第21話 たんぽぽの使い道

・・・(特に理由は思いつかなかったけど)二話目の投稿です・・・


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『農業』スキルの体感だけでも想像以上に有用な事がわかった俺の(と言うかスターワールドの?)能力。運搬?あれはスキルじゃなくただの雑用だから別物なんだ。いや、そもそも採集作業も『農業スキルの数値を参照した雑用』なんだけどね?

 そう、今なら俺の出来ることは無限大と言っても過言ではない!

 ・・・はずなのだが出来ることは物凄く限られている。


 何故なら今の俺は『ニューゲーム』状態、そこから何かしら出来ることを増やそうとすれば『研究開発』のワンクッションが必要なわけで。

 ゲームだと研究用の施設というか研究用の机を用意して研究対象を選び『机の前で何かしらゴソゴソ』してれば必要経験値が上がってそれが上限まで貯まれば研究完了!って感じだったんだけど……この世界ではどうやら違うらしい。


 もちろんまだまだ状況把握が出来ないから研究は置いといて今出来ることの確認からなんだけどね?やったことは『採集』と『運搬』だけだし。

 戦闘関係は相手が必要だから無理だし装備品も無いから放置するとして、まずは建設からかな。

 造れるのは『木製』の壁と床と屋根。物は試しにお家の隣に外壁でも『大工道具がありません』……ゲームだと道具なんて要らなかったのにっ!


 当然と言えば当然なんだけどさ。素手で丸太を板に加工するとか武田惣角でも無理だと思うもん。合気道じゃなく空手ならワンチャン……無いな。あれ、割ってる瓦とかそれ専用のやつだってどっかで見たし。

 後でリアちゃんに金槌とか木槌とか鋸とかあるか聞いてみよう。


 気を取り直して次に進む!今度は採掘!

 穴掘りの道具、ここにはスコップも無いし今は特に穴を掘る必要が無い。そして踏破領域が狭いから鉱石が採れそうな場所も見つかってない。当然鶴嘴(つるはし)も無いんだけどさ。

 てかさ、踏破領域。学校がどっちの方角かだけでも確認しておこうとマップを移動させようとしたんだけど『明るくなってる部分』以外の未踏破領域で引っかかって遠くまでは見渡せなかった。


 明石ちゃんの現在地だけでも知っておきたかったんだけどなぁ……。

 てか建設に続いて採掘も出来ないとかどうなってんだよ!花咲かじいさんのポチの様に地面を掘ったら大判小判がザクザク出てこいよ!あの話はあの話でおかしいんだけどな!だって掘ったら出てくるってことは埋めた人がいるってことじゃないですか?

 犯人隣の爺さん説を押しておきたい。ツンデレ爺さんだったわけだな。


 だ、大丈夫、だって次は農業だから!農業スキルはすでに採集作業とか伐採作業で有益なのが確認できてる勝ち確スキルだから!


「リアちゃん、鍬とか鋤とかある?」

「逆に聞きますけど薬師の家にどうしてそれがあると思ったんです?とりあえず鍬でいいです?」

「あるならどうして必要のない『ありませんムーヴ』をかましてきたのかな?」


 お家の裏手に回って家庭菜園くらいの広さの畑を……長期間放置されたままの裏庭だし、まずは雑草と雑木の駆除からだよね。知ってた。

 小一時間くらいで終わるかな?と思ってたのに普通に夕方までかかって整地、開墾、種まきまで一通り済ませた俺。

 言うまでもないが一番時間がかかったのは整地である。

 あと一箇所おかしなところがあったよね?そう『種まき』の部分。

 もちろんポケットに種籾を入れて持ち歩いてたわけじゃないからね?そんな事したらモヒカンに襲われちゃうもん。


 ではどうしたのか?特に何もしてないんだなよなぁ。

『農地ゾーン』の指定をして耕しただけで初期設定である『じゃがいも』が勝手に植えられていたという。

 マジその種芋何処から出した?むしろそれ食べれば植える必要無い気がするんだけど?

 あと最初から栽培出来るのは『じゃがいも』『トウモロコシ』『たんぽぽ』の三種類だけ。何だよたんぽぽって、お刺身に添える以外の使い道知らねぇよ。あ、あと『たんぽぽ茶』ってのを聞いたことがあるかも?個人的にはトウモロコシがあるんだからコーン茶一択だけど。

 お茶のためってわけでもないけど畑の半分はじゃがいもからトウモロコシに変更、植え直しておいた。


「今日はあなたにもそれなりに働いてもらったので晩ごはんを食べるかどうか聞きに来てあげたらお家の裏手にそこそこ広い畑が出来ていた」

「そんなこともあるさ。てかそれなりに働いたって認識なのに晩ごはんだから呼びに来たんじゃなくて食べるのか聞きに来ただけなんだ?もちろんいただきますけどね?」


 当然のようにその日も色味の地味なスープ料理がテーブルの上に一品だけ。


「おかしい。俺の中では薬屋さん=ボッタクリの図式が成り立ってるのにここん家の食卓が貧しすぎる」

「ほんっとうに遠慮とか気遣いの無い人だなー。文句があるならあなたのだけ具なしの素汁にしてもいいんですよ?」

「いや、味はもちろんおいしい……気はするんだけどね?何と言いますかですね、育ち盛りのお兄さんはお肉が食べたいんですよ」

「そんな高いものわたしが食べていたとしても居候に出すはずがないでしょうが!そもそもわたしだってここ三年くらい干し肉のカケラくらいしか口にしてませんよっ!」


 お、おう、そうなんだ?それ考えると学校で引きこもりしてた時は狩りの人たちが居たから毎日お肉がいっぱいで幸せだったんだなぁ。


「てかこれだけクソ田舎、じゃなくて自然に囲まれた環境なんだから野生動物もそれなりにいるんじゃないの?この村って猟師とかいないの?」

「猟師さんが居ることと胡散臭い薬師にお肉が回ってくることには因果関係は無いんですよ?」

「いやいやいや、だって薬屋さんだよ?無医村に来たお医者さんみたいなものだよ?村の人間の命を握ってる様な存在なのにそんな村八分みたいな扱いする奴なんかいな……」


 くもないんだよね、だって現代日本ですらそんな村が存在するんだもん。

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