第22話 ドクターのミッションは軽くこなせたようです。
ヒュン!
スカッ!ヒューン!
スカッ!ヒューン!
いやいやいやいや!
ドクターにも、当然、弓矢は当たっているのですが、何をどうやっているのか、ドクターの体をすり抜けていきます。
「……」
私は…というと、もうすでにハリネズミ状態…なんすか?この違い…!
ドクター曰く
衣服、身体の細胞に『自動危険察知』を施し、弓矢が当たる前に、身体に空洞を開け、やり過ごしている
との事。
以前、言っていた各細胞に人格云々を、最大限使っているって事になります。
(また器用な…)
と思うのは、仕方がない事だと思います。
思いますよね?
『そのうち、無意識にできるようになるよ?』
と、自立型脳は言います。
まるでスライムみたい…。
弓矢は、穴を開けてやり過ごし、刃物に対しては斬られた部分から再生していき、元に戻る。
火傷は、すぐに再生し、氷に対しては体温をあげて溶かす。
私の体内では、毒や病原菌は浄化されますので、ほぼダメージは無い事になります。
今はハリネズミ状態ですけどね!!
『弓矢排除!』by自立型脳
『『ラジャー!!』』by自立型衣服
パラパラパラパラ…。
どうやら、ナース服を貫通していたわけではないようです。
ナース服は伸び、皮膚は凹み、弓は体にめりこんでいただけだったようです。
痛みは、差し詰めツボ押しをする時に伴う痛みだったようです。
『まぁ、普通の弓矢なら、貫通はしないね』
「………」
私、イノリことホムンクルスは、どんな材料を使って、どんな過程で作られたのでしょう?
構造が、まったく想像できません。
『人工物は一切使ってないので、ロボットとかサイボーグの類ではないよ?』
by自立型脳
いやいや、まだ、サイボーグって言われた方が納得がいくんですけど??
☆☆☆
「さて、割り当て通り、それぞれに動くぞ!俺が邪龍の動きを止めたら、結界解除、白龍の濁り浄化、脱出して、また戻ってきてくれ!!」
「は、はい!」
という流れで、私たちは別れて行動する事になりました。
しかし、邪龍は城門を見る形で左側、白龍が捉えられている結界は右側。
大した距離ではありません。
何故、信仰対象である邪龍が、こんなあからさまな手段で、龍族を挑発しているのでしょう?
ズッドォォーーン!!
そんな事を考えていると、いきなり邪龍側で動きがあったようです。
そう、ドクターが、宣言通り、邪龍をぶっ飛ばしたのです。
これで、邪龍の魔法が消えて…ってなるはずが、結界は健在です。
「あれ?この結界、邪龍の魔法で作られた物ではないんですか?」
『これは、固定式邪念結界…すでに発動された今、邪龍を倒しても消えないのですよ』
と、白龍は言います。
「では、いつでも結界から出られたのでは?」
当然の反応です。
邪龍の魔法から切り離されているのなら、こんな結界、白龍なら粉々にできるでしょう。
『それがダメなのです。この結界は、私を邪龍にするための檻…中にいるだけで邪気に蝕まれ、私の体は邪龍に近づいていきます』
「触れるとどうなるの?」
『邪念粒子が直接、体に浸透して、私は邪龍と化します。この結界そのものが、私を邪龍とするために集められた邪気そのものなのです』
つまり、そのまま居ても、結界の中に居る白龍は、時間と共に邪龍化し、壊そうと触れれば、結界の邪念粒子が白龍を飲み込み、瞬時にして邪龍と化す。
要するに、やはり、外部からの干渉が必要になってくるというわけですね…。
(これは困った…)
あれ?
邪気ではなく、邪念粒子??
『邪気も、こうして形作られたら、粒子化します。私は癒しの龍ですが、流石に人の心に潜む闇を癒す事はできません。それにつけ込まれたのでしょう…』
白龍の諦めたような表情。
いやいや、論点はそこじゃなくて!
「もしかしたら…」
『何をなさるんで?』
「えと…こうして…」
私は結界に指を当てます。
ズズッ…。
『あら?』
「おそらく…」
ズズズ…。
案の定、結界が私の体に吸収されていきます。
『ただ今、浄化中』by自立型血液
やはりです。
思念のみなら、私にも浄化はできません。
人の悪意を取り除けないように。
しかし、粒子化した邪念であれば、それはもはや『物質』です。
細菌やウィルスと、なんら変わりはありません。
この説明をしたら、白龍は大層驚いていましたが、問題はここからです。
「白龍さん、手を出して下さい」
『は、はぁ…』
白龍は、言われるがままに手を出します。
手のひらとはいえ、硬い皮膚。
「えいっ!」
ぐさっ!!
『ギャァァー!!何をするんですか!!つか、龍の皮膚に指を突き刺す女の子なんて、この世界にいませんよ!!』
「指の硬さには自信があるんですよ」ニコッ
『………』
と、ドクターの真似をしてみる私。
反応は、まぁ、予想通りです。
☆☆☆
私は、結界の邪念粒子を、体内で浄化し、白龍に流し込みます。
そして、流し込んだ分、白龍の体は、濁った色から透き通るような白に変化していきます。
『こ、これは…』
「私、怪我は治せませんが、病気の類は、病原菌などを体内にとりこんで、浄化してから放出できる血液を持っているんですよ」
『という事は、これは治療??』
「治療というか、これも一種の癒しですかね?」
知りませんが…ははは。
『私は、怪我や病気は癒せますが、悪意や邪念までは癒せませんよ?』
「まぁ、邪龍が、邪念を粒子化したから、できてる…って感じですかね?」
『なるほど…私が触れられない物になったら、お嬢さんが浄化できる物になると…』
「私も、邪念や悪意は浄化できませんけどね」
そんな事ができたら、苦労はしません。
世の中から犯罪者なんかいなくなりますよ!
そんな会話を交わしているうちに、結界は消え、白龍は真っ白になり、ドクターからのミッションは片付いた事になりました。
案外チョロかった件…こんなんで良かったんすかね?
『見たところ、邪龍は何やら動けない様子、私は皆のところに帰ります』
「良かったです!私も、ドクターの所へ行きますね」
『帰る前に、貴女に癒しの魔法を授けましょう。いわゆるヒールという回復魔法です』
白龍は、私に手をかざし魔法陣を展開しています。
「わお!それは嬉しい!異世界っぽい!」
『異世界ですか…貴女方は別世界からの来訪者なのですね?』
「あ、いいんです!ドクターも、異世界に関心がないみたいなので」
『もしかしたら、そのドクターは…いえ、では!』
パサッ!
白龍は、翼を広げて樹海へ帰っていきました。
ちょ!白龍さん?
言いかけで帰るのはずるくないですか??
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