第6話 ドクターの言動をスルーできませんでした。
「あぁ、そうそう…今なら理解できると思うから言うけど、俺たちの衣類も生きてるからな…布に見えるけど、顕微鏡で見たら、間違いなく生き物だから…捨てるのも、他の服に変えるのも無しだ!いいかい?」
え、えぇーー!!
「な、何故、そんな物を作られたのですか?」
この質問は、おかしくないはずです。
「いやぁ、アニメでな…主要キャラクターが、いつも同じ服を着てるんだよ。でな?それを再現しようとしたら、普通の布ではむりだとわかって、垢や汚れ、一切を食べる細胞を織り込んだんだ。破れても、自己修復するし、食料は大気中の微生物やら埃やらだ…お手軽だろ?」
おかしい!この人、おかしい!
発想が!!
「俺は外科医であって、仕立て屋じゃないから、そりゃ、そうなるさ」
「すみません!意味がわかりません!」
あまりの飛んでる発想に、つい口答えをしてしまいました。
「細胞レベルの生物を切って繋いで、糸にして作ったって意味なんだが?」
「いえ、そこではなく…」
「まぁ、気にするな…そうやって、感情があらわになっていくイノリは可愛いぞ?」
「………」
ふぅ…諦めましょうか…この件は。
☆☆☆
「要件はいいかい?」
「はい!結構です!私、寝ます!」
「あはは…お休み」
「お休みなさいませ」
私は、何かドッと疲れてベッドに潜り込みました。
カチャカチャ…。
(ん?何の音でしょう…)
ここは、寝たふりをして、こっそりと観察いたします。
私がベッドに入って、しばらくすると、ドクターは何やらカチャカチャと、硬い何かを取り出しました。
丸い玉、例えるなら、ビリヤードの球のような物です。
「あいつ、こんな物を持ってたんだな…体内に」
あいつ?体内??
「何なに…『神の宝玉』か…あいつ、選定神とかの称号持ってたよな?全部で7つ…ふむふむ…それぞれの属性魔法の魂魄…へー。つまり、これは魔法のアーティファクト。この宝玉を使って、魂の選定をし、適切な属性を与えて転生させる…って事か…よくあるチート能力云々の源ってやつだな…イノリが、異世界云々言うから、どんなもんかと思ったら、ただの魔素制御装置じゃねーか!これなら、魔素が少ない現代の地球でも、作って作れない事はないな…つまらん」
え?ちょ!
ドクター、何してんですか?
いつ、選定神様の体内から抜き取ったんですか??
それ、神様を神たらしめる、めっちゃ大事な物じゃないんですか?
「あ、この透明なやつは神核だな…赤が火属性、水色が水属性、黄色が雷属性、緑が風属性、茶色が土属性、白黒に色が分かれてるのが、光と闇の属性か…」
ゲェーー!!
マジもんですよ!それ!
とんでもない展開に、寝たふりをしていても、眠れる気がしません。
☆☆☆
更に、ドクターのとんでも発言は続きます。
「とりあえず、神核はいらないから、次元収納っと…」
シャッシャッ!
ポイ!
「選定神の脅し用ゲット!」
は?
「雷属性も風属性も水属性も、大気から作れるからポイっと…いや、いちいちかき集めなくていいから、もらっておくか…選定神の脅し用だけでいいや…あとはもらっておこう」
え?
私の胸のドキドキが止まりません。
ドクターは、いったい何をなさるおつもりでしょうか…。
「よし!まずはこれを…」
シャッ!
キィィーン!!
「ありゃ!結構硬いな…こんな音出したら、イノリが起きてしまう…黒刀の1トンメスじゃダメか…」
起きてます起きてます!
寝れません!!
黒刀の1トンメスって何ですか??
「なら、10トンメスでやるか…これは、流石に指に挟めないぞ?久しぶりに使うな…これ。地下室を作った時以来だ」
あの地下室、マジでメスを使って掘ったのは理解しました。
シャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッ!!
ひたすらに、メスを使って捌く音が鳴り響きます。
例の、球を切り刻んでいるのでしょう。
「よし!次は…」
ザクッ!
ドバドバドバドバ…。
ビシャァァーー!!
「グッ…流石に心臓は痛みが走るか…」
キャー!キャー!
ドクター!!
何を10トンメスで心臓貫いてるんですか?!
『まーた無理してー』
え?誰?
「お、おぅ…久しぶりに心臓貫いたわ…ちょっと痛い」
ちょっと??
「今回は、この粉を身体中に馴染ませてくれ…早く…死ぬ…」
キャーキャー!!
ドクターが死んじゃう!!
『嘘つき』
「あれ?俺の迫真の演技バレた??」
『テツヤ、お前、不老不死じゃねーか』
「まぁな、でも、たまには死ぬシチュエーション欲しいだろ?」
『知らん!で?これを体内に馴染ませたらいいんだな』
「おうよ!これで、わざわざ大気を操らなくても、やりたい事ができるようになる」
『まったくお前って奴は…だいたい、血液に人格もたすとか、キチガイの発想だぞ?』
(血液に人格………)
つまり、今、話してるのは、ドクターから流れ出している血液。
「すまんな…そうしたら、よほどの事がない限り、輸血の必要ないだろ?」
『まぁ、そうだけどよ…だいたい、人間の魂魄を切って繋いでってできる時点でおかしいよなお前』
(………)
「いやぁ、実験だよ実験…幽体離脱した魂を繋げられるか…」
『で、できたから、体の細胞ひとつひとつに魂を入れた…と?』
「そうそう」
『そんな実験ばっかやってるから、不老不死になっちゃうんだぞ?』
「いいんだよ。同じようなパートナーできたし」
私の事ですね。
え?
同じような??
つまり、私も不老不死???
とんでもない話を聞いてしまいました!
「よし!戻ってくれ!縫合は皮膚に任せる!」
『『ラジャー!!』』
『あんまり無理すんなよ?』
「おう!ありがとうな!」
しばらくの静観…。
静かになった部屋には、シャーッという、血液がドクターの体に戻って行く音と、チクチクチクと、皮膚を縫合する音だけが響いていました。
しかし、事態はそれだけでは終わりませんでした。
「閻魔!」
ニョキッ…。
『へい!旦那!お呼びで?』
ドクターに名指しされた『閻魔大王?』は、床から顔だけ出して、にこやかに笑っています。
はっきり言って怖いです!
「これ、預かっておいてくれ」
ドクターは、先程、次元収納にいれた、選定神の『神核』を閻魔大王に渡しました。
『これって、神核っすよね?』
「おう!選定神ってやつのな、宝物庫に入れて、警戒を最大値にしておいて欲しい」
『わかりやした!最近、治安が乱れて怪我人が増えているので、またお越し下さいませ!』
「そうだな…この時代の調査が終わり次第、全員治しに行くよ」
『助かりやす…では!』
ドクターは不老不死、私も不老不死。
ドクターの体内には、各細胞毎に人格がある。
何故か閻魔大王様と交流がある。
すみません。
私の脳内がショートしそうなので、この辺で休ませていただきます。
おやすみなさい。
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