第42話 あと一手
「これで、終わりにしましょう!」
そのフィリネの言葉通り、四人でドラゴンに攻撃を仕掛けようとする。が──。
「これ……どうやって攻撃するんだい?」
一番最初に疑問を呈したのはジュークだった。
「どうやって……と言いますと?」
なんのことか分からないと言わんばかりに疑問を返すフィリネ。他の二人もなんのことやらといった様子だ。
「アイシャは魔法攻撃があるし、フィリネは風を飛ばして攻撃できる。へレンスはアーチャーだから、遠距離攻撃なんてお手の物だろう?」
「そうですね。──それが?」
「儂だけ遠距離攻撃がないんだが……どうすればいいと思う?」
……なんだか、ずっこけそうになった。いや、ジュークの攻撃力を失ってしまうと考えれば、大事なことではあるのだけれど。
数瞬の間悩んでいると、場の思考を吹き飛ばすような一声が響いた。
「大丈夫だよぉ。フィリネがジュークに風を纏わせて、その上からアタシが炎で更に
フィリネとジュークは、その案にほほうと唸る。へレンスは何も分かっていないようだったが、それでもかっこつけてか同じように唸っていた。
「──なるほど、つまりわたくしとアイシャで防護を張れ、ということですね」
「…………だいぶ簡略化されたのが嫌だけど、そういうことだよぉ」
本当に嫌そうな顔をしてから、ジュークにかける魔法の準備を始める。
フィリネも慌てて、ジュークに風を纏わせる用意をする。
「……フィリネ、先にお願い。じゃないとアタシの炎でジュークが燃えちゃうからねぇ?」
「分かりました。──風よ、彼の者を鎧いて、その身を守る防護となれ!」
その声が響き終えたとき、ジュークの体を中心として風が渦巻き始める。
「わっ──」
初めての感覚に戸惑ってか、ジュークが声を上げた。
時々握りこぶしを作ったり、ステップを踏んだりして動きの感覚を確かめている。
「これはなんというか……すごいね。風が儂の意志を察して、自在に変化しながら手助けしてくれる感じがする」
「そうですか……? それは嬉しいですね……」
実際ジュークに付与した魔法は、普段フィリネにかけているものと同質の魔法である。
対象者がフィリネ自身でないため、最大の効果は発揮できないが……それでも、普段のジュークの動きを十二分にサポートできるもののはずだ。
「じゃあ、次はアタシだねぇ……。よっこらしょ──っと!」
アイシャがそう言うと、すぐに先程の風の上を炎が包み込む。こちらは耐熱に特化したものだ。
「激しい戦闘のときにかけるほどの余裕はないけど、これくらいならサクッとできるからねぇ。これでジュークも戦えるだろう?」
アイシャとフィリネでは魔法を使うプロセスが異なるため、どうしても性能に得意不得意が出る。
手早く、また高性能に他者を支援できるアイシャを時々羨ましいとも思うが、フィリネの使う魔法は形状の変更がかなり容易なので、幅広く使うことができる。明確な強みがあるだけまだマシだ。
「それでは改めて、行きましょう!」
各々が自身の考えに則って散開し、各自組み立てた攻撃によってドラゴンを死へと追い込む。
ある者は炎でドラゴンの身を焦がし、ある者は放つ弓矢で、傷ついた鱗から身体を抉るように攻撃する。
またある者は岩をも砕く拳で殴りつけ、残る者は風でドラゴンの全身を切り刻むことで、攻撃の威力を相対的に上げる。
最初は熱風牢獄に抗い、各自の攻撃にも抵抗を示していたドラゴンだが──。
今その体は、ほとんど動かなくなっていた。
しかしなおも生き続け、炎を伴う荒い呼吸を繰り返している。四人が持てる力の最大限を使って攻撃しているというのにこのタフネスだ。さすが神話に謳われる生物、と素直に褒めるほかあるまい。
「ハァ……ハァ……削れてはいるけど、あと一押しが足りないねぇ……!」
「まさかここまで耐えられるとはなぁ!」
「儂らの気力もそろそろ限界だよ……!」
攻撃する側も、いつ熱風牢獄が破られるか分からない中での攻撃である。ただでさえドラゴンの攻撃を食らっているのだから満身創痍であるのに、なんとか持たせている気力もそろそろ限界だった。
「仕方ありませんね……。これ以上長引かせたくはありません。限界突破で一気にケリをつけますので──お手伝いください!」
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