第34話 乙女な姫騎士様

 圧倒的に原始的な、それこそ心霊治療のような、精霊とか祖霊信仰もごちゃまぜにした見た目の治療を騎士様に施した後。

 治療中は気も失わずにこちらの様子をジッと見つめていた騎士様、いや、姫騎士様が治療終了と共に意識を失ってしまったので拭き取れる血をできるだけ拭き取る。

 体を冷やさないよう上から毛布をそっとかぶせ・・・る前にホコリを叩いて天日干しくらいはしとくべきだろうな。ダニ、カビ、雑菌・・・むしろ何も掛けない方がベストか?


 他のメンバー、お付きの女騎士様四名とリアちゃんを伴って室外、むしろ屋外へ出る俺。何にしても一度手を洗って・・・てかこの血まみれの手で井戸から水を汲むのはちょっとキツイ。

 いや、キツイって言うよりも井戸に血が混じっておかしな感染症が広まったりしたら大惨事だしね?そもそも手だけじゃなく全身血まみれという。


 もちろん血まみれなのは俺だけじゃなくてほぼ全員なんだけどさ。ちなみに『ほぼ』に含まれていないのはリアちゃんである。

 いやいや、どうしてこの屋敷の家主、薬師のあなたは全然汚れてないのに居候で素人の俺がスプラッターな状態なのかな?


「てことでリアちゃん、門の外で血を洗い流したいから水くみよろしくお願いします」

「えー・・・」


 露骨に嫌そうな顔をするリアちゃん。そこは素直に手伝ってくれよ!!

 手や顔を水で濯ぎ、着ていた服も洗濯して体もゴシゴシと手ぬぐいで擦る。

 てか季節が日本と同じならまだ6月なんだよなぁ。夕暮れ時に野外で濡れタオル摩擦とかそこそこ寒いんだけど・・・。

 あと騎士様方の視線が刺さりまくっててちょっとどころじゃなく怖い。


「とりあえず騎士様も俺と同じ様に血を洗い流して体を清めてもらえますかね?」

「貴様・・・非常時でなければ姫様のお体を見ただけでも十分に死罪に値するのに我々にまで肌を晒せと言うのか!?」

「何言ってんだこいつ・・・体に他人の血が付いたままだとどんな病気になるかわからないからですよ!あと医者が患者の治療行為を行うのに体を見るのは当たり前なので妙な勘ぐりは止めてもらえますかね?心の底から不愉快なので」

「そ、そうなのか?他人血で病に・・・。すまない、言葉が過ぎたことは謝ろう。しかし、いかな騎士とは言えども我々も年頃の乙女なのだ、異性に見られると言うのは・・・」


『年頃』とか『乙女』とか関係ねぇんだよ!そもそも前提条件から間違ってるんだよ!だいたい俺は貴女たちの裸なんてこれっぽっちも見たかねぇんだよっ!

 いやさ、命に関わるような、むしろ『この人よく生きてるな!?』ってほどの緊急事態だったから今まで触れないでおいたんだけどさ。そもそも俺は医者ではないところから始まるんだけどさ。

 うち(リアちゃん家)にやってきた女騎士様と子爵令嬢様。五人全員ものすげぇゴツいんだよ!馬なんかもアレだぞ?見た目野生の輓馬だぞ?こんな馬に乗ってるのなんてラ○ウか前田○次くらいだぞ?


 そしてそれに平気で乗っているであろう女騎士様、及び姫騎士様。


 このワードで想像するのって『肌色の多い深夜アニメ』むしろどストレートに『エ○アニメ』ではないだろうか?

 そうで無かったとしても、アニメでよく見る可憐な『赤薔薇』とか『白百合』とかそう言う部隊名の女騎士様を思い描くのでは無いだろうか?

 声優さんで言うなら『戸○遥』さんとか『日○陽子』さんとかさ。


 俺も最初はそう思ってたさ。

 だから門まで小走りで走って出たさ。

 なのに現実!

 アニメで喩えるならば


『オ ー バ ー ○ ー ド』


 ガ○ーランが小隊組んで現れるとか意味がわからなすぎる・・・。何なの?全員『ワンニャン系』じゃなく『ゴリラ・ゴリラ・ゴリラ系』の獣人さんなの?

 それなのに、まるで俺に精神的な追い打ちをかけるように『反応が普通に女騎士様』なのである!物凄い乙女っ!ちょっと責任者と一昼夜話し合いたいところである。

 言うまでも無いことだけど俺にそんなニッチな趣味も性癖も無いからね?俺は生粋の女子高生好きだし!全員年齢はそれほど変わらない?誰も歳の話はしてねぇんだよ!


『メスゴリラ』って呼ばれてる某少佐は大好きなんだけどなぁ。


「さて、我々は礼を言うのが正しいのだろうか?それとも苦言、怪我人に何をしてくれたのだと罵倒を浴びせるのが正しいのだろうか?」

「現状ではどちらも勘弁してほしいですね。お礼はご本人のお命が繋げたならご本人から頂きますし、医療行為を罵倒されてはたまったものではないですから」

「それもそうだな。いや、しかしアレを医療行為と言うのは・・・貴様、いや、貴殿がただ乙女の内臓が好きな気狂いでは無いという証明が出来ぬからな」

「俺には絶対にそんな性癖はねぇよ!て言うか未だに指先に触ってた時の感覚が残ってるんですからね?すき好んで誰があんなことしますかってんですよ!」


 もう色んな意味で気分を害してるからとっとと帰ってもらいたいものである。

 でもあの女性(仮)の怪我が一段落するまであそこ(広間の机の上)から動かすわけにもいかないしなぁ。

 今日から晩ごはん何処で食べよう?

 いや、そもそもこの人達が全員この屋敷で暮らすとか暑苦しすぎて無理なんだけど?

 とりあえず嫌がらせ返しに村長の家に送り込めばいいか?

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