第16話 ここから始まる物語
「悪かったなそこそこのおじさんで・・・」
「いえいえ、そんなに悲観することはないですよ?見た目そこまで老けてませんし」
「それ、言い換えればそこそこ老けてるってことだよな?じゃあもしも俺が明石ちゃんに」
「ごめんなさい」
「結果はわかってたけどせめて最後まで言わせてくれないかな?」
「すいません、つい癖で」
「えっ、明石ちゃんってそんなに頻繁に告白とかされる感じなの?確かに地味可愛いけどさ」
「もちろんリアルではされてませんけどね?ほら、画面越しに?」
「ああ、遠距離恋愛とか出会い系とかそう言う……」
「違いますよ?P○5とかSwit○hの画面越しに」
それもしかしなくてもそう言うゲームだよね?噂に聞く玻璃洲くんのソース『エロマンガ』と何の違いもねぇじゃん……。
「で、そのファーストコンタクトにお兄さんを一緒にって推薦したんですけど……残念ながらお祈りされてしまいました。ほら、車の運転が出来るのでいざって時に逃げる際にお役立ちだと思ったんですけどうちのクラスの担任も運転出来るので」
「預かり知らぬところで就職に失敗したみたいな感じにするの止めて?まぁ戦闘力皆無の人間より少しでも戦える人間を同行させるのは間違ってないから仕方ない。……でも、ありがとう、推薦してくれたその気持だけで十二分に嬉しいよ。もしも先にごめんなさいされてなかったら惚れてた所だな」
「だってお兄さんって近くから離れると一人で逃げ出しそうじゃないですか?」
少し照れくさそうにそう口にする明石ちゃん。なんだかんだで一貫して最初から俺の事を気にかけてくれてる奇特な女の子だからなぁ。
もちろん俺には理解出来ない思惑もあるみたいなんだけど……いや、普通に考えたら無能は無能でしか無いからね?いきなりチートに目覚めたりとかしてぇなぁ。
そもそもの話、言うほど何も出来てなくなくなくね?俺。
むしろ言われた仕事、主に肉体労働系だけど全てそつなくこなせる器用さがあるとか結構お役立ちキャラな気がするんだけど?
それでも目に見える能力が無いのは確かなんだよね。
その日の夜は校庭でキャンプファイヤーみたいな櫓を組んで明石ちゃんグループ、イケメンさん御一行の壮行会的なパーティが開かれる事に。
まぁパーティなんて言っても食材の種類が限られてるし甘いものも出ないから特に変わった料理が並ぶわけでもないんだけどね?
それでもこちらの世界に来てから初めての大きな変化をもたらしそうなニュースに久しぶりに騒がしい雰囲気に包まれる生徒たち。
まぁ俺は異分子なのでコッソリとトラックで引きこもりなんだけどさ。
「はぁ……なんていうかこう、優しくしてもらってもそれに応える術がないってのはキッツいなぁ」
明石ちゃんに対して親切な友人に向ける感謝七割、可愛い女の子に向ける恋愛感情三割で何も出来ない自分にガチ凹みする俺。まぁ十歳も年下の女の子に対して恋愛感情を持つのはどうよ?って話でもあるんだけどさ。
そう言うお店のお姉さんに惚れて通い詰めた元友人の事を笑えないな俺。
いやいや、これは恋愛感情なんかじゃなくて自称姪っ子に対する庇護欲なのだ!だからなんらやましい気持ちではない!と、言い切れない心内。
「そもそも何なんだよこの異世界!ゲームみたいな世界のくせして俺だけ仲間外れってどう言うことだよ!あれか?俺がロープレ嫌いだったのが悪いのか?」
だってほら、RPG、特に国産のJRPGって有名メイカーのものはほとんど勧善懲悪を押し付けてくるじゃないですか?正直ああいうの、俺みたいなちょっと捻くれた人間には辛いんだよねぇ……。
善人ぶってはいはい何でも引き受ける様な人間、逆に信用出来なくね?
行動を起こすならちゃんと納得できる説明とそれに見合うだけの報酬が欲しいと思っちゃう俺の感性はオカシイのだろうか?
「どうせゲームの世界なら『スターワールド』みたいな自由な世界に行きたかったなぁ。一から家建てて、開拓して、色々作って交易とかしたりして」
まぁ蛮族が攻めてきたり、巨大な昆虫生物がどこからか湧いてきたり、宇宙(そら)から機械生物が降ってきたり、宇宙海賊に滅ぼされたりするゲームなんだけどさ。何なのあいつら、こっちの経済状況見ながら投入してくる戦力をどんどん増やしやがるの。
「あーーーーーーっ!!ステータス画面とか言うわけのわからない表示が開くならどうしてついでにシステム画面とかメイン画面とか」
『システム起動、メインウインドウ表示します』
「開き……ひら……開いた!?えっ?どうしたのいきなり?ストレスでとうとうおかしくなったのか俺の頭?」
目の前に現れたのはここ最近見ることもなかったステータス画面ではなくディスプレイ越しに見慣れた、ここ数年は親の顔より長時間眺めていた『スターワールドのメイン画面』が開いていた。
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