第25話 ドクターで遊ぶ計画は失敗に終わりました。
『さて、この邪龍核は旦那に渡さねばならぬな…こんな大事な物を置いて、どこに行ったのやら…』
「あのぉー、この邪龍核を取り込まないと、ドクターはどうなるんですか?」
流石に、ぶっ飛ばしたとは言えません。
『新月になるにつれて、力を失い、新月の晩に赤ちゃんになる…いつもの白衣は着られないだろう…重すぎて』
「赤ちゃん!!」
私は、閻魔さんの言葉に、つい叫んでしまいました。
『ただ、力が使えなくなるようにしたかっただけのはずが、失敗して赤ちゃんになるようになってしまったのじゃ…我主人ながら、バカな男よ!今まで、1週間は赤ちゃんじゃったが、邪龍を食べたとしても、3日は赤ちゃんのままじゃろうな…フン!自業自得じゃ!』
砂化バァバさん、容赦ないっすね。
(ん?あっ!!)
「あの!その邪龍核!以前、ドクターが頼んでいた、選定神の神格と、同じところに保管しておいてもらえませんか?」
『え?それは、旦那からの指示かね?』
「いえ、ドクターが弱点を克服したら、地獄がまた大変になるんじゃないかなと…貴方がたのためですよ?」
ちょっと無理があるかな?
『ふむ…それもそうだな…
閻魔さん、チョロいです。
『それでは、ご機嫌よう!』
『達者でな!』
「はい!お二方も、いろいろありがとうございました!」
シュッ
シュッ
こうして、閻魔、砂化バァバは帰っていきました。
「フッフッフ…やりましたよ!ドクターは、これから赤ちゃんになり、3日は赤ちゃんのまま!ドクターを守る私!素晴らしい!!めっちゃ嬉しい!!」
無敵無双だと思っていたドクターの弱点を握りましたよ!!
それに、ドクターをあやす私!!
いいじゃないですか!!
ドクターの母親みたいなシチュエーション!!
おっぱいは出ませんが、しゃぶらせる事はできるかもしれません!
いい事を聞きました!
ここは、驚いたふりをして、抱っこして、赤ちゃんになっている事を有耶無耶にして、ドクターで遊びまくる!
いいですよ!完璧です!
私は、思わずバンザイをして飛び跳ねるのでした。
やっほぉぉーー!
☆☆☆
さて、ひとしきりはしゃいだところで、夜がふけるまで、帝国の城壁を歩いて…もとい走って様子を伺ってみました。
毒ブレスを身体中から発しながら走ったので、門番?警護兵?呼び方は知りませんが、誰の目にも止まることなく走れたと思います。
気絶したのか、死んだのかは定かではありません。
ドクター風に言うなら「毒耐性には自信があるんだ」って人以外は、まぁ死んでると思います。
でも、いいですよね?
邪龍信仰をし、白龍を脅しに使っていた鬼畜な連中の仲間です。
毒耐性を持っていなかった事が「はい、残念」って事で…プッ。
あ、ちゃんと実験はしましたよ?
白龍から貰った『ヒール』は、死者さえ蘇生させる最上級回復魔法だと言う事もわかりました。
もう、そうなると蘇生魔法ですけど、気にしないでおきましょう!
あと、ステータス画面には『白龍の加護』なんて物もついてました。
とてもラッキーです…てへ☆
視力も、ドクター並みに良くなったのか、相手の能力、自分の能力、その他、いろいろな情報が見えるようになりました。
つまり、鑑定や探知のスキルを会得した事になります。
ドクターは「視力には自信があるんだ」とか言ってますが、私はちゃんと、スキルとして扱おうと思ってます。
だって、魔法文明の発達した異世界ですもん。
ドクターみたいに夢のない表現はしたくありませんからねっ!
なんて思いながら走ってる私ですが、いつまで経っても、城壁の終わりが見えません。
邪龍がいた門が真ん中だとして、現時点で10kmは走っております。
つまり、反対側を含めて、20kmは城壁があるという事。
樹海から城壁までが、約2km。
樹海も城壁も、途切れないって何なんですか??
どんだけ広いんですか?
私、反対側は行きませんよ??
流石に…。
夜がふけるまでの暇つぶしに走っているだけですし。
私、これでも忙しい身ですし。
なんせ、これから3日間、赤ちゃんになったドクターで遊ぶんですからねっ!
