第19話 SAN値!ピン・・・ゲフンゲフン

キリが良い所なので本日二度目の投稿です・・・


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 探索班の中でも一番の戦力を誇るキラキラグループ(ちょっとお高めの風○店みたいだな)が旅に出たので二番手三番手のチームがやたらと気合を入れているかと思えば下位のチームはだらけ始めたこの二日三日。

 俺はもちろん外堀の建設に励んでいたんだけど……探索班の知らない少年に


「なぁおっさん、俺らの苦労も知らないで学校の人間でも無い部外者が穴掘りだけで飯が食えるっていいご身分だな?」


 と、声をかけられる。えっ、それ今更なの?もっと早く気付けよ。

 いや、これまでは明石ちゃんだけじゃなく工藤君とか近くにいたから何も言えなかったんだろうけどさ。

 こんなわかりやすい三下ムーブする奴がまさか進学校にいるなんて……思わず吹き出してしまう俺。


「ああ!?何笑ってんだよおっさん!……これはちょこっと教育の必要がありそうだな、お前らもそう思うだろ?」


 おい、マジで腹筋に力入れて我慢してるんだからこれ以上のお笑い攻撃は止めろ!!

 あと教育の必要があるのはまだ高校生であるあなた達だと思われますが。


「ははっ、怖くてついてこれないとは思うけど男だったら一度くらい俺らと一緒に森の中に入って」

「了解です!明日の朝一からでいいっすかね?」

「おう!お、おう?いや、おっさん、森だぞ?その辺の散歩じゃなくて森、命の危険もある」

「そのあたりは皆さんが守ってくれるから大丈夫ですよね?俺、ただの雑用係ですし?いやぁ、最近単純労働ばっかりだったから気分転換してみたいと思ってたんですよね!ああ、もちろんそちらが言い出したんですから学校側の許可は取ってもらえるんですよね?まさか今になって無理だとかそんなカッコ悪いことは言いませんよね?」


 恐らく想像とは違う俺の反応に頬をヒクヒクとさせる三下集団。視線で『どうすんだよこれ!』『お前が言い出したんだからお前がどうにかしろよ!』って会話してるのが見て取れる。

 まさか俺が動く前に外に出るチャンスが巡って来るとか日頃の行いの良さが認められてる感じだよな!


 ……もちろん学校側と言うか生徒会の許可が出るとは思ってないんだけどさ。



「水玄さん、こうしてお話させていただくのはお久しぶりになりますね」

「ええ、そうですね美しいお嬢さん……じゃなくて副会長さん。俺の方は常時ウエルカムなんですけどね?さすがにお仕事のお邪魔をするわけにもいかず、ご無沙汰申し訳ございません」

「あら?最近はうちの女性との一人と仲がよろしいようでしたけど?」

「生徒さんと言うか姪っ子なんですけどね?もしかして……やきもちを焼いてくださってます?」

「ふふっ、さて、どうでしょうか?」


 他の人が(こちらと関わりを持たないで済むように)忙しそうに出入りしてる朝の校門で寒々しい会話をしてるのはもちろん俺と生徒会の副会長さんである。

 無理だと思ってたのに『探索班以外の人材も森の中で活動出来るか確認する』と言うこの人の鶴の一声により遠出の許可が出たらしい。

 思ったより権力があるんだな副会長さん。

 俺の中で一度沈んだ『生徒会長実はお飾りで副会長黒幕説』が再度浮かび上がってくる。


 ああ、もちろん昨日の少年たちも一緒だよ?全員の表情がものすごくすぐれないけど寝不足なのかな?体調管理、大切だよ?

 安全の為に副会長さんもついてくるらしいんだけどただの山歩きだし特に問題は無い……と思いたい。

 俺が自分の能力に気付いたのだって一昨日なんだしまさかこの人が何らかの情報を握って確かめに来たわけじゃないよね?


「特に目的地などは定めておりませんがどこか見てみたいところなどありますか?」

「そう……ですね、ああ、そういえば変わった石塔?みたいなものが西の方にあったと工藤君達から聞いたんですけど良ければそれを見てみたいなぁなんて」

「結構前に報告があった遺物ですね。私も捜査に立ち会いましたがこれと言った成果はありませんでしたが……水玄さんならなにか気付くことがあるかもしれませんものね?」

「絶対にそんな事はないと思いますので過度の期待はしないでくださいね?」


 クスクスと手の甲を口元に持っていき笑うとてもお上品な笑顔を頂きました。

 てか俺、みんなみたいに装備品とか無いんだけど……『草薙の剣』と勝手に名付けたマチェットだけ持っていけば問題ないか。てか今更だけどこれ、草刈り用じゃなくて普通に武器だよね?

 あくまでも今回は山歩きであって山登りではないのでそれほど疲労することもなく獣道程度には踏み分けられた道をマチェットフリフリ突き進む副会長探検隊の一行。


「……その様なナタで普通に大蛇を処理できるのですね?」


 うん、フリフリしてたらいきなり蛇が首を出したからビックリして刎ねちゃったんだ。何故だかそれを見た寝不足の少年たちの顔色がいっそう悪くなった不思議。

 そしてこれを農具(ナタ)と言い切るのは無理があると思います。副会長さんがそんな細かい違いを知ってるかどうかはわかんないけどさ。

 ふっ、これでも近接戦闘『3』だからな!……いや、素人レベルのはずなのに副会長さんの太腿くらいのサイズが有る蛇の首を一振りで刎ねるとかちょっとおかしくね?


 山の中、苔むす岩や綺麗な小川などを乗り越えながらも探検隊は進む!

 今のところ原住民の襲撃も無いし丸太や岩が転がって来たりもしていない。

 ここまではピクニック気分で鼻歌を歌いながら順調に進んでいたんだ、そう、ここまでは……。

 後少しで目的地の石塔に辿り着くと説明された矢先、ガサガサと下草を鳴らしながら俺の左斜め後ろ50cmの所に現れたのは


「ひっ、ひっ、ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ちょっ、水玄さん!?どうしたんですかいきなり!!落ち着いて、少し落ち着いてください!!」


 そう、バッタ、でかいバッタである!!

 ちなみにこの時点より俺の記憶は定かではない。何故なら完全にSAN値が0だったから。

 手持ちのマチェットを辺り構わず振り回し、最後には投げつけた上でそこかしこと走り回り……目の前に現れたのは石塔……てかアレって『転移装置』だよな?

 もうこれ、使うしか無いよね?だってバッタ、そう、ここにはバッタが居るのだからっ!!

 どうやったのかわからないけどソレを作動させた俺、落ち着きを取り戻した時には当然のようにぽつんと一人きりであった。


 転移先にも同じ様な石塔があったからしばらくしたら戻ろうかな?なんてちょっとだけ思ったんだけどさ、こちらにあったモノは壊れてるし、なおかつあの化け物……二足歩行の無表情ワンコ三匹に追いかけられ……リアちゃんと出会ったわけだな。


―・―・―・―・―


追憶シーンここまで・・・思ったよりも長くかかってしまった。

でもここから!ここから主人公無双が・・・始まればいいな☆

(そもそも戦闘シーンが少ないあかむらさきの作品)


次回からは小悪魔系田舎娘のシアちゃんが復帰!!

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