第28話 ドクター!自立型の乱用はやめません?
スィー!
「お待たせー!」
『お帰りなさ…プッ!あははは!お腹苦しい!!』
「え?何、大爆笑してんの?」
『いやぁ、イノリ様って、大王様より強烈だなぁって…あははは!』
「何が?」
(様?)
『いや、気にしないでください…私、貴女にも逆らわないって決めたから、今笑ってるのは許して下さいね…あははは!』
どうやら、私を笑っているのではなく、私の行動が、よほどおかしかったようです。
何気に敬語になってますし。
私、なんかやりましたかね?
私が出てきたら、何故か堤防に人が集まり、モニターで洞窟の様子を観戦している人達がいました。
これらの人達は、急流泳ぎを達成した、いわゆる合格者達。
堤防沿いには、出店まであります。
自由に食べてよし…な、大盤振る舞いです。
しかし、この緩いシステムにも落とし穴がありました。
応援をすれば、スリリングな競技を観戦でき、ザマァ!とか思った瞬間、またスタート地点に戻されるという、娯楽を兼ねた、最終試験になっているという、地獄に相応しい徹底した仕組みとなっておりました。
ヨーコさん曰く
『体力だけあって、罪が許されるってのは無し!罪を認め、罰を受け、自分のやってきた事を心から反省しなきゃ意味がない』
と、ドクターが発案したのだとか…。
まぁ、確かに?
生まれ変わっても、前世の記憶がなくなっても、魂に刻まれた
合理的と言えば聞こえはいいですが、観戦者は、観戦自体が最終試験などとは思ってないでしょうね。
何年、何十年かけて、クリアしたのかはわかりませんが、心の持ちようひとつで、振り出しに戻る鬼畜さ…。
流石、ドクターと言うべきでしょうか…。
『まぁ、再スタート者は、観戦者に見えないように、洞窟の真ん中からスタートするんですけどね…一旦、クリアしたから、距離は半分です』
「観戦者に見せないんだ…」
『見せたら、形だけの応援になるでしょう?』
「そ、そうね…」
でも、沈んだり、諦めて流されたら最初からだよね?
と、ツッコむのはやめておきました。
さぁ、次行きますよ!全エリア、まとめてありますので、見て回るのには手間はかかりません。さっきみたいに、体験してもらってもいいですよ?時間はたっぷりありますし』
「え、えぇ…そ、そうね…」
この子!何まとめちゃってんのよ!!
それじゃあ、地獄の全体がわかんないじゃない!!
とか思いましたが、どうやら彼女なりに、私を気遣って、配慮したようです。
ここは、大人の対応をしておきましょう!
え?ヨーコさんの方が歳上だろうって?
さぁ?何の事でしょう?
見た目年齢って大事ですよね?
私の見た目年齢は20歳、彼女の見た目年齢は10歳。
はい、私の勝ち!
ま、そういう事です!
☆☆☆
で、次に訪れたのは、高層ビルエリア。
ここは、ものすごくわかりやすかったです。
ビルの高さは50階建て、1階の高さを一般的な3mと仮定して
50✖️3=150m
結構な高さです。
高層ビルの上には、川と同じ部類の人達がうよめいています。
これらの人は、飛び降りをして自分を殺した人、首を吊って…以下同文。
そして、高層ビルの真下には、5mほどの道路?通路?があり、厚さ10mはある分厚いコンクリートの壁が高層ビルを囲んでいます。
ソコには、川同様、その人を追い詰めた人、原因を作った人、あと、罪の無い人を突き落として殺した人達が、ひしめき合って、歩いています。
で、どうなるかというと
飛び降りる。
↓
歩いてる人共々、ぐちゃぐちゃの肉塊になる。
↓
全員が飛び降りたら、同じ状態にリセットされて、同じように飛び降りる。
↓
痛みや恐怖だけは残したまま、延々と繰り返される
飛び降りる人と、下を歩いてる人が同数なので、ほぼ全員死にます。
交わすことも、逃げる事も不可能。
何故なら、飛び降りた人が下の人めがけて、風に飛ばされたり、つまづいたりして、ピンポイントで衝突して、肉塊となるからです。
絵面も趣向も結構エグいです。
首吊りの人は、もちろん首に縄を括ったままのダイブ。
下の人を蹴り殺して、自分は縄で…チーン!
