第37話 小一時間くらいこねまわしたい!

 傷のふさがったカロリーヌ嬢のリハビリ、屋敷の回りの散歩や腹筋に力を加えすぎない程度の筋トレなどをしながらもさらに半月ほどが過ぎ去る。

 日に日に食料の消費量が上がるゴリ・・・子爵令嬢とそのお付きの騎士様。とりあえず引っ越しが終わったら絶対に家には呼ばないと心に誓った。


 あとやたらとボディタッチが増えてるんだけど・・・そう、二人から。

 どうせならリアちゃんに触れて欲しいんだけどな?別にいらない?いや、いるいらないじゃなくて俺の精神の安定のためにですね。いらない?なら仕方ないな。

 その間俺が何をしていたのかと言えば


『カラカラカラカラ』

『ギッコンバッタン』

『チクチクチクチク』


 糸紡ぎと機織りと縫い仕事である。そう、新しい服と下着を縫っていたわけだ。

 研究したのがまだ『裁縫』だけなので下着類と簡単な洋服くらいしか縫えないんだけどね?日本から着てきた一張羅のシャツとズボンとジャンパー、こちらも一張羅のTシャツとボクサーパンツそして靴下&合皮の靴。

 異世界に来てからの数ヶ月ですでにクタクタになってるんだ。

 学校に居た時とここでお世話になってから、両方の期間を足してもまだふた月くらいしか経ってないのに。


 その距離だけを考えると一人でずいぶんと遠くまで来てしまったものである。転移装置バンザイ!

 てかさ、下着。特にパンツが一枚しか無いとさ、洗濯の度にノーパンで過ごすことになるんだよ!女の子と暮らしてるとこれが結構キツイのだ。

 リアちゃんの前でズボンで擦れておっきとかしたら大惨事だからね?


 日頃のお礼にまずは大家さんからと、リアちゃんにちょっとカボチャっぽい形状になってるパンツとキャミソールっぽいキャミソール(そのまま)をプレゼントした時のあの微妙な表情と言ったら・・・何をしてるのかと興味津々で俺がパンツを縫ってる姿をジッと見てたからね?

「直接肌に触れさせるのが微妙に躊躇われる下着ですね・・・」とか言ってたけど肌触りは今つけてるその目の荒そうな麻製のシャツとパンツと比べれば五倍は良いはず!


 だからほら、安心して着てごらん?着心地の心配じゃなくメンタルの問題?是非ともそれを乗り越えて強くなってもらいたい。

 シャツの色は白のまま、パンツの色はエンジ色。

 白だとほら・・・な?多くは語るまい。

 染色はどうしたのか?エンジの他には緑系とか青系だけなんだけど植物由来の染料なら山の中に大量にあるのだ。


 てか翌日には「替えの下着もお願いします、あと普段着も」と即落ちリアちゃんであった。はき古した下着の行方が少しだけ気になったが・・・その後『彼ら(パンツ)』を見た者は居ない。

 てことで二人分の下着を五組ずつ縫い上げた。もちろん靴下も五足ずつな!

「ちょっと足のサイズを測らないといけないから俺の膝の上にリアちゃんの足を乗せてくれる?」って言った時の不審人物を見る瞳・・・彼女は俺を一体なんだと思ってるのだろうか?

 うん?そもそもの出発点が脚フェチ扱いだったから仕方がない?なんと心外な!

 まったく、俺は尻フェチだとあれほど・・・これ、たぶん脚フェチの方が扱いがマシだろうな。


 下着の次はもちろん洋服である。

 リアちゃんにはプリーツを入れた濃いエンジ色のエプロンスカートと白い長袖ブラウス、スイス娘のコスプレみたいな素朴な感じ。

 自分の物は裾を絞れる少し太めの深緑のズボンと白のYシャツにズボンと同色のベスト。靴も作れるんだけど革が無いので断念・・・するしかないと思ったんだけど姫騎士様が猟師から肉を徴収するついでに革も手に入れてくれた。見た目からしてほとんど山賊である。


 当然お米やさんの配達の兄ちゃんに皮をなめす技術なんてないので研究で『革加工』の技術を追加。騎士様がまるまるひと月滞在してるからその間に貯まったスキルポイントがあるので問題なく入手出来た。


 てか久々に見る能力値がこちら

『近接戦闘4→6、遠距離戦闘2、建設4、採掘6、農業0→4、調理1→5、調教1→3、生産0→7→2、芸術2→4、医療0→3、知識7、外交5→6』


『農業』はあまり外に出られなかった(木材の伐採と薬草の採種くらい)し農作業も収穫と種植えくらいだったのでそこまで伸びなかったけど毎日毎食ごはんを作ってたから『調理』はそこそこ上昇。

『生産』はもちろん暇を見つけて棍棒を作ってたからでその棍棒に装飾を施してたら『芸術』もちょっとだけ上昇。『医療』は姫騎士様の治療頑張ったからな!


 そして残り『近接戦闘』と『調教』と『外交』の微増。

 ナターリエ嬢がバター作りをしてない時に手合わせをしてもらったり見た目はどう見ても肉食獣なお馬の世話をしたり姫騎士様と色々なお話をしたりしてたら上がってた。生産の減少分は『革加工』を取ったからだな。


 ひと月ぶんにしては伸びの悪かった能力値――お客さんがいたから仕方ないところもあるんだけど――の話は一旦置いておくとして・・・靴である!

 再度リアちゃんの足のサイズを・・・女の子の足の小指って可愛いよね。小一時間くらいくりくりとこねくり回してぇなぁ。小指をつまもうとしたら当然のようにむっちゃ睨まれた。

 出来あがったのは二人分のショートブーツが一足ずつ。


「あれだな、ヒカルは何でも出来るのだな?あとリアの着けている下着がとても着心地が良さそうなのだが私の分も用意してもらえぬかな?」


 もちろん普通にお断りであります!なんて断ることも出来ず・・・何故かナターリエ嬢の分も一緒に作らされた。

 ああ・・・貴重な木綿が消えて行く・・・・チッ、別で料金を請求してやるっ!

 二人ともサイズがデケェから布の消費量も多いんだよ!

 口にしたら殴り殺されそうなのでもちろん言わないけど。

 だって相手は霊長類最強(マウンテンゴリラ)だからな!いや、異世界だしもっと強いのもいそうだけどさ。


「そういえばカロリーヌ様はどうしてあの様な大怪我をされたのです?お供の騎士様の鎧も血に濡れていましたしやはり魔物が?でもそれにしては血がそれほど乾いておりませんでしたし・・・村の近辺に何かが出たのですか?」

「ほう、あの状況でそこまで確認していたとは、ヒカルは大した観察力を持っているのだな?そ、それはアレか?惚れた相手のことは何でも知っておきたいとかそう言う・・・」

「あ、そろそろご飯の用意してきますねー」


 ちなみに怪我の理由は馬から落馬した時に運悪く下にあった尖った岩に体を打ちつけてたから。何それ聞いただけで痛いんだけど・・・。

 落馬の原因はいきなり飛び出してきた子供に馬が興奮して・・・踏みつけたかららしい。

 騎士様の返り血の理由?怖くて聞けねぇわ!間違いなくこの村から一家族か二家族は減ったと思う。

 とりあえず貴族様とは最大限の距離を置こうと再度心に誓う俺だった。


―・―・―・―・―


『近接戦闘4→6、遠距離戦闘2、建設4、採掘6、農業0→4、調理1→5、調教1→3、生産0→7→2、芸術2→4、医療0→3、知識7、外交5→6』

【研究で『革加工』を追加】

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