第23話 ドクター!私、キレてもいいですよね?
さて、白龍も無事帰って行ったようですし、私もドクターの所へ行きますかね?
と言っても、すぐそばですが…。
私が結界を壊し、白龍を元に戻して樹海に帰しても、邪龍は何もしてきませんでした。
その理由は、邪龍のそばに来て、初めてわかりました。
ドクターが、結構エゲツない人だと言う事も含めて…。
まず、邪龍自身はすでに、あちこち食べられています。
翼、ツノ、キバ…もう、ほとんど、食べられていて、紫のトカゲみたくなってて、ちょっと笑ってしまいました。プッ
邪龍は、仰向けにされ、石の槍…いわゆるロックランス的な物で、あごに手足、尻尾ごとに串刺しにされ、ブレスを吐く事すらままなりません。
白目になっているあたり、意識も刈り取られているようです。
バリバリ…。
「やはり、龍の鱗は硬いな…アゴが疲れる」
(……)
ドクターは、私が来た事にも気づいてない様子で、邪龍の鱗を頬張り無心で食べています。
(鱗を食料としてバリバリ食べるドクターって…)
ドラゴンの鱗は、煎餅じゃないからね!!
「あー!飽きた!柔らかい内臓にしよう!」
シャキン!
サクサク…
ドクターは、邪龍の腹を、まるで豆腐でも切るかのように、喉元からヘソにかけて切っていきます。
驚いたのは、ドラゴンの腹を切り裂くドクターではなく、ドラゴンにヘソがあった事。
は?ってなりますよ?普通。
そもそも、卵から産まれる生物に、ヘソなんかは存在しないのです!
っていうか、そろそろ私に気づいてくれませんかね?
声をかけないで、遠巻きに見ている私も私てわすが、それすらも気づかないドクターもドクターです!
白龍がいなくなっている事にも気づいてないのでは?
私と一緒に、何かの実験をするはずだったのでは??
私は、いつまでこうして、ドクターの食事を見てれば良いのですか?
なんか、無性に腹が立ってきました!
もう、ドクターが気づくまで、声をかけてあげませんからねっ!!
☆☆☆
ズボッ
「ふむ…邪龍は、魔石…いや、これは魔鉱石か…これが核ではないんだな…」
ゴロン…。
ズボッ…ゴロン
ズボッ…ゴロン
「火炎に凍結、毒に石化か…おそらく、これがブレスの蓄積核だな…これに魔力を貯めて、魔法陣で打ち出すとかかな?」
独り言はいいですけど、絵面が凄いことになってるのは一目瞭然です。
「モゴモゴ…ウー!ウー!」
あら?ドクターの奇行に気をとられて、きづきませんでした。
城壁には、貴族風の人、神官風の人が縛られ、口を縫い合わされて、ドクターの所業を見ています。
「胃袋は…うわ!なんだこれは!ドス黒いコールタールみたいな液体があるぞ?胃液か?」
ドクターは、完全にギャラリーの事は忘れているようです。
「両端を縫い付けてっと…」ポイッ
現時点で、ブレス用の魔鉱石、胃袋の摘出終了。
「こいつの核は…ふむ。やはり、邪気の塊か…何もかも、他のドラゴンとは生体構造が違うんだな…」
は?今のは聞き間違い??
何故、ドクターはドラゴンの生体構造を…って、黒龍を解体してましたね…たしか。
パクッ
(!!!)
ドクター!何してんですか!!
「おえ!まっずっ!これは、やっぱりイノリに浄化してもらわないと、俺の体、もたないかも…邪龍に変化したりしてな…」
いやいや…邪龍になることはないと思いますが、肌が紫になっていってますよ!!
これがドクターの言っていた実験??
たしか、『イノリ次第』だとか言ってましたよね?
(やはり、浄化をしなくちゃ、暴走するとかの副作用があるんですかね?)
流石に、ドクターの肌色を見ていると、心配になってきます。
目は赤く染まり、肌はドス黒い紫…まるで、悪魔になったかのような様相になっていっています。
そこからは、まるで野獣が獲物を喰らうがごとく、邪龍を食い散らかしております。
近寄るのも躊躇われる禍々しいオーラが発せられ、スプラッタな食事(?)風景…。
ドクターの口は大きく裂け、キバが生え、悪魔のような翼まで生えてきました。
見た目、まんま悪魔。
ちょっとヤバい雰囲気です。
つか、これ、なんの実験なんすか!!
☆☆☆
帝国側のギャラリー(口を縫われた人達)は、表情から、明らかに恐怖し、冷や汗をびっしりかいています。
それが、邪龍を食べているドクターに対してなのか、悪魔のごとき様相になっているドクターに対してなのかは判断に困ります。
どちらにしても、ヤバいという事に変わりはありません。
ゴックン…。
悪魔化したドクターは、血の一滴も残さず、邪龍を完食してしまいました。
はっきり言って怖いです。
後に残されたのは、ブレス用の蓄積魔鉱石、胃袋、核となる邪気の塊、つまりは、邪龍の核。
さて、ドクターは、これからどうするのでしょう?
