第51話 王城への帰還
フィリネが仲間のもとに合流してから数日後、一行は依頼を出した国王のもとへと向かっていた。
「やっぱりこれは馬車を出してもらうべきでしたかねぇ……」
そう愚痴をこぼすフィリネに、アイシャとヘレンスが賛同する。
「そうだよねぇ。向こうから依頼しておいて、この待遇なのはよくないと思うなぁ」
「――というか、フィリネの風の魔法で移動できないのか? こう、ぴゅーっと」
「わたくしを殺すおつもりですか……? そういう意味なら喜んでヘレンスだけスカイダイビングをやらせてあげますが」
「ごめんフィリネ。調子に乗ったわ」
「分かってくれればいいのですよ。みんなしんどいのは同じです」
さすがのフィリネでも、この状況で魔法を使えと言われて怒らない自信がなかった。
とはいえ、もうすぐ砂漠地帯を抜けて街へと入る。そこまで来れば、気力も少しは回復するだろう。そう思い直して、体力の取られる砂場を歩く。
前方では先ほどの二人がジュークに怒られている。どうやら先ほどのフィリネに対しての態度を改めさせられているようだ。
「普段ならまだしも、人がつかれている状況であんな冗談を言う者じゃないよ、ヘレンス」
「分かったよ……」
「アイシャも、止めてあげなよ? フィリネも疲れてるんだから」
「分かってるけどさぁ……ジュークも止めなかったよねぇ?」
痛いところを突かれて黙るジューク。そのたじろぎに合わせて、フィリネもジュークをいじる。
「そうですよ……わたくしがつらい思いをしている中、ジュークはただ見ていただけだなんて、ジュークとはそんなひどい人間だったのですか……?」
「フィリネ……そういう悪ノリが過ぎるところも、君の良くないところだよ……?」
岩をも砕く拳を構えながら、ジュークが疲れたような笑顔で言う。
フィリネは体の奥底から湧き上がる嫌な予感に身体を震わせる。三人は町に着くまでの道を、ジュークのお説教と共に歩いたのだった。
◇◇◇
――王城にて。フィリネが以来の結果報告をしている間、三人は談話室でお茶を楽しんでいた。ふかふかの椅子に甘いお菓子、それらをじっくりと堪能し、友と語らえる時間。これらすべてが揃っておきながら、三人の顔は浮かないものだった。
「なぁ……」
「うん……」
「気になるよねぇ……」
「「「フィリネはいつになったら戻ってくる?」」」
――――王城に到着し、フィリネと別れてから二時間。依頼結果を報告しに行ったきり、フィリネは顔を見せていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます