第20話 ドクターはいつの間にか取り引きをしてました。
『あー、テステス。お前らの悪事は、すでに調査済みだ!証拠云々は受け付けない。いちいち説明しなくても、心当たりがあるだろう?加担した奴の、言われたからとか、脅されて無理矢理って言い訳も聞かない。そういう奴らは連れてきてないからな』
お?さっそくドクターの忠告…もとい判決が言い渡されているようです。
「俺たちが何をした?!」
『だからー、心あたりがあるだろ?暴露して欲しいのかね?侵略兵器開発主任君、普段着を着て、誤魔化しても、もうわかっているんだよ』
「あれは、防衛手段のためにだな…」
『うるせー!防衛手段をとっていたのは隣国な…ま、お前ら対策だ!』
「我々は隣国の侵略に対して…『いや、そういうの、いいから』」
『隣国に、防衛対策を打診したのは俺だしな』
「………」
ざっくりいきますね…ドクター。
まぁ、地獄の隠密部隊が動いたから、集め漏れは無いんでしょうけど…。
『さぁ、理解したかね?諸君!!それではお元気で!』
ブツッ
ゴゴゴゴゴゴォォー!!
さて、何が始まるのでしょう…。
つか、城が地中に引きずり込まれていきます。
「俺たちをどうする気だぁー!!」
「逃げろー!!」
『無理無理…ハッハッハ!』
ドクター、なんか嬉しそう…。
「「「俺たち、どうなるんだ?」」」
『昔、生きたまま地獄に落とされた天才外科医同様、生きたまま地獄に行ってもらう』
「「「は??」」」
『死にたくなければ、生きて罪を償え!死んだら、魂を教育され、洗浄され、悪さが出来ないような魂で使ってやるから気にするな』
「馬鹿げた事を言うな!」
『いや、マジマジ。罪を償い切れたら、リゾート地になるから、安心したまえ』
あ、リゾート地って、やっぱり、罪を償ってからなんですね。
ま、当たり前ですかね?
ズズズッ…。
そうこうしているうちに、城は地面に飲み込まれてしまいました。
『閻魔!やってくれ!』
『へい!』
何をするのでしょう?
ズッドォォーーン!!
「は?」
ドクターの合図と共に、城跡から、新しい城が飛び出てきました。
まるで、某有名アニメ映画の冒頭に出てくる、メルヘンチックなお城…シンデレラでも住んでいそうな外観です。
『城って言ったらコレだろ?…ハッハッハ!!』
ドクター、地獄で、こんなもの作らせていたんですね…。
もう、言葉が出ません。
☆☆☆
『さて、イノリ』
「はい!」
『王妃達に、この国の膿はすべて排除したから、城に戻っていいと伝えてくれ』
「了解しました」
『あと、これで契約成立だからなと』
「え?あ、はい」
契約??
『俺は、隣国に契約成立の打診をしてくる』
「はい!その後は、どうされますか?」
契約??
『白龍の奪還!イノリもな』
「わ、わかりました!」
『10分で、こっちまで来てくれ』
「はい!…え?はい?」
『時間厳守な』
ブツッ
ちょっと待って!ドクター!!
私は、王妃にドクターからの伝言を伝え、急いでギルドを後にしました。
タッタッタ!
シュタタタタタ!
ズババババァァァァーー!
「おー!私、こんなに速く走れたんですね!気持ちいいーー!!」
走り出した私は、走るほどに加速していき、まさしく風になった気分になりました。
『まぁ、このスピードだと、10分では着かないけどね』
「うるさいわね!私の気分、台無しよ!!」
私の自立型脳が、勝手な事を言い出します。
ほんと、デリカシーのない脳です事!!
『あんたの脳なんだけど?だいぶ性格形成出来てきてるよね?』
ガーン!!
『仕方ないわね…しばらくは、私がサポートするから、自分の能力を把握してよね!』
「あー!頭の中でうるさい!!サポートって何するのよ!!」
これ、誰かが見てたら、独り言を言う危ない人ですよね?
