第58話 四人の考え
「……それで、ヘレンスはどうするつもりなんですか? 思い切り啖呵を切ってましたけど、本当にそのまま戦うつもりで?」
黒コートの男、アルベルトが去った後の空間に、フィリネの声が響く。その言葉に、ヘレンスはニカッと笑いながら答えた。
「ダメか? 俺としては楽しそうだしいいと思ったんだが」
「いや、ダメでしょぉ……アタシとしてはこれ以上人が多くなるのも連携取りづらくなるし嫌だなぁ。それに、今は捕らえられてる勇者も含めたら六人目だよぉ? さすがに多くない?」
アイシャの言うことに、フィリネも納得する。フィリネとしては連携の主導になることが多いのであまり気にしていなかったが、他の仲間の動きに合わせることが多いアイシャの立場からすれば、一人増えることによる連携難易度の上昇は比にならないだろう。
それを受けて悩んでいると、今度はずっと黙っていたジュークが口を開いた。
「儂としては、正直どっちでもいいかな。あるとするならアルベルトが魔法を使えそうでかつ回復魔法が使えそうならそれがいいかな……という感じかな」
それは確かにそうだ。今のフィリネたちのパーティでは、一度大怪我を負ってしまうと、それを回復するためにかなりの時間を費やすことになる。それを回復できる人材となればかなり貴重だ。
「それはそうだけど……でもあたしは嫌だよぉ……?」
「そうかぁ……? 俺はいいと思うけどな。仲間が増えるってことはそれだけ取れる作戦の幅も増えるってことだしよ」
やいのやいのと話し合う二人を横目に、フィリネとジュークは建設的に話し合う。
「わたくしとしてはどちらかというとフィリネの意見に賛成ではありますが……ジュークとしてはヘレンスに賛成ですか?」
「そうだね……ただ、結局は実力次第だとは思うよ。実力がないのに回復魔法があるからと仲間に入れても、いい活躍は見込めないからね」
「――そうですね。そうなると結局は、大会当日まで待つしか……」
ここで二人は、横で未だに言い合いをしているヘレンスとアイシャを見る。
「別に増えたっていいだろ? 互いにすり合わせをして連携すればいいじゃねぇかよ!」
「だーかーらぁ、それが手間だし、そこまで信じ切っていいような相手かどうかも分からないでしょぉ?!」
ここまで争い合っていると、今ジュークやフィリネが考えを示したところで、どちらも聞く耳を持たないだろう。
「こういうところを見ると、先ほどの男性の方が話を聞いてくれそうだと思いますね……」
「そこに関しては同意するよ……」
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