第21話

アサミが新人でDランク冒険者になったことは もうギルド内では結構広まっていた。


ジェシカがギルド規定やランク昇格 買取などの長時間説明をしたら


「あ 大体ギルマスに聞いたんでだいじょぶです。」


ってサクッと言われたジェシカは 密にギルマスにイラっとした。




ソフィーとダリアは 説明を終えたアサミをギルドの食堂に呼んでお祝いをしようと思っていた。


Dランクにいきなり飛び級でCランクが内定している将来期待の冒険者は珍しいことなので


ギルド内で次々に声をかけられるアサミを見て


二人は 『あの子私の友達なんだぜ』っと ちょっと誇らしかった。




「では アサミ Dランク冒険者 おめでとう!」


「おめでとうですわ!」


『アサちゃん おめでとぅ!』


『おねーちゃん なんか食べていい?』


「えへ ありがとう でも調子ノッてるとか言われてイジメられないかな・・」




アサミは基本マジメな人間だ。ばあちゃんとのやり取りを見ていると 結構軽いと思われるかもしれないが 周囲とのコミュニケーション能力はあまり高くない。


男に言い寄られたり 女に色々と陰口を言われると 『ひぅ・・』とすぐ傷ついてしまう。




「まぁ 実力は確かにあるし 勝てるとは思うが くすぶってるDランクにはやっかまれるかもしれないな。」


「そういうのはほっとけばいいのですわ!実力も図れないでケンカを売るなんて 実戦じゃ即死ですわよ!」


「めんどくさいの嫌いなんだけどなぁ・・」


と困った顔をする。


「それはそうと アサミはこれからどうするんですの?」


「どう とは?」


「そうだ タマちゃんの購入費とか結構高かったんだろう?」


「ん- 残り金貨40枚かなぁ・・」


「結構しますわね。でもこの子はまだまだ能力隠してる気がするんですの。」


「ん- 私の鑑定でも 見えないことが多いんだよねこの子(まさか聖獣なんていえない・・)」


「タマちゃんはつよい まだわからない事もあるかもしれないがこの子ならアサミのいい相棒になってくれるさ!」とタマの首をチロチロと指でナデナデするダリア。


タマも気持ちよさそうに きゅぅっ!と 鳴いている。


ダリアもそれを見て幸せそうだ。


「それじゃ お金を貯めないといけませんわね。何か目途は立ってますの?」


「ん- (異世界買い物はあるけど何が売れるかはまだ市場調査が必要だしなぁ)」


『まずはこっちにない商品を考えないとだねぇ。最悪 故郷から輸入したって言ってそのまま売ってもいいと思うよ。作り方はレシピとして売ってこちらの世界の人に作ってもらえばいいんだよぉ。』


「私の実家 商家なんだけど この大陸ではないの。でこちらの大陸では珍しくても 実家ではそこまで高くない物が結構あると思うの。そういうのを売りながらクエスト受けようかなって思ってる。」


『ばあちゃん 喫茶店とかもしてみたいねぇ。メイド喫茶とかどうだぃ?』


(! いいんじゃない?!貴族様気分を味わってもらうとか!差別とかあるかはまだわかんないけど獣人 エルフとかに接客してもらうと もしあってもかわいければ正義でしょう!?そこで緩和とかされるかもだし!)


『おいしいものたべれるぅ?』


「ところで この国って種族的な争いとかあるんですか?別の種族が一緒に働くとケンカするとか ドワーフとエルフが仲が悪いとか」


「そうだなぁ この国フリーダムでは人種差別は禁止だ そういうのが嫌になった奴らが作った国だからな。初代国王は勇者で 奴隷解放で救われた者たちに慕われて国王になって一緒に国を作ったそうだ。」


「(自由・・ね日本人かな・・その割には文化発展してなさそう 転移者には時間のズレがある?)そうなんだね そろそろ開店準備も始めようと思ってたんだけど 店員雇う時に問題あったら困るかなって思ってね。」


「そういうのはあんまりありませんわね。違う国ではヒューマン至上主義とかはありますけど この国は平和そのものですわ。まぁ 借金でお金が払えない人達を集めて 宿舎に止めて 仕事をさせるって派遣会社っていう人手がたりない所に労働力を貸す場所はありますわね。


奴隷のように扱う場所ではないのですけど。初代国王が奴隷大嫌いだったらしくて。」


(まんま派遣じゃん!まぁ 奴隷を買えとか言われなくて助かるけど。)


『アサちゃん 従業員はそこで借りてもいいかもねぇ。後ろめたいとこがないみたいだし。』


「そっか 店の店員で雇うのもありかなぁ」


「どんなお店にする予定ですの?」


「女性の化粧品とか ぬいぐるみとかオシャレアイテムを売ったり 軽食出したりお菓子や飲み物出す喫茶店とか?かわいい女の子が集まりそうなお店がいいかなって思ってる。」




その 『かわいい』を聞いて ダリアが ぴくっ!と反応する。


オシャレに興味出たようで何より。


「この国でお菓子といえば?」


「クッキーとか干した果物とかですわね。他の国では けぇき だとか くれぇぷとかあるそうですけど 食べたことありませんわ。」


(ふむふむ 一応は売ってるんだね。甘味は狙えるね)


「ああ それレシピとかわかるよ。うちの店で出してみようかな」




ガタっ!




どうやら近くの席で聞いていた女性冒険者がこっちを向いて立ち上がった!


甘いものが好きらしい。




「聞いた?アサミちゃん甘いの売るみたい。」


「ほんとー?この国はあんまりそういうのないし うれしいかもー!」


「どんなのがあるのかしら。」


「待ち遠しいわね。」




女性冒険者さんはいいお客になりそうだ。

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