第44話 思ってたのと違うお買い物・・・

 結局その日の夕食はそのまま俺が作ることになった。まぁ『グラタンモドキ』の量産をしただけなんだけどね?


 そう、ここの家には主食である『パン』があるのだから!


 食ったら唇が削りとられそうなほど固いバゲットみたいなパンだけどさ。表面がちょっとしたヤスリである。




 てか参加人数多すぎじゃね?


 まず子爵様ご本人とその奥様が二人、そして子爵様のお父さんとお母さんが三人、息子さんが三人とその奥さんが四人とお子さんが五人、カロリーヌ嬢含めてお嬢さんが三人。


 そこにナターリエ嬢とそのご両親にお兄さんの四人も追加された上で俺とリアちゃんである。




 ここで問題です、スフィンクス的な考えかた(朝四本、昼二本、夜三本とかいう例のアレ)も交えてここにいる人全員の足の数は何本でしょうか?


 どうして飯時にそんなクソ面倒くさい計算をしようと思った俺。


 まぁあれだ、一、二、三、たくさん!の人数分『ほぼグラタン』を用意したわけだ。


 てかさ、子爵様本人とそのお父上、ナターリエ嬢のパパ以外のほぼ全員がゴツいから非常に暑苦しいんだけど・・・。


 真夏のボディビル大会の会場で飯食ってる気分。


 腕を組む姿がどうみてもサイドチェストなお母さんとか意味がわからないです。




 奥さん&息子さんの奥さんに留まらずナターリエ嬢のお母さんまで全員がそんなメンバーとかおかしくない?街に出てみてわかったけどここまで恵体の人いなかったよ?


 ああ、ナターリエ嬢のお母様は子爵さんの妹さんなんですね?


 そんな中で一人だけ、そう、一人だけちっさ可愛い十歳くらいの女の子がいたんだよ。何なの?子爵家の奇跡なの?


 完全に北欧系の美少女、その子がどうしてだか俺の膝の上にちょこんと座って上目遣いでむっちゃ見てくるんだけど?




「カロリーヌ様、ちょっと血迷いそうなので早急に妹さんを引き取って頂きたいんですけど?」


「何を言ってるんだ?レオンハルトは妹ではなく弟だぞ?」




 ちょっと何を言ってるのかわからないです・・・。




 食事会?ああ、全員美味しそうに食べてたけどそんなことより男の子が男の娘だった事が衝撃的過ぎて会話の内容とかほとんど覚えてねぇわ。


 ああ、ナターリエ嬢のお父上が娘がやっと嫁ぐとやたらと上機嫌だったけどただの勘違いだと伝えたら「そうか・・・」といったきり背中を煤けさせてお酒を飲みだしたのでつまみに焼きチーズを出してやった。




 フレッシュチーズのバター焼きっていつまででも食べてられる旨さだと思うんだ。


 それを見た子爵様の目の色が変わったんだけどチーズはもうそれで終了なんです。


 お屋敷にあった牛乳は全部使い切ったから追加で作るのも無理だから諦めてもらいたい。


 あとチーズ担当大臣とか言う訳のわからない職務に着任もしないので諦めていただきたい。




 ちなみにその日にお泊りしたお部屋なんだけど・・・リアちゃんと同室となっていた。


 もちろんベッドは別々なんだけどね?(年齢的には)女子高生と同室、何も起こらないはずも・・・いや、枕元に鉈を置いてる女の子に何もするわけないじゃないですか?そもそもリアちゃんは娘みたいなものだし?


 部屋に案内された時にリアちゃんが嫌そうな顔してないか表情を伺ったんだけどとくに拒絶反応は示してはいなかったことだけが救いか。




 まぁここにくるまでの旅の途中もほぼ真横で寝てたしこれといって何とも思っていないとは思うんだけどね?


 娘みたいなものだとはいってもあくまでも『みたいな』なので向こうから求められればやぶさかではないのだが・・・絶対に無さそうな未来を考えるのは虚しいので止めておこう。




 あとお風呂はなかったのでお湯で体を拭いただけ。リアちゃんの背中を拭く?普通に部屋を追い出されてましたが何か?


 一応ご家族用のサウナがあるらしいけどまったく使いたいと思わなかった。


 そしてほとんど色気のない下着であろうとも下着姿の娘さんと言うのはとてもいいものだと思いました!






 てことで何もなく翌日。貴族様のお屋敷とはいえ、ベッドの固さも寝具もリアちゃんのおうちとそれほど変わることもなく至って普段どおりの目覚め。


 もちろん野営するよりは快適なんだけどね?早くお布団が欲しい・・・。


 今日は朝からガッツリと街の探索とお買い物を楽しむぞっ!と思ってたんだけどあいにくの小雨模様・・・。


 ちょっとくらい濡れるのはいいんだけど道がさ、舗装とかしてないから膝から下がドロドロになっちゃうんだよなぁ。




 ざわざわとした雰囲気の朝市!みたいな露店で買い物的な感じを想像してたんだけど雨だと普通に店が出てないと言う。仕方ないので大きめの雑貨屋みたいな店を何件かハシゴして必要なものを買い揃えてゆく。


 手持ち?フフッ、買い物が済んだら子爵様にフレッシュチーズの作り方を教えるってことで先払いとして金貨で10枚分貰ってきた!・・・金貨十枚の価値はまったく不明なんだけどね?


 ちなみに金貨1枚がだいたい銀貨30枚、銀貨1枚がだいたい銅貨100枚になるらしい。




 どうして『らしい』なんて曖昧なのかと言えば地域やタイミングで交換比率がかわるから。


 めんどくせぇな異世界!国内流通してる貨幣くらいは固定相場にしてくれよ!と、思わないでもないけど江戸時代だって似たようなものだったんだから文句は言うまい。


 そしてそのへんで金貨で買い物なんて出来ないから先に両替は必須!なんだけど銀貨も銅貨も混ぜてもらってるのでとくに問題はないだろう。




 まぁ買い物って言っても大工道具とか工具とか農具、そして収穫までの食材が必要なくらいで他のモノは栽培&現地調達なんだけどね?木材や石材は(切り出せば)豊富にあるらしいし。


 道具類はリアちゃん家から全部持ち出してきてるんだけどね?基本使えば壊れるものだからさ。


 自分で手入れ、生産が出来るまでは余裕を持っておかないと往復一週間ほどかかって街まで買い物にこないとならなくなるのだ。鉄製品は溶かしてリサイクルも可能だし。




 でも鉄製品って買うとたっかいんだよなぁ・・・。金槌一本銀貨二枚とかなんだもん。鋸なんて銀貨十枚もするし、斧に至っては一振り金貨一枚なり。釘ですら一本銅貨三枚だからな?


 そしてこちらもお高いのが衣料品。


 下着、たぶん古着で貫頭衣の長めのシャツが一枚で銀貨十枚。パンツは少しお安めで銀貨三枚。


 服に至っては安くても金貨一枚くらいするしさ。




 ・・・これ、ちまちま食料を売りに来るより一面を綿花畑にして衣料品を売るほうが楽に儲けられそうだな。


 もちろん何かを売るときはご領主様に卸してそれを御用商人にさばいてもらう。子爵様、農協扱いである。


 自分で商人と交渉とか面倒な上に足元見られるからね?


 利益を商人に吸われるくらいなら領主に吸われておく方があとあと融通がきく・・・はず。


 昨日一日観察してみたけどそれほど悪い人間ではなさそうだったからね?


 もちろん信用しすぎるのはよくないのはわかっているので距離はとるつもりである。

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