どんな赤ちゃんになっているのか…とか、赤ちゃんになって、どうやって過ごすのかとかは、後のお楽しみです。
今はこうして、ただただ夜がふけるのを待っているのです。
え?
暇つぶし??
さぁ?
何を言ってるのか意味がわかりませんねっ!
☆☆☆
そうこうしているうちに、夜もふけ、星も月もない真っ暗な闇が訪れました。
私には『暗視能力』があるようで、真っ暗闇でも、普通に周りが見えています。
これも新しい発見です。
元々あった能力なのか、ブレス核を取り込んだためなのか、白龍の加護が与えられたためなのかは定かではありません。
しかし、今の私には、そんな事は些細な事です。
少なくとも、不都合はないのですから!
あれから更に10kmほど走り、そこを折り返し地点としました。
毒ブレスを垂れ流しながら走って、門番を根こそぎ死に至らしめたため、帝国側の様子がざわめいてきたからです。
当然、『これはヤバい!』となります。
流石に、私1人で、しかもノープランで帝国に喧嘩を売るわけにはいきません。
『毒耐性のない門番が悪い』と言っても、『そりゃそうだ』と笑ってすましてもらえるような雰囲気でもありません。
当然、私の行動は『樹海に身を潜める』という選択に絞られてきます。
ザザザッ…。
と、樹海に入り……。
ポーン!
(え?)
いきなり弾き飛ばされました。
私の頭の中は?マークでいっぱいです。
いやいや、そんな事はどうでもいいです!
帝国にある、いくつもの城門から、兵士が完全武装で出てきています!
ヤバいです!
ガサガサガサ…。
ポーン!!
また弾き出されました。
「なんで樹海に入れないのよっ!!龍族の皆さんは、何で私に意地悪するんですかっ!!」
『もう10kmほど戻れ!そうしたら、龍族領に入る…そこからなら、自由に出入りできるであろう』
『今、城門から出てきている兵士達を一掃してくれたら助かるかなぁ?』
『兵士の鎧には毒耐性があるけど、ブレスの濃度を猛毒にして、全力で走り抜けたら、全員殺せるよ?』
『こっちには結界を張っておくからさ!あんたの毒、樹木に悪いんだよね』
「………」
何を口々に好き放題言っちゃってんの?!
誰?!
あんた達誰!!
『我々は、ここ、獣人族領の民である!この大樹海を龍族のみのテリトリーと考える事なかれ…では、さらばじゃ!』
「……」
わかったわよ!
猛毒をばら撒きながら、元の位置に戻ればいいのね?
と、半ばやけっぱちになりながら、身体中から猛毒を発する私。
ぶっちゃけ、ナースがやる事じゃないんですけどねっ!!
ブワッ!
私の身体から、毒の霧が立ち込めていきます。
城壁は腐り、ガラガラと音を立てて崩れていき、兵士は紫の血を吐きながら倒れていきます。
ん?
紫の血??
兵士達って、人間??
え?え?
これ、どういう事??
そこへ、飛び出してきたのは閻魔さん。
いつもの頭だけ…。
『
「え?何がなんやら…」
『とりあえず、地獄に避難しましょう!旦那もそこにいます!その毒霧は私がすべて吸い上げますから!』
「な、何?いったいこれは…」
『すみません!今は私の指示に従って下さい!まだ、全面戦争をするわけにはいかないのです!』
閻魔さんは、私の手をつかみ、地獄へと引きずり込んでいきました。
『地獄へ引きずり込まれる』
字面は悪いですが、一応、避難なんだそうです。
帝国兵士の紫の血、獣人族領の猛毒発言、閻魔さんの避難誘導…。
何か、短時間のうちに、様々な疑問が残る結果となってしまいました。
しかし、今の私には、そんな事もどうでもいい内容に感じられます。
何故なら、あれほど楽しみにしていた、私の『ドクターで遊ぶ計画』が、こうして見事に頓挫してしまったのですからっ!
閻魔さんは、ドクターも今は地獄に居ると言っていました。
私は決意します!
この3日間で、必ずドクターで遊ぶと!!
しかし、この決意が砕かれるのには、そんなに時間はかかりませんでした。
なんせ、ドクターは地獄で…。
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