第19話

ジェシカの所に戻るとソフィーもダリアと合流してアサミのことを待っていた。


「アサミ!やっときましたのね!あら・・・?そのかわいい子はなんですの?!」




ソフィーがアサミの肩にいるタマを見つけて手をワキワキさせている。触りたいんだろうか。




「この子はギルドから売ってもらった新しい家族のタマだよ!私 テイマーだから!」


「見たこと無い子ですのね・・ でも愛らしくて素敵ですわ!タマちゃん 初めまして 私はソフィーよ。よろしくお願いいたしますわ。」と タマのあごを撫でると


「きゅっ」と一鳴き それだけでソフィーの心はメロメロになった。


そんなソフィーの後ろではダリアが『触りたいけど 自分なんかが女の子みたいになれない!』


と 一人葛藤していた。




ここに来る前にもダリアはいやにナンパされたり、通りすがりの男に振り向かれたりと色々あった。


ギルド内に入ってからも 初めはダリアと気づかずに冒険者の男が優しくしてくれたりと今までとの違いに困惑していた。


「おい いつも男だなんだ言ってるくせに 何の用だ!」


と話すと 相手は初めてダリアだと気づいて驚いていたくらいだ。


ビキニアーマーで気づかないとか目が悪いんじゃないだろうか。




「そうだ アサミ ダリアったらモテモテですのよ!(どーやって私のダリアを狙うあの男共を駆逐して差し上げようかしら)」


(今なんか不穏な事を言った気がする・・)


ソフィーの思わぬ言葉を聞いてしまったアサミは知らないふりをしようと決めた。


「やっ やめてくれぇ 私なんかがモテるはずないっ」


と 言いながらも まんざらではなさげに 髪をイジイジしてたりする。


「ア アサミ あのだな・・」


「なんですー?」


「その タ タマちゃんをあとでモフモフさせてくれないかっ?!」


「ああ そういう 試験の後ならいいですよー。」


「おっ 今から資格試験か アタシらも見学いいかい?」


「見ますの!アサミの実力ならいけるでしょうけど!」


「戦闘試験になったら見に行くからね!」




ということでジェシカに話して試験会場にいくことになった。


「ではアサミさん まずは筆記です。冒険者たるもの 依頼も読めないような人には何にも頼めません。ギルドからの注意事項すら読めないなら資格なしということです。


あとは計算ですね。これも冒険者では必須です。計算できなくてイチイチ受付嬢に報酬の確認とかでトラブルになりがちなのです。あとは悪い商人にオツリを誤魔化されたりで 馬鹿にされた冒険者が商人を襲撃 なんてこともありましたので計算できない人は資格なしってことなんですね。」




「では時間は1時間ですー。 どうぞ。」




アサミは試験問題を見て唖然とした 計算問題が小学生レベルだったのだ。


一番簡単なので 10+3はとかである。ここまで文明レベルが低いのかとこの世界のことを心配し始めた。一番難しくて 100桁の掛け算だ。 これはもう余裕だなと5分もしないうちに50問解いて計算は終わった。


次は文字の読み書きだ。初めて見る文字だったが地球転移者のアサミには翻訳が勝手にされてしまうらしく何の問題もなく簡単に終わってしまった。


結果2教科 10分で終了 残りの50分で採点をすることになった。


普通は戦闘試験をしてるうちに採点するらしく慌てて係の人を呼びに行ったジェシカだった。




戻ってきて答案を渡すとジェシカは練習場に案内した。


ここでは冒険者が自分のスキルや魔法を確認するための広めの運動場であった。


大型新人?と目されるアサミの試験を野次馬しに 結構な冒険者が練習場にきていた。




「ではアサミさんの戦闘試験を始めます。アサミさんはテイマーなのでペットと一緒に戦って合格です。   


戦士タイプ 魔法使いタイプの2人の試験官に認められたら合格となります。


普通の人は合格時最低のEランクからのスタートですが 戦闘試験がいい結果でしたら飛び級もあり得ますので頑張ってくださいね。


では 試験官の戦士職 アベルさんCランクです。魔法職のエドガーさんCランクです。」




「よろしくな。嬢ちゃん!俺にいいところを見せて見ろ!」


「よろしく。お嬢さん 胸を借りるつもりで頑張ってくれたまえよ。」




と 爽やか熱血のアベルさんとなんか気高き俺みたいなチャラチャラしたエドガーさんに挨拶をされた。(エドガーさん イラっとくるタイプだ。さっさと潰そう。)


『ばあちゃんも応援がんばるよ!』


「あの この子魔法使うんですけど使用してもいいですか?」


きゅうーっと鳴きながらタマが存在をアピール!うん かわいい!




