第52話 王城での躊躇い
「これは……流石になにかあったんじゃないかい?」
「でも……フィリネは帰るまでゆっくりしていてくれって言ってたよぉ……?」
「それにしたって、二時間も帰ってこねぇんだぞ……? 心配しないほうがおかしいだろ……!」
案内された談話室で声を荒らげる三人。最初の一時間程度は特に気にもせず待っていたが、そこから更に三十分、一時間と経っていくにつれてだんだんと気が立っていった。
三人の中でもどうすべきかの結論が出ないまま、時間の経過に比例して心配が募る。
「――フィリネに待てって言われてるんだし、今は待つべきじゃないのぉ?」
「でも、もう二時間……いや、二時間半だぞ?! 絶対に何かあったとしか考えられないだろ?!」
「焦る気持ちはわかるが、だからといって直接乗り込むのは違うんじゃないかい?」
何とかたしなめようとするジューク。だが、ヘレンスの怒りはそれでは収まりそうになかった。
「だからって、心配な仲間を放っておけってのかよ!?」
「そうは言っていないよ。直接乗り込むなってだけさ」
そう言うとジュークはにやりと笑う。
理解が追い付かない二人をよそに、ジュークは一人部屋を出ていくのだった。
◇◇◇
十数分後、三人は王とフィリネがいる部屋の前へとたどり着いていた。
「「ジューク……?」」
疑わし気な目線で見る二人にも、ジュークはどこ吹く風といった様子で部屋へのドアに手をかける。
「ちょちょちょっと!? 乗り込むのはよくないって話じゃなかったのぉ?!」
「あれだけ言っておいて普通に乗り込むのかよ!」
「違うよ? きちんと執事さんから許可は取ってあるから、正々堂々正面から乗り込むんだよ」
自信満々に言うジュークに、二人の顔はやや呆れている。
「じゃあ、行こうか」
ジュークが言ってドアノブに手をかける。
――――その瞬間、ドアが反対方向から引かれ、ジュークが前につんのめって倒れる。
「皆さん、お揃いでどうかされたんですか……?」
聞き覚えのある仲間の声がして、三人が顔を上げる。
その先には、見覚えのある仲間……フィリネの姿があった。
「フィリネ、無事だったんだねぇ……」
「何かあったかと思ったぞ……」
「えっと……なぜそんなに安堵してるんですか?」
特に変わった様子はなくいつもと変わらないフィリネに、心の底からほっとする三人。弛緩した空気にあてられてか、フィリネからもうっすらと笑いがこぼれる。
「――――では依頼も終わりましたし……みんなでご飯でも行きましょうか?」
フィリネが無事だったことに安堵した三人は、そのまま城を出るのだった
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