第16話 ドクターは王国潰しに専念していました。
王太子が引き連れている軍勢は、見覚えもある騎士団。
確か、1日寝てろと言われた者もいます。
すっごく嫌な顔を見れば、無理矢理連れて来られたのが良くわかります。
そこへ…。
ヒュゥーーン!
(ん?)
ベキッ
「いたっ!」
何かがどこからか飛んできて、王太子の顔に直撃しました。
((((プッ!クスクス))))
声には出しませんでしたが、全員が顔を伏せ、肩を振るわせています。
「誰だ!私は王太子だぞ!」
飛んできたのは、石を紙で包んだ、ただの投擲。
その紙を広げると
『雑魚はひっこんどけ』
と書いてありました。
ヒュゥーーン!
ポスッ
今度は、騎士団員の手元に…。
『寝てろって言っただろ?もっかい死にたいのか?』
「ギクッ!」
確か、この人は『蘇生』させた人です。
輸血や治療を行った人の記録は、私の脳内に、ちゃんと記憶されています。
ヒュゥーーン!
ベキッ!
「いてっ!誰だ!この私に向かって石をなげるのは!!無礼者!出てこい!」
ヒュゥーーン!ヒュゥーーン!
ベキッ!ベキッ!
「いたたた!やめろとゆうておろうが!」
『テメーにくれてやる素材はねー!』
『ギルマスとナースに手を出したら城を潰す!』
この投擲の犯人はわかっています。
もちろん、ドクターです。
煽り方にしろ、書いてある内容にしろ…。
「殿下!申し訳ありません!体調が優れないので、帰還させていただきます!」
「私も!」「私も!」「私も!」「私も!」「私も!」「私も!」「私も!」「私も!」
「「では、失礼します!」」
ザッザッザッザッ…。
「貴様ら!ここで帰ったら、懲罰ものだぞ!」
ヒュゥーーン!
ベキッ!
『騎士団に懲罰を与えたら、城潰すぞ!クソ野郎!』
「こやつ!どこから投げておる!やれるもんならやってみろ!私は時期国王だぞ!!極刑にしてやるわ!!」
ヒュゥーーン!
今度は、王都に向かって、結構大きな岩が飛んでいきます。
ドッカァーン!
(あら?本当に城を潰したようですね…)
「な!全員、城に戻るぞ!何者かの攻撃を受けている!城の守りに入…れ…って、誰もいやいではないか!」
ヒュゥーーン!
ドカッ!
『プッ!』
ドクター、間違いなく、王太子に喧嘩売ってますね!
「さ、急ぎましょう!また王太子に無理難題を吹っかけられる前に!」
「し、承知した!」
私とギルマスは、急いでギルドに戻りました。
ちなみに、引き上げた王太子の顔は、見るも無惨な…まるでボクシングでめったうちにされたような顔になっておりました。
『あとは上手くやってくれよ!イノリ!』
『わかりました!』
ドクターからの念話です。
やはり、さっきの投擲は、ドクターの仕業でした。
☆☆☆
その後、ギルドで鱗の買い取りを終え、金貨1300枚を受け取り、早々に宿に戻り、ベッドに潜り込みました。
ドクターから『着替える必要はない』と言われてはいますが、流石にナース服のまま、ベッドに入るわけにはいかず、下着だけになって布団を深くかぶりました。
今回は、『自立型眼球』を両目とも使う予定だからです。
宿屋の人には、呼ぶまで部屋には来ないようお願いをし、自立型眼球を引っ張り出しました。
絵面的にも、これは人に見せられるものではありませんね。
『眼球をくり抜く』というエグい絵面になってますし…。
「お願いね」
『『任せとけ!』』
フヨフヨフヨフヨ…。
この絵面もどうなんでしょうね?
まぁ、まずは、岩の投擲があった城の状況です。
(え?)
確かに、城が投擲対象として破壊されています。
しかし、その場所は『王太子の自室』のみ。
国王以下、王太子付きの従者が、それぞれ1枚の紙を持って、呆然と立ち尽くしていました。
従者の持っている紙には
『しばらく王太子の部屋に入るな!入ったら死ぬ!』
と書いてあり、国王の紙には
『王太子に命令したのはお前だから、治療費は1500万枚に引き上げる!本日の夕方までに、ギルドまで届けるように!届かなかった場合、この城は跡形もなく無くなると思え!byドクター』
と書いてありました。
「こんなもの、誰が払うか!」
ヒューン!
『あと3時間…フッフッフ』
「な!今すぐ財務相を呼べ!」
「はっ!こちらに控えております!」
「金貨1500万枚を夕方までに用意できるか?」
「一括払いなので、軍事費を切り崩してなんとかするしかありません!その後、税金をあげたら、長期的には大丈夫だと思います」
「ふむ…」
ヒューン!
『税金はあげるなって言っただろ?騎士団長から聞いただろ?これ以上、下手な小細工をするなら、城潰すぞ!罰として、残り時間2時間だ!byドクター』
「知らぬ!騎士団長の言った事は戯言だ!聞いてはおらぬ!払う必要はない!」
ヒューン!
『嘘つき!騎士団から嘆願書受け取ってるくせに!さては、また増額してほしいようだな!あと1時間で金貨2000万枚をギルドまで運べ!マジで城潰すからな!byドクター』
「また値上がった!!これは不味い!これ以上の画策は無意味だ!神殿長を呼べ!あと1時間でギルドまで2000万枚を運びこむんだ!!これ以上増額されたらたまらん!!」
ヒューンヒューン!
『死にたくなかったら、1時間以内に城から逃げろ!全員だ!』
従者達には、こんな文章が届けられていました。
☆☆☆
騎士団長からの嘆願書とは、騎士団員全員の連名で
治療費を支払わなかった場合は、私達、全員、騎士団を辞めます。
という内容の書面でした。
受け取った国王はもちろん、財務相、各大臣、貴族、城の従者達は、この内容を知っています。
当然、城中パニックになりました。
王太子の部屋のみが破壊され、文句を言うたびに手紙が届く。
従者には、避難勧告が出される。
誰しも、治療費を払わなかった場合に、城がどうなるか…想像ができてしまうからです。
そこへ帰ってきた王太子。
「こ、これは!!」
「バカ息子!お前は何をやったんだ!支払い金が値上がったんだぞ!!」
「え?私は…」
「うるさい!!」
「くっ…ちょっと部屋で休んできます…」
「お前の部屋なぞ、もうありはせんわ!!」
「え?」
王太子、顔面ボコボコで、心もボコボコ…。
可哀想に…とは思いません。
そこへ、更に追い討ちがかけられます。
王妃が、一枚の紙を持って、般若のような顔で王様と息子に怒鳴り散らしています。
「あなた!これは本当ですの?!」
「そ、それは…どこから持ってきた!その書類は厳重に…あ!」
「くっ!もう遅いですわ!これ、本当ですのね?
「パパ!さよならー!」
「パパ、やりすぎはダメだよ?」
「「「では、さよなら!!」」」
ヒラッ…。
その紙には、こう書かれていました。
王妃へ
王様と王太子は、神殿と手を組んで、貴女の実家である隣国『ライタニア王国』及び、同盟国である『バルクス王国』に反旗を翻し、現在の貴女の国『ファルミス王国』として、国家統一を目論んでいる。
※各計画書 数十枚づつ添付
あらぁー!これ、この国滅んじゃうんじゃないの?
ドクター、困らないのかな?
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