第30話 ドクターと一緒に地獄体験します。

「と、とにかくだ、これから2人で地獄巡りをしてくる。イノリを連れて行かないと、早々に地獄そのものが崩壊するからな」

『は、はい…それは構いませんが…』

何か酷い言われような気がしないでもないですが、連れて行ってもらえるなら、安心です。


『はぁ…全住民に伝えておきます』

閻魔さんは、項垂れたまま、脱力感満載な足取りで部屋を出ていきました。


『何でこうも早く復活なされたのか…あねさんも無茶苦茶ですし…怖い人が倍になったとか、シャレになりませんがな…』ボソッ

とか、呟きながら…。


「………」

「あぁ、アレは気にするな、閻魔は少し寝不足なのだろう、ただそれだけだ」

誰のせいですか?

って、私も含まれるのか…ガーン!


「つか、ドクター?もう、私に遠慮する事なく、普段通りにしてもらえませんか?」

「それはちょっと…」

「なら、もう一度!」


カァァー!


「わ、わかったわかった!これ以上、結界の無い場所でブレスを吐くのはやめてくれ!」

「わかればよろしいです!」

「イノリ、お前、そんな性格だったっけ?」

「こういう性格になってるみたいですよ?知りませんけど…うふふ」

「自覚はなしか…」

「まだ成長中なので…」

「……そ、そうだったな」

どうやら、ドクターは諦めたようです。


私の勝ちー!!


「はぁ…ヨーコ、各施設を集めてくれ!後、サーキットと射撃場、リンチ場もだ」

『承知しました…では』


カチャッ…スタタタ!


流石はキツネ、動きは素早いです。

ミーコと、どちらが早いのでしょう。


って、サーキット?射撃場?リンチ場?

かろうじて、リンチ場だけは、地獄でのは理解できましたが、サーキットと射撃場の存在理由がわかりません。


「イノリは、どの地獄を見てきたんだ?」

「えと、川とビル、放火に爆発、建築っすかね」

「あー、それな。1番人数が多いエリアだな…見てただけか?」


「いえ、川は体験しましたよ?死者とも遊びましたし」

「な、何をした?」

「えと…罵声を浴びせてきた死者を沈めたり、泳いでる死者の肩を石化させたり…ですかね?」

「………」ニヤリ

私の言葉に、ドクターは何やら良からぬ考えを思いついたようです。

しかし、あえて「どうされました?」とか聞いてみる私。


「イノリも、俺のに付き合えるかなと…」

「え?もしかして、リゾート地って、ドクターにとってって意味ですか?」

「いや、罪を償って、転生できるレベルになった奴らには、結構楽しい施設を用意している…ただし!喉元過ぎれば熱さ忘れるってやつは、自動的に、出戻りするがな…後、転生できない可哀想な奴らとか…」


ドクターの説明によると、いくら罪を償って改心しても、普通の暮らしに戻ったら、また悪い事を考え出す人がいるのだとか…だから、100年を猶予期間として、その間、魂を見定めるとの事。


次に、転生できない人達とは、遺族が、いつまでも、毎年が帰ってくると信じてる部類の人。


人はやがて死を迎え、次の代に転生するのが、世のことわり。

死んだ人の生前を慈しみ、毎年、そのを讃え、現状報告をするのが墓参り。


しかし、地獄に来るような悪い奴にも、死後、毎年、と信じている関係者、地域、宗教が存在するため、次代に転生したくてもできない、ある意味可哀想な魂が存在してしまうとの事。


何か、複雑な心境です。


ちなみに、戦争で無理矢理駆り出された人でも、人を殺していたら地獄行き。

戦争を起こした人、煽った人も地獄行き。


基準は何なんでしょう?


「武器を作る人に地獄行きは少ないが、使った人は、ほぼ地獄行きだぞ?」

とドクター。


つまり、人を殺す気で武器を開発、製作した奴らは地獄行き、それに付き合わされる人はセーフ。


戦争に無理矢理駆り出されても、相手を殺すという事は、皆無に等しく、殺さなければ殺されるからと、自身の保身ためにやったとしても罪は罪。


『少人数を殺すのは悪人だが、大量殺人をしたら英雄』

なんてのは、ただの言い訳だ!


というのが、ドクターの持論だそうです。


そんな持論に、私は思いっきり同意しました。


☆☆☆


「って考えてると、この地獄って、案外だろ?だから、その手助けが必要なんだよ」

手助け??


「死者は死なない」

「まぁ、確かに?」

「しかし、心を入れ替えるまで、自分のやってきた事を見つめ直してもらう必要がある」

「だから、それぞれの死因にまつわる地獄を作ったと?」

「正解!」

まぁ、それが一番、本人達にはでしょうけど…。


以前の地獄は、書物に載っているような、針山地獄だの、血の池地獄だの、岩転がし地獄だの、石積み地獄だの、の場所が多かったのだとか…。


そこで、閻魔大王に直談判し、コテンパンにノシて、実権を握り、地獄を(ドクター視点で)あるべき姿にしたのが、現在のここ。


ドクターって、案外やりたい放題ですよね?

知ってたけど!


①現代社会が気に入らないと言って、生命維持装置を作ったり

②神様に喧嘩売ったり

③その神様から『神の宝玉』を奪い取っていたり

④冒険者にもなってないのに、魔結晶を買い取りさせたり

⑤国で一番の宿のスィートルームを貸し切ったり

⑥冒険者登録して、いきなりS級冒険者にしろって言ったり

⑦三王国と、いつの間にか取り引きをしていたり

⑧龍族と一戦交えたり


こうして挙げ出すと、この地獄の魔改造を含めて、ドクターって、最初からやりたい放題だったんですよね…実は。


「でだ…戦争の話をしたついでに、射撃場に行こう」

すみません!

ついでの意味がわかりません!


案内されたのは、地球にある〇〇ドーム的な、コロシアムとは違った装いの建物。


「戦争加担者、違法銃使用、刃物を使った自殺者、殺人者は、大抵ここだ」

入ってみると、まるででもしているかのような、思いっきり戦争状態。


「死者は死なない」

「えぇ…それはさっき聞きました」

「死なないのであれば、地獄にならない」

「…と言いますと?」


死者に痛みを感じさせ、死の代わりに、悶絶しながら気絶する、それが死者の死。

そして、体は再生され、また始めから、同じ地獄を繰り返す。


「まぁ、百聞は一見にしかず…だ。やってみたらわかる」

「は、はぁ…」

よくわかりません!


ドーム内では、激しい銃撃戦が行われているのに、通路には音が漏れてこない。


「遮音結界が張ってあるんだ…廃棄場には、こうした便利な物があるから、魔法を使えなくても何とかなるんだよ…今は魔法、使い放題だがな…ハッハッハ!」

「………」

ヨーコさんの言っていた、…。


ガチャッ


「さぁ、着いたぞ!射撃場だ」


入った部屋には、政治家風な人や、軍隊の偉いさん風な人が、窓のない部屋…檻のない牢屋??的な場所に、ひしめき合って座っていました。


カチャッ…ポン。


ドクターから手渡されたのは、一丁の拳銃。


ジャキン!


ドクターが手にしたのは、明らかに機関銃。


射撃って…まさか!!

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