意識がなくなっているので、『復讐した』とか『ザマァ!』とかの、爽快感は皆無なのだそうです。
地獄名称
無限バンジーゴク
私の感想→安直
ドクターらしいネーミングのセンスです。
解放条件は、心から反省して、遺族や迷惑をかけた人に、ひたすら謝る事。
つまり、心を入れ替えるまで、延々と飛び降り続け、延々と潰される地獄。
観戦者は、何やら子供?品が無く、口も悪いので、ガキ…という表現が似合っています。
ヤジを飛ばす、何かの骨を投げつける。
ヨーコさんに聞いたところ、餓鬼に喰わせるエサに、ドクターから送られてきたゴブリンを食べさせたところ、餓鬼がガキになったそうです。
なんのこっちゃ!
☆☆☆
次のエリアは、地獄のメインエリア。
①働き詰め地獄(監視付き)
②放火地獄
③爆発地獄
何故、メインエリアなのに、3つの地獄があるかというと、そこは住宅地…いえ、もはや都市とも呼べる広大な住宅やビルが建ち並んでる場所に、3つの地獄が点在するからなのだそうです。
①働き詰め地獄
生前、ニートや引きこもりで、労働を拒んだ人が、無理矢理、建設をさせられる地獄。
重機や材料はありますが、基本的には肉体労働。
休憩無し、睡眠無し、食事無し。
過労死したら、10分のインターバルを設けて、再度スタート。
生前に過労死をさせた人、詐欺や悪徳商法で、楽をして金儲けしていた人も、まとめられているとの事。
『全部空き家なんですよ…笑うでしょ?』
とヨーコさん。
では、何故、そんな空き家ばかり作るのか…。
それは、放火魔や爆弾魔、強制立ち退きをして、住む場所、働く場所を奪ってきた人達が住む家だから。
『あとはわかるよね?』
「なんとなくは…」
そう、今までの流れからしたら、つまり…。
ドッカァーン!
メラメラメラメラ…。
という事です。
③爆発地獄
住む
↓
寝る
↓
起きてても、家から出られない
↓
爆発して死ぬ寸前となる。
↓
苦しむ
↓
医者とかは無し。
↓
死ぬ→生き返る
↓
住む
↓
以降、エンドレス
②放火地獄
住む
↓
寝る
↓
家が燃え出す
↓
逃げられない
↓
ジワジワ燃える家で恐怖を味わう
↓
死ぬ→生き返る
↓
住む
↓
以降、エンドレス
①働き詰め地獄
爆発した建物、燃え尽きた建物を建造し直す
これは、かなりキツそう…。
『大王様が変わってから、地獄のお仕置きも、すっかり変わっちゃいましたよ』
だって…。
私が思っていた魔改造のレベルが、想像以上で言葉が出ませんでした。
あとは、チョコチョコと点在している『ネチネチ地獄』というのがあるそうです。
内容は、個々に『もう、悪い事はしません!心を入れ替えます!』と思えるような、その本人にとって、最も忌み嫌う何かだそうです。
数が多くて見せられないとか…。
そして、最後は『無限次元収納処理場』。
「何それ?」
まぁ、当然の疑問です。
『異世界で使われている次元収納の、必要のない物が廃棄されてくる場所ですよ?』
「は?」
『えと…異世界の人は、必要な物だけ取り出して利用してますが、実は、いらない物も、沢山入れているんです』
「いやいや…そうじゃなくて」
『そこは、大王様のお気に入りの場所で…』
「………」
まって!
何で、いらない物をわざわざ地獄に転送してんの?
が、私の聞きたかった事。
しかし、『ドクターのお気に入り』という言葉に、ソレを言い出す事ができませんでした。
『こんなもんですかね…んじゃ、各エリア!定位置に戻って!』
ズズズズズズゥゥゥ…。
ゴゴゴゴゴゴォォ…。
私が言葉に詰まっていると、ヨーコさんは何を勘違いしたのか、各エリアを元の位置になるよう指示を出していました。
見る見る間に、離れていくエリア…。
まるで、どこかの『特産物展覧会』で、いろいろな地域の物を、一箇所で見た気分でした。
ドクター!何でもかんでも『自立型』にするのは良くないと思います!!
いや、マジで!
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