第30話

『アサちゃん!!!!』


急に倒れたアサミを見て トキは胸が張り裂けそうになった


タマも人化して泣きながらアサミに張り付いている


「お姉ちゃん お姉ちゃん」


と何度も何度も声を掛ける。


トキは急いで念動力でアサミを持ち上げベッドに寝かせる。




『タマ 水魔法でこのタオルを濡らしておくれ』


精一杯の看病のおかげか


2時間くらいしたらアサミが真っ青な顔で目を開けた。




「ごめんなさい ごめんなさい 悪い子でごめんなさい ばあちゃん タマ 捨てないでっ!」


起きて早々 その必死の言葉に二人も胸が痛くなる。


「お姉ちゃん タマどこにもいかないよ?なんで泣いてるの?お腹いたいの?」


必死にアサミに何があったのか聞こうとするタマ。


そんなタマを宥めて落ち着かせる




『ああ アサちゃん ちょっと話そうかねぇ』


「話・・?」


『ばあちゃんは ずっとね アサちゃんだけいればいい。後はどーなっても構わないってずっと思ってたんだよ』


「うん 私もそうだったよ。」


『それでアサちゃんが笑ってくれてさえいればばあちゃんは幸せだったんだ 


アサちゃんが泣いたり 笑ったり 怒ったり 両親が死んでから一切しなくなっただろぅ?』


「そうだったね。あんまり覚えてないけど。」


『アサちゃんがまた笑ってくれる日がくるまでなんだってやってあげたかった。


いつかそうなるってずっとアサちゃんが立ち直るって思ってた。』


「あの時はばあちゃんがいたから 少しずつだけど自分を取り戻せた気がする。」




『アサちゃんが優しい子だってのはもちろん知ってる 努力もしてたし


ばあちゃんも一緒に遊んだりしたね。


アサちゃん 漫画もアニメも大好きだったからばあちゃんもいっぱい読んで勉強したしね


やっと前みたいに笑って暮らせるときが来たって思ったらずっと離れなかったね』


「うん っそうだったね ばあちゃんに嫌われたくなかった ずっと一緒にいたかった。」


『私も甘やかすのが楽しかったし でも 甘やかしすぎて 他がどーでもいいって思い始めたんじゃないかい?』


「うん そうかも 周りに興味なんてなかった アニメとかの趣味もばあちゃんと話すのが楽しかったから必死で覚えたのかも」


『ばあちゃんだってそうだよ。ずっとアサちゃんと同じ趣味が持ててうれしかった 


でもね あの時 友達と遊んでおいでって言えたらよかったなぁってずっと思ってた。』


「あはは そーかもね」


『私が死んだ時 アサちゃんどう思った?あの後 どんな気持ちだったか聞かせてくれないかぃ?』


「・・・・」


「死んでもいいかなって思ったよ。」




トキはその言葉を聞いて 軽く念動力でアサミの頬っぺたを叩いた。


これがトキがアサミに手をあげた初めてのことだった。






『そんなこと言わないでおくれよ アサちゃんの事ほんとに大切なんだよ 傷つけたくなかった


死にたくなかった アサちゃんの子供抱いてあげたかった。』


「ごめんなさい・・・」


『アサちゃんは人の死に敏感で繊細 最後に傷つけたのはばあちゃんだ そこでアサちゃんを壊しちゃったんだね』


トキも泣きながらごめんなさい ごめんなさいと謝り続ける。


「ばあちゃんが死んだ後 何も考えられなくて ただただ 死んでない どーなってもいいやって


自暴自棄になってた 体も壊してああ やっとばあちゃんに会えるって自分から死んでたのかもしれない。」


『簡単に死にたいなんていうな! ばあちゃんがどれだけアサちゃんのこれからを考えたと思うんだい!』


「いつも 思ってた ばあちゃんに会いたい 会いたいって 他はどーでもいい 手を伸ばせばそこに誰かが笑っていたこともあったかもしれないけど その可能性を全部捨てたのが私なんだって


さっき ミュー様に言われた 偽物っての私にはピッタリなんだよ。選ばない私 考えない私


なんで私なの?つらいよ」


『泣いてもいい 逃げてもいい ばあちゃんもタマもいる 家族なんだよ 


何でも相談しておくれよ 怒ったっていい 何にも言わないで昔みたいになんもしゃべらない方が


私もつらいよ タマだってそうだ 見てみなよ ずっと泣いてるんだよ』


「タマ ばあちゃん ごめんね 弱くてごめんね 何かする前から諦めるなんて卑怯者だ私」


『やっと言ってくれたね ばあちゃんもだよ アサちゃんを嫌なことから遠ざけて 他と関わらせないようにしてた アサちゃんが弱いっていうなら 私も弱いよ』


「強くなれるかな?」


『ああ スキルでも魔法でもそんなの本当の強さじゃないんだよ アサちゃんの立ち向かう心 ばあちゃんと一緒に強くなろう』


「ばあちゃん・・・タマ・・・・」




3人で抱き合う。


「ごめんね ごめんね 私何にも考えてなかった だれかがやるでしょとか思ってた ばあちゃんとタマに押し付けようとしてた 私 がんばっていいのかな・・・?」


『本音で語り合ってなんでも言ってほしいのが家族なんだね 私もやっとわかった 


ただの依存じゃない これが家族愛なんだよ 悪いことは悪いってちゃんと叱ってあげればよかった そんな簡単なことだったんだよ』


「うん・・ うん・・ 大好きだよ ばあちゃん タマ」


『今のアサちゃんなら安心してみてられるよ この世界はゲームじゃないんだ 精一杯生きていこうじゃないか!』


「タマもお姉ちゃんとおばあちゃんだいすきだよ!がんばろうねっ!」


3人揃って 泣いて泣いて泣いて抱き合った。




この世界に来るまでの5年 アサミがずっと欲しかった温かさがやっと手に入った。


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