とても、正気を保っているようには見えませんが?
『グルル…』
ドクターは、私の方を見て、攻撃体制に入ります。
思いっきり、ロックオンされちゃってますよ?これ…。
「グォォーーーー!!」
雄叫びと共に、口に魔法陣が!
明らかにブレスを吐く体勢です!!
まぁ、出ないんですけどね。
ブレス核が抜き取られていますから…プッ
と言っても、危険な存在には違いありません。
体格は、徐々に大きくなり、現在、ゆうに3mは超えています。
これがドクターの言っていた実験であるなら、私の役目は、ドクターの体内から邪気を抜き取る事。
ドクターは、邪気が邪念粒子になっているのを知らないはずです。
何故なら、もし知ってたのなら、邪念粒子だけ切り取れば済む話だからです。
思念は切り取れない…悪意や殺意など、感情は目に見えず、いくらドクターであっても、切除は不可能。
今の私なら、体内から邪念粒子を抜いて、浄化する事は可能かもしれません。
(さて…どうやって近づきましょうかね)
相手は巨大な何か邪悪な生物。
タラ…。
知らず知らずに、冷や汗が流れてきます。
ドクターだと認識していると、私自身が危険かもしれません。
『グォォーー!!グァー!グェグェ!!』
「ん?」
『早くなんとかしないと、色々ヤバいかもよ?』by自立型脳
と、頭の中で語りかける意識がありますけど…何か、直感的に、手を出さない方がいい気がします。
「う、うん。でも、ほっといていいかも」
『何言ってんの?ヤバいって!』by自立型脳
確信はありません。
でも、何か…そう!
『グェグェ』←これ
「ちょっと待ってて!もう少し!!」
『まぁ、あんたが言うなら…』
あくまで直感…ドクターの本来の気質。
『グェー!グォ!グゲゲゲ!』
ほら、やっぱり!
踊り出した!
悪魔化したドクターは、最初こそ、赤い目で威嚇し、精神も邪龍に侵されたっぽい雰囲気だったのに、今は遊んでいるようにしか見えません。
ブチッ!!
ドクターが踊り出した事で、私の中の何かが音を立てて切れました。
「ドクター!今、意識あるでしょ?!何遊んでるんですか!!」
『グェ?』
振り向き様に、汗がダラダラ…。
(やっぱり!!)
ヒュン!
少しでも心配した、私がバカでした!!
お仕置きです!!
ボッコォォーーーン!!
ズッデェェーーン!!
『グヘッ!!』
ドクターは、私のお仕置きパンチに、見事KOされました。
で、更に追い討ち!
バキッ!ドカッ!
「え?いつからですか?最初からですか?あー!そうですか!!何の実験ですか?私をビビらせる実験ですか?あー!そうですか!楽しかったですか?あー!良かったですね!」
バキッ!ドカッ!バキッ!ドカッ!バキッ!ドカッ!バキッ!ドカッ!
私は、力任せに、パンチとキックをお見舞いします。
『ちょ!ちが…!ブヘッ!!』
「何が違うんですか!!遊んでましたよね?思いっきり!!」
『いや、実験には予期せぬ失敗というものがあってだね…』
「私にバレた事ですか?状況を説明しないで実験やるやる詐欺をした事ですか?え?」
『いや、計算では、俺は邪龍の力に飲み込まれてだな…イノリに浄化してもらいながら、邪龍の能力のみを獲得する予定だったんだよ!』
「ほう?それが、どうしてこうなりましたの?あ?」
私は、怒りに任せて、殴りながら質問責めをします。
流石のドクターもタジタジ…。
『いやぁ、言いにくいんだが…』
「早く言ってください!!」
『これ、たぶん、消化したら元に戻る…みたいな?』
「は?消化したら元に戻る?」
何を言ってるのかわかりません。
『ゲップ』
シュゥゥゥ……。
「あ、戻った」
「………」
ゲップが消化した合図ってなんですか!
どんな構造してるんですか!!
「消化器官には自信があったんだが、流石に邪気に対して、耐性があるとは思ってなくてさ…ほら、邪念がない俺には、拒否反応が出る的なやつ」
「………」
貴族や神官の口を封じるのに、口を縫い合わせたり、そもそも邪龍を討伐するのに、食べるという発想をする人が、どの口で邪念がないとかほざくのでしょうか!!
「思いっきり適正があって良かったですね」
「いやぁ、清廉潔白な俺に、邪念や悪意に対する…」
「やかましいです!!」
ドカッ!!
「あぁーー!!」
とりあえず、減らず口を叩き続けるドクターは、ドラゴンが居るあたりまでぶっ飛ばしておきました。
今後、ドクターとの付き合い方は、考えさせてもらいますからっ!!
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