第18話 ドクターの知らない地獄部隊と悪人狩り
「よし!閻魔!国中にいる、死んだら地獄行きの奴らを、すべて城に集めてくれ!」
『御意!隠密部隊を派遣いたします!』
「隠密部隊?いつのまに!!」
『隠密地獄を耐え抜いた猛者達ですよ』
「隠密地獄って何だよ!」
『まぁまぁ、旦那、また来たらお見せいたしますよ…では!』
今回のドクターは、私に内緒で何かをやるつもりはないようです。
『映像テレパス』なる、念話の映像版が送られてきています。
私は、冒険者ギルドにいながら、外の様子が見れるようにしてもらっているのです。
が、隠密地獄って…。
ドクターは、確か地獄は『リゾート地』だと言ってました。
今の地獄って、どんな風になっているんでしょう?
と、そんな事を言っている場合ではありません。
閻魔の言っていた『隠密部隊』が死後、地獄行きの決まった者達を城に集めると言っていました。
それすなわち、生きているうちに、地獄行きが決まってしまうほどの悪行を重ねた者、ということになります。
人間は、多かれ少なかれ悪い事はやっているはずであり、それを埋め合わせするために、心を入れ替えて善行に励んだり、懲罰という形でその報いを受けます。
それを加味したとしても、隠密部隊が動くほどの悪人がいるのでしょうか?
『王族と貴族、神殿関係者はもれなくご招待だな』
ドクター曰く
王族、貴族は隣国に攻め入るための兵器を隠し持っていた。
その兵士も、別部隊として傭兵を雇っていた。
嫁の実家と、親戚にあたる国に攻め入ろうとしていたのです。
はっきり言ってクズです!
神殿は、その権力を使い、信徒、信徒以外から金を巻き上げ、貴族に賄賂を送っていた。
ドクターの言い方から推測するに、神殿の診療所も、その一環だったのでしょう。
王族、貴族、神殿からは、大量の裏金がワンサカでてきたそうです。
何故、裏金の事まで知っていたかというと、あらかじめ、次元移動と次元収納を使って、すべて回収したからだとか…。
2000万枚の支払いのあと、その裏金で悪さができないように…という優しい配慮からした事だと、ドヤ顔で言っていました。
よくあるシチュエーションではありますが、リアルでやる人、できる人を見た事はありません。
まだ、人生経験が少ないので、知らないだけかもしれませんが…。
私
それ、盗みですよね?
ドクター
いや、隠し金庫で拾ったんだ
私
どれぐらいあったんですか?
ドクター
3億枚ぐらい…2000万枚ぐらい余裕だよな
私
え?そういう問題じゃ……。
という会話は、すべてが終わってから、ドクターと私がした会話の内容であります。
☆☆☆
さて、地獄からの死者『隠密部隊』とは、いかなる者が集まっている部隊なのか…。
答え
『忍者や透明人間に憧れていた犯罪者』
詳しく言うと、忍者みたいに誰にも悟られず『犯罪』をしようとしていた輩の集まり。
碌な人間ではありませんね。
殺し、盗み、誘拐、覗き、夜這い、ひったくり、スリ、万引き…果てはカンニングに至るまで、姿を見せず、気取られず、捕まらず、犯行に及ぶ事ができるスキルに憧れていた死者、そういう仕事を
それが、地獄に行き、鍛えられ、正真正銘の『隠密部隊』となったようです。
訓練の様子は、また地獄に来たら…と言っていたので、楽しみにしておきましょう。
今回のミッションは、いわば『悪人限定、人攫い』と言う事になります。
10人1部隊のツーマンセル5チーム。
ミッション開始は17時、同時スタート。
時間になり、部隊は行動に移ったわけですが、それはそれはスピーディーでした。
酒を飲んでいる、食事をしている、会議をしている、エッチをしている…どんなシチュエーションでも、一瞬で人が消えるのです。
知らぬ間に殺されていた、知らぬ間に眠らされていた…ならわかります。
しかし、紛れもなく消えるのです。
「それぐらい、イノリでもできるぞ?」
とか、ドクターは言ってましたが、いやいや、それは無理ちゃいます?ってなりますよね?
暗殺なら、夜が定番だったり、警備の薄い時間ってのがありがちですが、夕方は、人混みは増え、当然、人目も増えるわけで…。
こんなにあっさりと人が消えて、問題にならないの?と、心配するレベルなのです。
ただ、ドクターの指示は思いっきり大雑把だったため、問題になり得なかったとも言えます。
ドクターの指示
『対象の存在を消して城に集めてくれ』
↓
『暗黙のうちに対象を城に集めてくれ』
閻魔の解釈
『対象の存在をみんなの記憶から消して城に集めてくれ』
そりぁ、誰にも気づかれず消せるわけですよ。
私にはできませんけどねっ!
☆☆☆
城に集められた対象者は、侵攻計画に加担していた者150人。
資金援助の貴族100人。
侵攻実行傭兵部隊5000人。
暗殺部隊500人。
一般人になりすまし、普通の生活をしていた者もいました。
だが、閻魔の目は誤魔化せなかったようです。
「日が落ちたら、実行に移す!!城より半径1km以内に、一般人は入らぬよう手配を頼む!イノリ!!」
え?
いきなり私?
「どうすれば…」
「自分で考えなさい…成長の一環だと思って…これも勉強だよ、イノリ」
「わかりました」
さて、お題は出されました。
まるで試験のようです。
走り回って、みんなに知らせるか…策を作って、入らないようにするか…。
『いやぁ…ドクターは、そんな安置な事は望んでないと思う』by髪の毛
『だいたい、イノリの体は毒耐性があるから浄化できるんだし、血液は無限再生するんだし、考える必要ないと思うよ』by爪
『自立型爪』…私の爪は自立型だったんですね?
…じゃない!
元々、患者に指を突き刺すのは、輸血したり、細菌やウィルス、毒物を吸い出すため。
つまり、私は爪から血液を出す事も、浄化後の廃棄物を排出する事も可能なのです。
今の意見を総合し、ドクターの趣味を加味するなら、これしか思い浮かびません。
『水魔法!血の牢獄!張り巡らせろ!死を司る黒き結界!!』
あのー!
私、何も言ってないんですけどね?
今の詠唱をしたのは、右手の人差し指…の、爪です。
『いずれは、私達を操作するのはイノリだからね?』
「は、はぁ…」
自分の爪に、思いっきり物騒な事を言われました。
しかし、こうして、ギルド内にいるにも関わらず、城の周りには、ドス黒い血液の結界が張られました。
成分的には、少し触っただけで即死するレベルの不純物です。
『これを魔物に使えば、血抜き、魔力浄化、瘴気浄化をしながら、倒せるからね』
by爪
なんと、私にも、敵を倒す術があったようです!
…じゃない!
ドクターの計画が終わるまで、血液の結界には誰も近づかないで!
と願うばかりでした。
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