第34話 作戦会議

 夜。四人が食事を終え、もうそろそろ眠りにつこうかというころ。

 フィリネとジューク、そしてアイシャは、三人だけでドラゴンへの対策会議を続けていた。

 ヘレンスは疲れもあってかすでに床についており、それを気遣ってか三人の声も自然と小さいものになっていた。


「それで……本当に対抗案はないのですか? せめてもう少し子細な情報がなければ、案を出すこともできないのですが……」


「そうだねぇ。アタシたちが持ってる情報なんて鱗が固すぎて攻撃が通らない、ってだけだしぃ……ジュークが何も持ってないなら、いったんはお手上げかなぁ?」


「――――通じないかもしれない、って前提を付け加えてもいいなら。それならあるかもしれない」


 神妙な面持ちで言うジュークに、二人は思わず目を丸くした。


「そんな案があるなら、なぜもっと早く言わないのですか?!」


「いや、それはだね……」


「――ホント。そんなんだからジュークはねぇ……」


「フィリネはまだしも……アイシャ? いったん黙ろうか?」


 その圧におびえてか、ふざけていたアイシャが大人しくなる。

 ヘレンスは、ゴホン! と咳ばらいをして話を続けた。


「儂たちが戦ったドラゴンなんだが――ヘレンスの弓の攻撃が、奴に通じたんだ」


「そうなのですか? いったいどんなカラクリで……」


 ヘレンスも鱗にダメージを与えることは出来ていなかったはずだ。それがなぜいきなり攻撃が通るようになったのか。フィリネは少なからず疑問に感じる。


「これの答えは簡単だ。ヘレンスの攻撃が、ドラゴンの目に直撃したからだよ」


「なるほどぉ。それなら確かに、鱗よりはダメージは通りそうだねぇ。……その分、狙いはすっごく精密につけなきゃだけどぉ」


 アイシャの一言に、ほかの二人は同意を示すようにうなずく。

 もしヘレンスが起きていれば、この場でヘレンスの自慢話に話が切り替わっていたことだろう。


「そうだね。それで儂が提案したい作戦は――」


 注目がジュークに集まり、鼓動が否応なく早まる。

 ジュークは自身の感情を落ち着けるように一息吐いた後、次の言葉を発した。


「鱗のない個所を全員で狙う、だ」


「…………というと?」


「儂の見た限りの推測だけど――あのドラゴンの鱗の防御も、目、首、手、尻尾の裏面には行き届いていなかった。多分鱗が固すぎて、動きを妨げてしまうからだろう」


「つまりは――そこを狙えば、今までよりもダメージを与えられる可能性がある……ってことですか?」


「そういうことになるなぁ。だが、保証はできないけどな」


 すると、しばらく黙っていたアイシャがここで口を開いた。


「いくら不確定とはいえ……ジュークは何でそれを今まで話さなかったのぉ?」


「正直……改めて対峙して、余計に不安になったんだよ。こんなに強い相手を、儂たちは本当に倒せるのか、って」


 自分の気持ちを吐露していくジュークだが、その顔はないように反して明るい。どうやら彼の中で、もう決まったことがあるらしい。


「――それで今日一日、ヘレンスのことを重点的に観察して――もちろんフィリネやアイシャもだけど――ああ、こいつらなら任せても安心だなぁ……って。そんな答えがつい今さっき出たばかりなんだ」


 そういわれると、言い返せないことも多い。自分たちの力が足りていないのは、フィリネとしてもよくよく感じていることだ。

 だが――。


「そんなに頼ってくれるのなら……わたくしたちとしても、きっちり働かなくてはなりませんね?」


 なぜかはわからないが頼もしさを感じるその笑顔で、フィリネはそう宣うのだった。

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