第50話 討伐後の道中
ドラゴンを討伐してから数日後、フィリネ達は依頼人である国王の元へ、歩みを進めていた。
「しっかし、砂漠は暑いし歩きにくいしで、ホントにどうしようもねぇよな……」
「とはいえ、仕方ありません。ここを渡らないと王城には行けませんし」
砂漠の熱にやられかけるヘレンスに、フィリネが諭すように声をかける。
「アタシもあんまり歩きたくはないねぇ……。国を脅かすドラゴンを倒したわけだし、迎えの馬車くらい出してくれてもいいよねぇ?」
「まぁまぁ、向こうもそんな余裕がないんだろうさ。儂としては、いい修行になるから問題ないけどね」
そう言って笑うジュークに、他の三人は苦笑いするしかない。
──とはいえ、全員死にかけた後なのでそこまでの余裕もない。回復はしたとはいえ、休み休み行かなければ暑さと相まって倒れてしまいそうだ。
「ここで一旦休みましょうか……。あまり無理して移動しても、疲れてしまいますしね」
「そうだねぇ。アタシもそろそろ疲れてきちゃったしぃ」
手持ちの薪に火を起こし、砂を均してから近くに座り込む。
「いやぁ、ついにドラゴンまでも倒しちゃったけど、俺達も少しは強くなれたのかな」
「そうかもしれませんね。でも、まだまだ安心することはできませんよ」
「というか、ヘレンスは一対一でアタシに勝つことから始めなよぉ? 未だアタシはヘレンスに負けた記憶ないんだけどぉ」
「うるせぇ! そもそも魔法と弓じゃ射程が違うし、互いの欠点を補いあっていくのがパーティだろうがよ!」
「よくそんなこっ恥ずかしいこと言えるねぇ……。アタシも思ったりはするけど、口に出して言おうとは思わないねぇ……」
フィリネも少し微笑みながら、食材に火を通して小腹を満たす。
「でも、ちゃんとチームの意識を持つのは大事だと思うね。そこに関しては、ヘレンスに同意するよ」
そう言い出したのはジューク。彼も肉を片手に火を通しながら、口を開いている。
「だろ?! やっぱりジュークはよく分かってるよ!」
「チーム意識を高めるためにも、全員で何かしてみないかい?」
「そうですね……あまり全員でなにかするということもありませんでしたし……」
「いいと思うよぉ? アタシも皆で何かしたりしてみたいからねぇ」
「俺も、皆で武器とか見てみてぇな!」
それぞれが思い思いに考える休みに、思わず笑ってしまうフィリネ。
「フィリネ、どうしたの? なんか笑ってるけど」
「──いえ、なんだか……平和だなぁ、と感じたので」
ふと感じた平和に、つかの間の癒やしを感じるフィリネ。
さすがに王からも、連続して依頼を受けることはないだろう。それならば少し、仲間と国内を歩くのもありかもしれない。
そんな休みに思いを馳せながら、フィリネ達は少しの食事を楽しむのだった。
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