一章 人の足を引っ張ることに特化した連中(村長一家)

第27話 父性に目覚めそうだからそう言う話は控えて欲しい

 出来ることもやるべきことも定まってきたので『それからひと月後……』なんて感じで時間が経過するかとおもわれた俺の生活、でもそんなリアちゃんと楽しくイチャイチャ出来る我が世の春が訪れるようなことはなく。

 捨て猫レベルに警戒心が強いからね?そろそろ心を開いてくれないかな?

 いつも通り薬草その他の採種をしてお家に帰宅した俺の目に入ったのはそこそこ齢を取ったおっさんとおばさんとちょっと若いおっさん。

 いきなり平均年齢がグッと上がったな。


「あら、おかえりなさいあなた、今日も採集ありがとうございますね?では、わたしはこれから主人の足を洗ってさしあげたいのでお帰りいたでけますでしょうか?」

「しゅ、主人だと?お前……俺という男が居ながら他の男をくわえ込むなど許さんからなこの売女!」


 リアちゃん、デレ期を通り越して熟年夫婦!?

 えっと『あなた&主人』ってのは俺の事を見ながらの発言だったから恐らく俺の事だよな?いや、『あなた』に関してはいつも通り呼ばれてるだけなんだけどさ。そろそろ名前で呼んでくれないかな?

 てかお家の中で足を洗ってもらえるの?そんなオプションサービス今まで無かったんだけど?いくら払えばいいの?むしろ俺がリアちゃんの足を洗う方向でどうにかならないかな?それとも足って隠語的な感じのアレなの?


 ……まぁそんな場合じゃないんだけどさ。


 世話になってる少女の危険に自然と体が反応したらしく、リアちゃんの胸元を掴もうとしていた少し若いおっさんの腕を引っ張り骨から音が鳴る程にねじり上げる俺。


「おっと、うちの奥さんに手を出そうとするのは勘弁してもらいたいな。見た目か弱い女の子なんでね」

「まるで中身はか弱くないみたいな言い方やめてもらっていいです?」


 か弱い女の子はおっさんに絡まれた時『口元に薄っすらと笑いを浮かべながら愛用の鉈の柄を左手で握り込んだりしない』んだよなぁ……。

『少女の危険=殺人犯になる、つまり本当に危険なのはこのおっさんの方』って図式はちょっとオカシイと思うんだ。

 そしてそんな俺の気遣いなどつゆ知らず「痛ぇなこの野郎、さっさと離しやがれっ!」なんて叫びながらジタバタと暴れるおバカなおっさん。そしてこの場にはおっさんが多いので以降はこいつを『おバカ』と呼称する。

 掴んだまま暴れられるのも面倒なのでそのまま軽く押し返す……つもりが思い切り投げ飛ばしていた。

『近接戦闘』スキル『4』しか無いのに熟練の柔術家みたいな動き、マジでどうなってんだよ。


 てか恐らく息子を投げ飛ばされたおっさんおばさんの夫婦、食ってかかってくるかと思えば二人並んで顔を引きつらせている。


「リアちゃん?俺が危険は排除してあげたでしょ?どうして研ぎたての鉈を抜き放ってるのかな?」

「わたし最近気付いたんですよ『ヤラれるくらいならヤッてしまえ』と」

「うん、それは間違いなく正しい反応だと俺も賛同するけどさ」


『ヤラれる』と『ヤッてしまえ』で使われる漢字が違う気がするけどきにしてはいけない。

 もしかして俺はこの村に危険な何かを生み出してしまったのではないだろうか……いや、この子、出会った当時からこんな感じだったわ。

 あ、さすがに赤錆の浮いた鉈を少女が持ち歩くのはどうかと思ったので『鍛冶』技能を取った記念に綺麗に研いでおきました。

 普段から鉈を持ち歩く時点でオカシイ?ここ、日本じゃないんだよ?それでなくとも魔物なんてものがいる危険な世界だからこれも仕方がないことなのだ。

 もしも再び俺の前に『巨大バッタ』が襲来した時、頼りになるのは眼の前の少女だけだからね?


 このまま睨み合い(正確には武装したリアちゃんが睨みつけてるだけ)しててもお話が進まないので、立ち上がってこちらに体当たりしようとするおバカを追加で三度投げつけて門の外に放り出した後で室内……に入れたくは無いらしいから庭に椅子を持ってきて話すことに。

 リアちゃん、同じ村人――おそらく話に聞いていた村長夫婦と二番目の息子だろう――に対してこの接客態度。マジでストレスとかいろいろ溜まってたんだなぁ。

 いや、自分に襲いかかろうとしたおバカの家族に椅子を出してやってるだけでも十分に有情なんだけどさ。


「ええと、ここは俺の自己紹介とか必要な感じ?」

「とくに要らないと思いますよ?わたし、この村の村民ってわけでもないんで」

「そ、そんな寂しいことを言わないでおくれリア。あなたは私の大切な姪っ子なんだからね」

「あなたがわたしの身内を名乗っているのもあなたのお兄さんって人がわたしの母に乱暴した結果なんでわたしとは何の繋がりも関係も無い他人なんですけどね?外で転がっているわたしに乱暴しようとしているあなたの息子さんみたいに」


「あ、あの子のアレはあなたに惚れてるってだけで乱暴とかそういうのではないわよ!あんただってお父さんにはさんざん世話になってたでしょうが!」

「乱暴して無理やり嫁にした女の連れ子が成長してきたのでその娘にも乱暴しようとして殺された男に世話になったねぇ……まぁその時母も暴れたあの男と一緒に亡くなったんですけどね」


 この子、サラッとした感じで口にしてるけど内容的には二時間ドラマが裸足で逃げ出しそうな壮絶な過去だな!?


「えっと、知らない他人が聞いていい話じゃなくなってきてる気がするんだけどもしかしなくても出ていったほうがいいよね?てかこれ、聞いちゃったら俺も巻きこまれない?大丈夫?」

「そもそもあなたはわたしの旦那様なのですでに一心同体の運命共同体ですが何か?」

「お、おう……せやな」


 異世界って教育が行き届いてないイメージなのにリアちゃんは難しい言葉知ってるね?向かい側の村長夫婦はイマイチ理解して無いみたいだけど。

 それもこれもお師匠様って人が立派だったからなのかな?(現実逃避)


「てかそんなこと聞いちゃったらこれまでみたいに邪な目でリアちゃんのお尻を見つめたり出来なくなるじゃん!父性に目覚めて保護しちゃいそうだからそう言う話は控えて欲しかったんだけど!」

「それが無くともお尻を見つめるのは止めて欲しかったかな?まぁ夫婦ですから良いんですけどね?」


 その夫婦設定は当分続くのかな?


―・―・―・―・―


さすがにそろそろ叱られそうなので『二話目投稿一言ネタ』は控えよう・・・(笑)

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