムにしてあるから」

「へ、へぇ…」

「たまに、ああしてやらないと、ためらって落ちない奴が出てくるんだよ」

「へ、へぇ…」

「これ、元々、レイコの仕事なんだけどな」

「へ、へぇ…」


すみません!

的確な返しができなくて!!


ぶっちゃけ、ドクターの思考が怖いです!

私は、まだ優しい!


うん!

そういう事にしておきましょう!


さぁ!

行きますよ!


ドクターのお気に入りの場所へ!!


と、意気込んでいた私が廃棄場で見たものは、恐ろしい光景でした。


廃棄場を見た、私の感想

どおりでドクターが異世界をスルーするわけですわ!!

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