第21話 ドクターはまた良からぬ実験を考えているようです。
「さてと、とりあえず白龍の救出に向かうか…」
「えと、白龍が捉えられている場所はわかるの?」
「もちろん」
ですよね?
って言うか、もうこの人の助手とか思って接していたら、精神衛生上、良くないと考えを改めました。
もう、敬語やめます!言いなりにはなりません!
ダメだと思ったら、全力で止めます!!
『お?ようやく目覚めたようだね』
by自立型脳
「え?」
『それが、物心ついて、初めて感じる第一次反抗期、自分のやりたいように出来ない時に腹立つやつ』
自立型脳さん…ずいぶんとざっくり言いましたね!
『あははは!』
もういいです!脳内で漫才をしている場合じゃありません!!
まぁ、ドクターの説明も、かなりざっくりしたものでしたがっ!!
白龍救出作戦概要
拉致場所
帝都の樹海側、城壁前
理由
龍族に脅しをかけるため
監視員
邪龍
理由
①牢獄結界にて、その邪気で白竜を邪龍化するため
②帝都を監視している金龍、銀龍に、その成り行きを見せつけるため
③待機しているグリーン、イエローを牽制するため
邪龍も、ドクターに負けず劣らず、ゲスな野郎のようです。
で、ここからがざっくり…。
救出方法
①結界を破壊する
まぁ、これはドクターなら簡単でしょう。
②私が、白龍に浸透した邪気を取り除けるか実験する。
は?
その場で、できるかどうかわからない事をしろと?
③出来なかったら、その時は諦める。
ちょ!ドクター!
無責任すぎ!!
④邪龍はドクターが食べて討伐する。
なるほど!……じゃない!!
何それ!邪龍を食べる??
は?
はぁぁぁーー???
☆☆☆
『よろしく頼む』
『お願いしますね』
「おう!任せておけ」
「頑張ります」
金龍、銀龍と合流したドクターと私は、森から頭だけ出している2龍とこんなやり取りをしました。
「イノリ次第だがな…あははは!」
『……』
『……』
何言っちゃってるんですか!
ドクター!!
なんで私頼り??
無責任にも程があるでしょうがっ!!
金龍も銀龍も呆れてますよ!!
っと、ドクターの無責任さは良くわかりました!
私は現状把握のため、今の状況を聞かされました。
(ドクターは、いつ取り引きをして、いつ情報交換をしていたのでしょう?)
と、思わなくもありません。
私が聞いた内容はこちら
↓
白龍が捉えられている理由、それは、帝国は邪龍信仰をしており、樹海を含め、反対側の3王国に侵攻したいがため、樹海を守護する龍族を黙らせるために、白龍を捉えて脅しをかけているとの事。
樹海は、多種多様な生き物、植物があり、誰しもが利用し、生活に役立てている資源の宝庫。
魔物ですら、いろいろな素材などが獲れるため、龍族は自然に任せて人類に加護を与え、樹海を守護しているとの事。
(あれ?ドクターに、その権利を渡すんですよね?)
邪龍信仰をしている帝国軍に渡すぐらいなら、ドクターに渡した方がよほどマシなんだそうです。
マシて…ってなりましたが、そこは我慢しました。
普段は、自然に溶け込み、認識阻害をして暮らしていたのが、邪龍による白龍の誘拐に合い、監視と牽制をせねばならなくなったとの事。
現在、帝都では邪龍の意を借り、樹海および王国への侵攻準備が進められているらしい。
…が、これはドクターにとって、些細な事らしいです。
問題は、紫色の邪龍による結界で、白龍の体が濁り出している事。
それを除去するのが私の役目。
邪龍を倒しても、次から次へと邪気から生まれ出る邪龍はキリがないので、対抗策に、食べて、その力を体に取り込みたいとドクターは言います。
散々、地獄で瘴気を取り込んだだの、自分を切り刻み、細胞やら遺伝子やら神の宝玉やらを取り込んただの言っている、人体改造人間のドクターが…です。
少量の邪気を取り込んだらいいじゃないですか!ってなります。
「帝国側も、信仰対象の邪龍を食べられたら、ビビると思わね?」
とか、サラッと怖い事を言ったりしていますが、あえてスルーします!
同意したら、調子に乗りそうなんで…。
☆☆☆
ドクターは言います。
「魔素や瘴気は、大気中に漂う物質だから、排除は可能、しかし、邪気は集まった思念なので、切除が難しい」
まぁ、脳をいじったら、邪念が生まれない性格にはできるかもしれませんけど…。
だから『実験』をするのだそうです。
ちなみに、金龍、銀龍、黒龍の言う事を聞かず、白龍救出に動いたレッドを止めに入ったブルーは返り討ちにあい、ドクターが治療する事となった
↓
レッドはドクターにぶちのめされ、怒り心頭の黒龍を返り討ちにし、解体してしまった。
という、私の預かり知らない所で、こんな事があったそうです。
力のみなら最強種は黒龍。
↓
解体された。
↓
血気の多いレッドは返り討ちにあった。
↓
レッドを倒し、黒龍を解体し、重症だったブルーを治療したドクターに、全員、頭が上がらない。
↓
白竜救出、邪龍討伐で樹海…この場合、龍族の管轄する範囲の樹海を指しますが、その権利譲渡の盟約を交わした。
何か、ドクターの良からぬ策略に龍族が巻き込まれているような気はしますが…。
まぁ、邪龍も邪龍信仰などという物騒な信仰をしている帝国には、ドクター仕込みの、これまた物騒な実験が牽制となる事でしょう。
ドクターを見ていると、邪龍信仰なんか可愛く思えてきますけどね!!
「概要はわかりました!早く終わらせましょう!!」
「お?積極的だねー!いいねー!あははは!!」
この人って人は!!
「よし!一気に攻めるぞ!!警護兵は無視だ!直接ターゲットを狙う!」
「帝国軍から反撃を喰らうのでは?」
「無視無視!俺たちの体に任せておけばいい!俺は、とりあえず邪龍をぶちのめすから、その間にイノリは、結界を破って、白龍の邪気を取り除く!いいな!」
「え?私が結界を?」
「当たり前だろ?結界を張っている邪龍にどれだけダメージを与えたら結界が消えるかわからんのだから!言っただろ?イノリ次第だと…」
ゲッ!邪気を取り除くのを任せたって意味じゃなかったんだね!!
もういいですよ!
やりますよ!やりゃあいいんでしょ?!
「では、GOだ!」
ドクターは飛行魔法で、私は気流バースト、足の裏バージョンで現地に向かいます。
ヒュゥーーン!!
金龍、銀龍の近くから見ていたら、結構近いと思っていたんですが、アテが外れました。
結構、離れています。
ヒュンヒュンヒュン!!
ズバッ!ズバッ!ズバッ!
「あた!いた!ちょ!」
なんか、バンバン弓が飛んでくるんですけど!!
「ドクター!!私、帝国の弓隊に狙撃されてるんですけど!!避けても当たります!痛いです!!」
「あぁ、痛いのは仕方がない…けど、無視!当たらなくしたらいい…簡単だろ?」
簡単じゃありません!!
こうして、無謀とも言える、私たちの救出作戦は始まったのでした。
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