第25話 王城にて
夕方頃に村を出たフィリネたちは、その日の夜が更けた頃にようやく王城へと辿り着いた。
「フゥ──ようやく着きましたね……」
「来られたしって書いてあったはいいけど、まさか今日中とはね……」
そう、フィリネたちのもとに届いた手紙には『国王様は多忙のため、今日中に来城するように』との旨が記されていたのである。
これにはさすがの四人も面食らって、慌ててこの城まではせ参じたという次第だ。
「──それにしても、でかいお城だよなぁ。こんなに大きな城があるならお金のない人たちに住まわせてあげればいいのに」
一人だけケロッとしているヘレンスがそうぼやくと、対照的に疲れ切った顔をしているアイシャがそれに答えた。
「ハァ……ハァ……。そんなことするわけないでしょ……。アタシも会ったことはないけど、なかなかの暴政を敷いてるって噂は知ってるしねぇ」
国王目線からすれば愛車の言う通りなのだろうが、ヘレンスがそう言いだすのも無理はなかった。
この王国の始まりの町『トスタ』にあるこの王城は、国王やその家族、衛兵や料理人など総勢百人以上の使用人をすべて泊めたとしてもなお部屋が余りそうなほどの大きさだ。しかも、エントランスホールや舞踏用の広間など大きな部屋もあるのだから国民を止めるには事欠かないだろう。
なぜそうしないのかと問われれば、フィリネにはあずかり知らぬことではあるが。
「それはそれとして、わたくしたちの目的は国王と話をすることですよね? この話は、その時にでも聞いてみるとして──今は行きましょう。」
「アタシもう動きたくない……。どこでもいいから横になりたい……」
「アイシャはもう少しだけ待っていてくれ。そうしたら儂が休む場所を聞いてこよう」
そうして四人が歩き出すと、衛兵に一度止められる。
「用件のない方はお通しできませんが……」
「すみません、これを」
手紙を差し出すと、衛兵はすぐに姿勢を正してこちらに礼をした。
「失礼しました! ごゆっくりどうぞ!」
たった手紙一つでころころと態度を変えなければならないのだから、衛兵というものは難しい職業だと思う。少なくともジューク以外の三人にはできなさそうだ、とフィリネは思った。
「お邪魔するぜ~」
「友達の家じゃないんだからアンタ……」
ヘレンスが入った先、広く、豪奢なシャンデリアが設えられたエントランスホールには、一人の老紳士が立っていた。老紳士は薄目でこちらを見ると、静かに歩み寄ってくる。
「こんばんは。勇者──コホン、今はフィリネ様御一行……でよろしいですかな?」
「はい。今宵はお招きいただきありがとうございます。」
「ご足労おかけして失礼いたしました。わたくし、執事のトリスと申します。以後お見知りおきを。──早速ですが、国王様がお待ちです。わたくしに付いて来てください」
そうして老紳士──トリスが前を歩きだすと、後ろからヘレンスが話しかけてくる。
「なぁなぁ、ちょっと質問あるんだが……いいか?」
「普通この状況で質問なんてしますかね……? まぁいいですけども」
「あの爺さん、なんでフィリネがリーダーってわかったんだ? 最初勇者って言い間違えたのに、そのあとすぐにフィリネがリーダーだと気づくなんておかしくないか?」
「ああ、それは──」
「着きました。国王様はこの扉の奥でお待ちになられています」
「……どうも、それでは開けさせていただきますね」
一目で国のお偉いさんがいるとわかる、金が全面に施された重い扉を開けると、少し離れた椅子の浅木で、国王が座っているのが見えた。
国王──ジョン・エリムス二世は、ワイングラスを片手に、こちらを悠然と眺めていた。
「久しいなフィリネ殿。それ以外の方々は……初めましてか。我がクシュウ王国の国王、ジョン・エリムス二世だ」
「初めまして国王様。いきなりで申し訳ありませんが、フィリネと久しいとはどういったことで……?」
「──? フィリネはまだ勇者が存命であったころから仲間として旅をしていた。そして我も勇者との話のときに一度顔を合わせたことがある。それだけのことだが?」
「──今が存命でないとは限りませんが……話を戻してもよろしいでしょうか。本日はなぜわたくしたちをお招きに?」
フィリネが少し険のある視線で問うと、国王は何かを思い出したように手を打ち鳴らした。
「そうだそうだ、今日は頼みごとがあってな。トゥリュングスに襲われた村を救った貴殿らに、ここからしばらく東に行ったところに生息する──ドラゴンを倒してほしい」
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