第13話 ドクターはやはり非常識でした。
「よし、素材はこんなもんだな…」
「いったい何を…」
「まぁ、見てろって…」
私、イノリこと、ドクターの助手であるはずの私ですら、ドクターが、これから何をするのか分かりかねます。
スチャッ…。
ギルマスが、堪らず質問をします。
「それは?」
「10トンメス…これじゃないと、ドラゴンの素材は硬すぎて加工できないんだ」
「じゅ…」
あ!ギルマス、固まっちゃいました。
サクサク…。
シャッシャッ…。
グリグリ…。
「よし!骨完成!」
グチュグチュグチュグチュ…。
「「「「おぇー!!」」」」
「よし!内臓完成!」
シャッ!
スッスッスッスッスッ!
チクチクチクチク!
「骨角形成完了!」
グチュグチュグチュ…。
スッスッスッスッスッ…。
「肉体縫合完了!イノリ!次元収納から、血液を抽出、輸血開始!」
「はい!」
私は、ドクターに言われるがまま、次元収納に手を入れ、指先を男性の胸に突き刺して、輸血をしました。
(今のは、何の血液だったのでしょう?)
「よし!そのへんでいいだろう!霊魂縫合!」
「イノリ!蘇生!」
「はい!」
パン!パン!パン!パン!
「グフッ」
「お、お父さん!」
「おー!サヤ!心配して来てくれたのか?って、俺は死んだはずじゃ…」
「あのドクターが、生き返らせてくれたんだよ!」
とかなんとか、感動の再会をしておりますが…。
「ドクター?この人は、安静にしてなくていいんですか?」
「あぁ、あいつはいい。なんせ…ゴニョゴニョ」
ドクターは、珍しく、私に耳打ちをしました。
「ちょ!」
「内緒な…」ニッコリ
「………」
ドクター!マジっすか!
足りない部位を『黒龍の素材』で補填したって!!
☆☆☆
「お兄さん、明日にでも、ギルドに行って、登録のし直しをいたらいい。おそらく、ランクが変わってるはずだ」
「え、えぇ…わかりました。さぁ、帰ろうか…サヤ。お母さんが心配している」
「うん、お医者さん、ありがとう!」
「おー!頑張って薬剤師になれよー!」
「はーい!」
こうして、親子は笑顔で帰っていきました。
ドクターの目的は、タダで薬をもらうため…一瞬でも、いい人だと思ったのは間違いでした。
「まぁ、登録石は、本部にしかない貴重な選定石だ…ランクアップするかは本人次第だな…」
ギルマスは、Dランク冒険者の後ろ姿を見ながら独り言を言っていました。
本部以外のギルドでは、従来通り、功績に合わせて、ギルマスがランクを決めています。
年に一度、王国中の冒険者があつまり、登録石で判定をするそうです。
本部を含めて、6つのギルドがあり、公正を期すためのイベントだと言っておりました。
サボっている冒険者はランクが下がり、ランク以上に頑張っている冒険者は、数は少なくても、上がる可能性があるのだそうです。
それもこれも、登録石は選定神の加護があって発動する、この世界には存在しないアーティファクトだからだそうです。
そりゃ、ドクターが『ぶっ壊す』と言った時に、ギルマスが慌てたはずです。
(つか、選定神って、どこかで聞いたような…)
そんな事を考えていると、またしてもドクターが、現実味あふれるセリフを吐いています。
「で、騎士団や冒険者の治療費は、後で、それぞれに請求するからな?結構な額を覚悟しておいてくれ」
ドクターは、騎士団長とギルマスに現実を突きつけていました。
「お、王国に申請しておきます…」by騎士団長
「な、なんとかしよう」byギルマス
今回の治療は、死者まで蘇生させています。
2人とも、言い訳ひとつ言いません。
いえ、言えません。
すでに、ドクターはギルドと騎士団を掌握しているような気がするのですが、気のせいでしょうか?
まぁ、実質、誰1人として死人を出さなかった功績は大きいとはおもうのですが…。
「チョロいな…」
これですよ!
ドクター…そのわっるい顔さえなければ、救世主扱いされると思うのですが…。
☆☆☆
「さて、茶番は終わりだ!これから、ここにいる誰もが、俺をSランクだと認めざるおえない事実を証明してやる!」
ドクターにとって、死者を甦らせる行為すら『茶番』だったようです。
シュバッ!
これは、いつもの次元切り。
ドクター曰く、魔法陣を組んで次元収納を出すよりも簡単だとの事です。
普通は、そんな芸当、できないんですけどね。
「そもそも、属性魔法は、適正のある者が、大気に充満する魔素を練り上げ、魔法陣として構築し、任意の魔法を効率よく行使するためのものでしかない…水属性の魔法使いが、火属性の魔法陣を構築しても、うまく構築はできないし、発動もしない…ま、当たり前だな…属性魔法は相性があるからな…」
ドクターは、みんなを次元収納…もとい、次元空間に案内しながら、何やら講義をしています。
「うちのイノリは、光属性と水属性、あと、土属性が使えるぞ…」
え、えーー!!
初耳なんですけどぉー!!
「あれ?知らなかったか?血液を操作するのは水属性…血液中の鉄分や成分は土属性、体内で、毒や不純物を浄化するのは光属性…イノリの血液自体が、上級回復薬となるんだ」
ま、マジっすか!
「今の話を、他の者にしたら、俺の実験体になると思っておけ!自分の配下にスカウトしても、同じだ!わかったか?」
「「「「は、はい!!」」」」
もうすでに、SランクやAランクの冒険者に、最初の勢いはありません。
「ちなみに…」
まだあるんですか?
「イノリを怒らせたら、全員、体内からすべての水分が抜かれてミイラになるから気をつけてな!まぁ、体液は消毒薬に…血液は輸血用に、大量にストックできる仕組みだから、100人程度までなら、余裕でミイラだな…ハッハッハ!」
「「「「イノリ様!これからもお願いいたします!」」」」
「は、はぁ…」
みなさん、すみません…私の能力、今知ったんで、『様付け』をされても困ります!
「で、毒素はもちろん、魔物の血液も、浄化できるから、血液が赤くなった魔物は食べられるようになる…不純物の大半は魔素だからな」
「ほうほう…」
ギルマスが、今の言葉に反応しました。
「ドクター?その、不純物は、いったいどこから排出されるのでしょうか?」
「ん?…ゴニョゴニョ」
「な!まさか!」
う、嘘でしょぉーー!!
ウンコ代わりに魔石が出るとか!
人に言えないし、見せられもしません!
なんのための生殖器官ですかぁー!!
結果
不純物である魔石や毒素は後ろから、消毒液となる体液は前からと乳首から…。
私の体を弄んだわね!!
って言ってもいいですよね?
この案件!!
ドクターのバカァー!!
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