第23話 俺がこの家を出る時は一緒に旅立つときだから

リアちゃん(CV:悠○碧)なので本日二話投稿です・・・


―・―・―・―・―


 翌日からは俺が採集作業、リアちゃんが薬作りという分業体制に移ることになった。

 ほら、俺ってオート採集が出来る事がわかったじゃないですか?ソレの副次作用的なモノで『採集場所までの移動を効率化』出来るみたいなんだ。

 昨日は作業時間込みの往復で四時間近くかかった道のりが一時間半くらいで済むと言う。

 つまり二人で一往復して向こうで作業するより俺が三往復する方が早いのだ!

 あと、オートで動いてる時は昨日より大きめの籠でも全然大丈夫だしね?問題点は


「さ、流石に三往復は足腰にくるなぁ……あと採集場所まで遠すぎて効率が悪すぎる」


 普段使ってない筋肉が悲鳴をあげること。

 そしてこれは午前中の仕事、ここん家でお世話になる条件みたいなモノでお昼からは自由時間(実験時間)になるんだけどさ。

 もちろん『自由時間≠自由』なんだけどさ。俺、やりたいことはいっぱいあるからね?

 まず最初に取り掛かったのは『荒れ果てているお家のお庭面積の拡張と柵のアップデート』である。

 転移してすぐに学校の回りの木を伐採したり空堀を掘ったりしてたアレをもう一度って感じだな。防御力の強化、大切だからね?

 もちろん勝手に始める訳にはいかないからリアちゃんに


「隣接してる荒れ地とか裏山を勝手に占拠しても大丈夫な感じ?」

「もともとこの近辺は師匠の土地ですからお好きにどうぞ?と言うよりあなたは何をするつもりなんですかね」


 許可は取ってあるから大丈夫!

 裏の畑を耕した時と同じ様にまずは雑草雑木が好き放題、繁殖放題の土地の整地から!ではなく『備蓄ゾーン』と『廃棄ゾーン』の範囲設定。

 備蓄ゾーンは室内にしたいんだけどな。木材とか石材をお家の中に並べだしたら大家さんにキレちらかされそうなので小屋が建つまでは野外に放置することに。


 そして肝心の整地作業はと言うと


「たった二日の間にお家の敷地面積が三倍、見えていない裏山方面も含めると十倍超えてますよね!?」

「おれ、いっぱい、がんばった」

「どうして片言……いえ、頑張ったからと言ってどうこうなる作業速度ではないと思うんですけどねぇ」


 二日で完了した。個人的にはほとんど鍬と斧を振り回してた感覚しか無いんだけど木の根っことか何処に行ったのだろう?伐り倒したら全部木材として転がっていた不思議。

 学校の回りで樵をしていた頃はそんな感じじゃなかった?そもそもあの頃はオートじゃなかったもん。

 整地が終われば続いては柵の取り壊しと新しい柵、むしろ壁の設置である。


「あそこの荒れ地に置いてあったのって細い丸太でしたよね?いえ、それ以前にそのへんに茂ってた曲がりくねった雑木から丸太が取れること自体おかしかったんですけどね?それがどうしてこんな板塀になってるんです?」

「鋸があったから?」

「ノコギリどうこうじゃなくて!丸太の直径よりも板の幅のほうが広いのってあり得ないですよね!?」


 こちらはちょっと時間がかかって三日で完成。木材が足りなくなったので途中で伐採作業なんかもしなくちゃいけなかったから仕方ないね?

 そしてこのへんでリアちゃんが俺の事をいぶかしがり始める。うん、ちょっと遅くね?


「あなたってもしかしたら高名な魔法使いさんだったりわたしを迎えに来た王子様だったりします?」

「残念ながら両方ハズレだな。元商売人の一般人だもん」

「ですよねー、あなたは王子様じゃなくてそのうち玉子様になりそうですもんね?」

「ならないから!うちのおとんもじいさんもフッサフサだったから!」


 あれだぞ?日本には『言霊信仰』ってのがあるんだからな?ソレを口に出したことによってストレスで本当に抜け毛が増えたらどうしてくれるんだ!


 整地と外壁の設置が終われば次は倉庫……ではなく『秘密の小部屋』こと、俺の作業部屋じゃなく作業小屋?を立てる作業に入る。

 いや、今回の敷地の拡張の目的の八割はこの小屋を建てるためだったからね?

 どうしてか?だって何らかの『生産』スキルを使おうと思ったらそれぞれに作業台が必要な事が多いんだもん。お家の中で鉄とか銅の冶金とか始めたら間違いなく追い出されるからね?もちろん『研究』しないとまだ冶金作業なんて出来ないけど。


「あなた……ひとん家の敷地内に勝手に家を建てるとか正気ですか?まさか『軒下を貸したら留守中に家の中に入ってきて宴会をされる』とは思いませんでした。こうなったら殺られる前に速やかに退去を」

「いや、これお家じゃなくてただの作業小屋だからね?てかなんなのその諺と劉備と呂布の逸話が混ざった様な例え話。繰り返すけど殺意を抱いてるのはリアちゃんであって俺ではないからね?そしていまさら俺を追い出そうとしても絶対に出ていかないから!もしも俺がこの家を出る時はリアちゃんと一緒に旅立つときだから!」

「あっ、あなたは一体何を言ってるんですかね!?」


 そう、旅は道連れなのだ!元の『いっしょに行こうね!』みたいな牧歌的な感じじゃなくて『お前も引き摺り込んでやる!』みたいなホラー的意味になってるけど気にしてはいけない。

 てなわけでなし崩し的に作業スペースを確保した俺。

 うん、確保は出来たんだけどさ。


「わかってたことだけど作れるのは『竈』と『解体台』と『研究机』だけかぁ」


 そして家は建てられるのに家具はちょっとした日曜大工レベルのモノしか作れないと言う。もちろんオートを使わなければ知ってるものなら色々作れるはずだけど。元々家具職人さんじゃないから大した知識はないのだ。

 一応最初から弓や棍棒なんかの木製の武器も作れるんだけどね?

 それなのにそれらを作るための『木工作業台』が研究しないと作れないと言う持ち腐れ。

 てことで小一時間かけて研究机と背もたれさえない椅子を組み立てる。釘?もちろん木釘である。

 完成したのは特に何も無い短めの長机なんだけどさ。

 机の前の椅子に腰掛けてメイン画面を開き研究項目を呼び出す。


「とりあえず最初は『鍛冶』からだよなぁ。鉄材はまだ見つかってないけど最低限の武装は出来るようにしたいし」


 てなわけで『鍛冶』の項目を……どうすればいいのこれ?ああ、クリックすればいいんだ。てかぼんやり浮かび上がってる画面にタッチ出来るとかとてつもなくサイバーだな!居るのは中世レベルの異世界なのに。


『【鍛冶】をアクティベートするには【生産】スキルより5ポイントの振り分けが必要です』


 なるほど、ゲームみたいに目の前の机に座ってるだけじゃ何も出来ないとは薄々感じてたけどまさかポイント制だとは思わなかったよ……。

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