第6話ギターを飼い慣らす女

家でゆっくりしていると、ギィー ギィー。


ギターの音が聞こえてきた。


あの女だ。


私の町では、ギター女が出没していた。


歳は40代くらいだろうか。


長いパサパサとした髪。洋服は上下とも青のスウェットといった格好だ。


特徴的なのは、ギターに縄を結んで引きずっていること。


引きずるたびに、ギターがギィーギィーと音を鳴らす。


危害を加えてくる訳ではないが、その見た目の異様さから恐れられていた。


警察に通報すると不思議なことに、その場からすぐにいなくなってしまう。


今日も誰かを驚かしてるんだろう。


そんなふうに思ってた。


ピンポーン。


チャイムが鳴った。


インターフォンを見る。


ギター女だった。


他人事だと思っていた恐怖がすぐそこに迫っていた。


ピンポーン。


2度目のチャイム。


ギーギー。


玄関前で引きずっているであろうギターの音。


「警察に連絡しなくちゃ...!」


スマホで110番を押そうとしたとき、ギター女がいなくなっていた。


恐る恐る玄関にでて、外を確認する。


いない。


家の中に入ろうとした時、私は声が出なかった。


私の家、2階のベランダ。


ベランダにギターがある。


ギターから垂れた縄。


その縄に首を括ってギター女が死んでいた。


あの一瞬で何があったのか分からない。


何故私の家で首を括ったのかも。


ギター女の目が静かに私を見つめていた。














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