第41話 私にはもう心に決めた相手がおりますので

『石碑から来ました!』とか言う『消防署の方から来ましたと言いながら消化器を売り捌く詐欺師』レベルに信用出来ない話のはずなのにクレオパトラさんという先例があったこと、そしてこの世界には魔法があり色々な場所に『使い道の無い(わからない)古代の遺跡』が存在していて迷宮からは『古代の遺物』まで持ち出されているらしく『ちょっと疑わしいけど有り得ないことではない』と判断されたみたいで俺の出自の話は終わってやっと治療報酬の話となる。


 うん、報酬の話になったんだけど・・・わりとフレンドリーな感じの表情をしていた子爵様の顔がいきなり無表情になった。


「それで、治療の見返りに『娘が欲しい』とのことだが」

「その様な事はまったく申しておりませんが!?」


 いや、いきなり何の話なんだソレは!?


「ほう、別に白を切らずとも良いのだぞ?確かに私の娘はこの街一番と言って良い器量よし、その身体を見、そしてその肌に触れたとなれば是非とも我が妻にと願うお前の気持ちもわからずともないからな」

「ご領主様、私がお嬢様のお体に触れたのはあくまでも医師として、そこに疚しい気持ちなど一欠片もございません!そしてあの村でこれ以上暮らすと私を助けてくれたリアにどの様な危険があるとも知れず、出来ますればお嬢様がお持ちの土地を貸して頂きたいとお願いはいたしましたがお嬢様を嫁になどとだいそれたお話は一切してはおりません!そもそも私にはもう心に決めた相手がおりますので!」


 そうだね、明石ちゃんまたは副会長さんだね。

 二人いる?だって心に決めるだけなら相手の同意は必要ないもの。

 俺はっ、誰でもいいから女子高生とっ、懇ろになりたいのだっ!!おまわりさんこの人です。そして誰でもいいと言いながら誰でも良くはなかったりする。


「ほう、娘から伝え聞いた話とはずいぶんと違うが・・・それでは一緒にナターリエも娶りたいというのも間違いであると?今頃は実家に戻って両親に報告しているはずだが」

「ちょっと何を仰ってるのか意味がわからないです。繰り返しますがまったく騎士様の事を嫁になどとは望んでおりません。平民は平民同士、仲睦まじく末永く暮らしてまいりますので。あとナターリエ様を大至急お呼び出し頂けませんでしょうか、親御さんに勘違いされて命でも狙われたらたまったものじゃありませんので」

「ほう・・・そこまで言い切るとは欲のない男だな。ふむ、まだ娘は年若い、婚姻までは許せぬが交際の許可くらいなら考えてやらぬことも」

「ご領主様、お心遣いは誠にかたじけなくございますがっ!繰り返しになりますが私にはすでに心に決めた娘がおりますのでっ!申し訳ございませんがその者を裏切る様なことは出来ないのでございますっ!」

「お、おう、わかった、わかったから少し落ち着いて腰掛けるがいい、顔が非常に怖い」


 いや、顔が怖いのはあんただろうが!あとこのおっさんは娘を嫁に出したくないのか俺に押し付けたいのかどっちなんだよ!

 てかこの国ではゴリ・・・ゴツい感じの女の子が人気なの?

 比較対象が子爵様だけだからまったく信用ならないんだけど、この人が獣姦趣味の狂った好みの持ち主なだけだと思いたい。

 いや、でももしも、仮にもしも街の人間もそうなのだとしたら・・・か弱い系の女の子は俺が独占状態になるのでは!?

 ちょっと街に出て意識調査を進めるべきではないだろうか?


「それでは望みは土地屋敷ということだな、それもどこそこの町や村ではなく何もない荒れ地でかまわないと。薬師、いや、イシ?イシャ?として活動するのなら街なかのほうが都合が良いのではないのか?」

「街なかでは薬を作る為の薬草が手に入りませんので。出来ましたら屋敷を建て、田畑を耕せる場所ならありがたく存じます」

「畑を耕すにしても荒れ地ではどうにもならぬと思うが・・・良かろう、もともと娘の度量を図る意味もあり好きにさせようと与えた土地だ。それを娘が認めてそなたに貸すと言うのだから否とは言わないさ」

「ありがとうございます。いきなりではありますがその土地の賃貸料といいますか収めさせて頂く税はどの様にすればよろしいでしょうか?」


 よし、人気(ひとけ)のない場所で自由に出来る土地を確保!

 ちなみに税金は『金銭として得た金額の三割をご令嬢に支払う』と言うビックリするほどの高待遇である。

 つまりどれだけ何を生産しようが売ってお金にしなければカロリー・・・じゃなくて税金ゼロってことだな。

 もちろんある程度、そこらへんの大地主以上には払う予定なんだけどね?

 無駄に注目されるのも勘弁してもらいたいけど不必要な反感を買うのはもっとよろしくないし。


「それではヒカル、リアの二名にトリヒータヴィンデ子爵領内ドライエクにて薬師としての身分を与える。後で書状を用意するのでそれを持っていくが良い」

「はっ!我儘をお聞き届け頂けましたこと心よりの感謝をいたします!」

「あ、ありがとうござます?」


 その場で席から立ち上がり入室した時と同じ様に最敬礼をする俺。同じ様に立ち上がり慌ててちょこんと頭を下げるリアちゃんはとても可愛いと思いました。てか完全に噛んだよね?


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