「もちろんだ!テイマーなんだろう?ペットの力も使っての勝負がテイマーの神髄だ。」


「では始めてください!」




「行くぜ嬢ちゃん 悪く思うなよ!」


と開幕早々 アベルさんが突っ込む。獲物は練習用の刃の潰れたロングソード。


「獲った!」とアサミの近くまで近づくと


『アサちゃん 危ないっ!』


とばあちゃんの声がしたと思ったら 


アサミの胸に目掛けて剣が伸びてきた。




その時










ガキッン っとアサミに当たる前に剣が何かに阻まれて何度切り付けてもアサミの前で止まってしまう。


そうこうしてる間にタマの水魔法がアベルの体を軽く2.3m吹っ飛ばす。


アサミはアサミで【影縛り】を使用 アベルの足は完全に動きを止めてしまった。


「ぷっへぇ。なんだこりゃ 魔法かぁ 足が動かんっ」




「タマ止めだよ!雷魔法!」


『お姉ちゃん やっていいの?なんか痛がってるけど・・・』


「タマの力を見せてやるんだっ!(あ 弱めにね・・ あの人死んじゃう・・。)」


『ぬぅー じゃぁ 【サンダー】(微)』




タマの魔法でアベルはびりっと痺れた。水魔法で体が濡れていたのが悪かったのだろう。




「ぐあっ・・ くっ・・ 降参だっ!ナイスファイトだったぜ!」


と 試合終了した。




観客も呆気にとられた試合終了で


「へぇ やるじゃん。」


「光るモノがあるな。」


「かわいくて強い。うちのパーティーで絶対にほしい人材ね。」


「えげつない戦い方だな。なんだよあの攻撃がガキンって止まるやつ!」


「ペットちゃんも相当の魔法だぞ。」


「美しい試合だった。」


「オイ!アベル 新人に負けんなよ!」


とあっちこっちから賞賛の声が出ていた。




アベルとガッチリ握手をし、また練習しようと約束をした。


「なぁ 嬢ちゃん 秘密を聞くようで悪いんだがあの ガキンって攻撃止まったのなんだ?」


(あれ 私にもわかんないんだよね・・。あれ何・・・? ステータスにもそんなのなかった気がするし)


『アサちゃん あればあちゃんの能力みたい。ほら ばあちゃん 自分でも忘れてたけど守護霊だから!守護霊の能力 中級物理攻撃 魔法無効が発動したみたいだねぇ。バリアだねバリア!』


(ちょ ばあちゃん 何その無敵スキル!私よりいいじゃん!)


『でもねぇ これはアサちゃん専用なんだよねぇ タマにはつかないみたいだぁ』


(ああ そういうアレなんだね。次の人なんか可哀そうだなぁ・・)


『おばあちゃんすごーいっ タマもがんばったよぉー!』


「私のパッシブスキル 物理無効が発生したみたいですっ!」


「マジかよ!ははっ!すげぇいいスキルだっ!」


と笑いながらジェシカの隣に移動した。 うん 爽やかで好感が持てる人だとアサミはアベルの事を見送った。




「次はボクの番だね 華麗なる魔法の旋律を」


と エドガーさんが第2試合の開始前にかっこつけていた


応援の観客達もエドガーの声にキャーキャーと声を上げていた。彼のファンなのだろう。




(顔はいいらしい。タイプじゃないけど。なんかチャラチャラしてキザっぽいし! うわっ ウィンクした・・ どーも好きになれないなぁ・・)




ジェシカさんの試合開始の合図で第2戦が始まった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る