『こうするの!皮膚は大気の水分を集めて!』
『はーい!』
その声を合図に、私の周りに水分…正確には湿気が集まってきます。
(蒸し暑い…)
『次は足!大地から熱を!』
『はーい!!』
「え?足も自立型なの?」
『当たり前じゃない!本来は、イノリ自身が指示を出すのよ?』
「へ、へぇ…」
まぁ、確かに、ドクターは、自分の血液に指示を出し、皮膚自体に縫合を促してましたけど…。
そんな事を思っていると、湿気、大地からの熱、足の高速回転により、私の体の周りに風が発生してきました。
『そろそろね』by自立型脳
「何が?」
『ゴニョゴニョゴニョ…』by自立型脳
「え?それ、言わなきゃダメ??」
『そうしないと、指示の不手際で体のどれかが千切れちゃうよ?司令塔は、あくまで貴女なんだから!!』
「………」
また、物騒な事をおっしゃる…私の脳さん。
『早く!』
「わ、わかったわよ!!みんな!行くわよ!!」
『『『『ラジャー!!』』』』
あー!うるさい!!
「気流バースト!!!」
ドォォーーン!!
「ギャァァァァァーーー!!助けてぇぇぇーー!!」
私が、叫んだ瞬間、身体中にまとわりついていた風が、背中にまとわりつき、ものすごい勢いで私の体を押し上げました。
そりゃあ、叫びますよ!!
せめて、足の裏に集中してくれたら、姿勢も楽なんですが、背中ですよ?背中!!
押された勢いで私、今…大の字で飛んでますからぁーー!!
ビューンと!!
☆☆☆
「はぁはぁ…ど、ドクター…ただ今、到着いたしました」
「おつかれー」
「あ、あれ?レッドドラゴンも倒れてますね」
「あぁ、見てなかったのか?イノリを避けようとして、転んだ瞬間に気絶した」
「へ?」
「イノリは、俺の目の前で急停止して、普通に着地したけど」
すみません、記憶にございません!!
後から聞いた話だと、到着と着地の瞬間に、私も一瞬、気絶したのだとか…。
自立型脳さんが説明してくれました。
レッドドラゴンは、もちろん、驚いて倒れたのではなく、驚いた事により、魔力枯渇寸前だった身体を維持できなくなったから気絶したんですって…。
「わ、私のせいじゃないですしー」
「あははは!イノリ、何か、面白い性格になってきたな」
「誰のせいですか!誰の!」
「あははは!!」
当然、ギルドから樹海までを10分という制限時間で来させたドクターのせいであり、レッドドラゴンの頭に、ずっと乗っていたドクターのせいです。
しかし、ドクターは、私の言動にケラケラ笑うばかりで、まったく話にならなさそうだったので、早々に諦めました。
「じゃ、行くか」
「ち、ちょっと待って下さい!何故、そんなに急いで行くんですか?すでに夜中ですよ?」
そう、悪人の処罰が夕方から行われたのです。
そして、予期せぬ城の入れ替え。
「え?王妃達は、今晩、城で寝れるようにしたから、今の時間になったんだけど?」
「いや、そこじゃなくて…救出作戦は、明日の晩でもいいのでは?」
「いやぁ、明日の晩までにやらないと、後々面倒なんだよ」
確か、私の体のどこかが『ドクターは焦っている』とか言っていましたが、それに関係あるのでしょうか?
「実験も兼ねているから、結構時間かかると思うしな…やれる事は、今のうちからやってしまわないと…早く龍族も支配下に置きたいし」
『お主、我らを馬鹿にしとるのか?』
あ、黒龍さん、ちょっと怒ってますよね?
「んなわけないだろ?早く白龍を助けなきゃな…その代わり、約束は守れよ?」
『うむ。当然じゃ!金龍、銀龍様のお許しも出ておる…いわば、これは盟約!龍に二言らない!』
あれ?何か、デジャヴ感が…。
「ドクター?三国と龍族、それぞれと、どんな契約をしたんですか?王妃様からは、『承知した』との返事をもらってますが…」
「あー、それな」
ドクターは語りました。
とんでもない事を、抜け抜けと…。
①三国間にある山脈の国土譲渡
は?
②龍族の眷属化と、樹海の譲渡
は??
「つまり、現在、2山脈がドクターの所有物で、白龍を救出したら、この樹海もドクターのものになる…と?」
「そうそう…邪龍討伐も含めてな」
「いつの間に…」
「邪龍討伐に、めっちゃ時間がかかって、実験にイノリが必要なんだよ」
「人の話、聞けよ!」
「あははは!!」
ドクター!
あんた!とんでもねー奴だな!!
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