第11話スリッパ

玄関から出ると私の部屋の前にスリッパが置かれていた。


置かれていたのは右足のスリッパ一つ。


「なんだこれ...」


私はスリッパを廊下の隅に投げ捨てた。


次の日、玄関から出るとまたスリッパが。


今度は右足のスリッパが二つ。


「おいおい!イタズラかよ!」


私はまたスリッパを廊下の隅に投げ捨てた。


昨日のスリッパもまだそこにあり、三つのスリッパが廊下に転がる。


私の住むアパートは古いこともあり、掃除が行き届いていない。


辺りには落ち葉や虫の死骸がチラホラ。


「このままじゃずっとスリッパが置かれてるな...とりあえずイタズラしてるやつを探さないと!」


私はそう心に決めて会社に向かった。


次の日の休日。


私は玄関で注意深く見張っていた。


スマホをいじりながら、廊下の様子をうかがう。


まだ置かれていない。


いつ来るか分からないスリッパを置く犯人との戦い。


「今日は来ないか...」


スマホをいじる。


カッカッカッ。


足音が聞こえてくる。


私はドアスコープを覗きこむ。


廊下には茶髪の髪の長い女が立っていた。


マスクをして、黒のロングコートを着ている。


手には大きなバックを持っていた。


「コイツが犯人だ!」


私は玄関から飛び出る。


「おい!テメェ何やってるんだ!」


女と必死に揉み合う。


「誰か警察呼んでくれ!!」


私は必死に叫ぶ。


「あーーー!」


女が絶叫する。


どちらが犯人か分からない状況だ。


とにかく女を逃がさないように必死に掴む。


そのうちパトカーのサイレンが。


誰か警察に通報してくれたらしい。


警察二人が急いでこちらに走ってきた。


「コイツ不審者なんです!!」


私は必死に叫ぶ。


女も相変わらず、あー!と叫んでいる。


とりあえず私と女は二人とも警察に取り押さえられた。


私は必死に説明し説得した。


決めてになったのは女が持っていたバックの中に、大量の右足のスリッパが入っていたことだ。


後日、警察から私に連絡が来た。


警察の話によると、女は私の向かいのアパートに住む人物。


私のドアの開け閉めがうるさいことに腹を立てて、呪い殺そうとしたらしい。


女は窓を日常的に開けているらしく、アパート同士の距離も近いため、音が気になったようだ。


「スリッパで出来る呪いってなんだよ...」


そんなふうに思ったが怖いのは女が目の前のアパートに住んでいることだ。


どうやら女は警察に注意されただけで、家に帰らされたようだ。


私は怖い。


女がずっと窓から私の様子を伺っているようで...







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