第15話 遠くに見える異世界の街

 そんなこんなで作業開始から5日間が経過。時間経ちすぎ?だって特に目ぼしい変化もなかったしさ。延々と木を切る作業の『コーン、コーン、コーン、ガッ!』とか言う話いる?いらない?そうだよな、俺だって聞きたくないもん。

 いや、伐採作業の男連中じゃなく草刈り作業の女子の方ではとても、そう、とても忌まわしい遭遇があったんだけどね?


 それは初日のお昼すぎ、漣さんに持たせてもらった(他の人にも配ってたのを俺も受け取っただけとも言う)おにぎりも食べ終わり作業の続きを開始しようとしたその時、離れたところから聞こえる女性の絹を引き裂くような……いや、もっと野太い声だったけれども、テーマパークのアトラクションとかでわざとらしく叫ぶ『キャー☆』とかいう感じじゃなく『ふ、ふごぁぁぁっ!!』って感じだったけれども、女の子の叫び声が聞こえたんだ。

 遠くのことだったから俺は見てないんだけどさ、後で聞いた話によると草を刈ったり抜いたりの作業をしていた三人の女の子の目の前にいきなり出たらしい。

『出た?とうとう魔物が襲いかかってきたのか!?』って?違う違う、出たのはもっと恐ろしいもの……そう、バッタである!


『何だよ、たかだか虫で大騒ぎかよ!』と、言う無かれ。だって俺、普通に田んぼで見かけるバッタが服に飛び付いただけでも間違いなく叫ぶもん。

 それなのにだよ?出たバッタ……『中型犬サイズ』だったらしい。それも顔が……ショウリョウバッタ。

 もうね、そんなモノが近くに来たら間違いなくパニックだよ?ゾンビなんて比じゃないくらいの恐怖だよ?

 ソレ自体は近くに居た伐採してた男子が退治したらしいんだけど、潰されたそのバッタの白い体液が飛び散って叫んだ女の子たちの肌にもかかり、なかなかの大騒動になったそうだ。

 あ、あと『アナコンダサイズのデカい蛇』とか『ワニサイズのデカいトカゲ』も居たらしいけどそっちは全然平気。毒さえ無ければ爬虫類はそんなに怖くないもん。

 むしろ丸焼きじゃなくちゃんと捌かれてたら食べられる気がする。塩コショウは必須。出来れば生姜に大蒜もお願いしたい。


 でも昆虫、お前らは駄目だ!生理的に無理だ!だって意味もなく怖いんだもん!なんなんだよあの硬そうなのにそれほど硬くない腹部!意味分かんねぇよ!

 もしかしたら俺の前世はメガネウラ(デカいトンボ)に食われた哺乳類の先祖なのかもしれない。

 てかさ、シダ植物が茂ってるわけではないけど背の高い植物が生えてて巨大な昆虫がいるとかこの世界は酸素濃度が高いのかな?だからみんなナチュラルにハイな精神状態なのだろうか?ここ、異世界じゃなくてジュラ紀とかじゃないよね?もちろんカンブリア紀もデボン紀も勘弁してほしいんだけどさ。


 木を伐ってたらいきなりT-REXとか出てこないよね?いきなり出てきていいのは焼いた肉(ステーキ)だけだからね?俺は生焼け肉は好きじゃないから行かないけどさ。そもそも火の通ってないお肉を食べるとお腹こわすし。レアと生焼けは違うと思うんだよなぁ。

 一番意味がわからなかったのが某牛カツ屋。『うちのお肉は形成肉だから付いてる鉄板(焼いた石?)でちゃんと火を通してから食べてね!』みたいなこと書いてあったんだけどそれならそれで最初から火を通した状態で出せや!!


 まぁそんなこんなで樵を初めて5日目、こちらに飛ばされてから8日目も終了。

 晩ごはんは相変わらず一人……ではなく明石ちゃん&イケメングループに混ざって食べている。ちなみにその日はカツ(猪)カレーだった。一緒に食べてるおっぱいさん、スプーンの上げ下げだけでおっぱいが乱舞するんだぜ?


「お兄さん、カレーと言えば玻璃洲君なんですよ」

「えっ?ええと、それは食事中に口に出しても大丈夫な話なのか?」

「逆に食事中に出来ないカレーの話っていったい何なんですか……」


 もちろん性的な意味(性癖)の話である。てか玻璃洲くん、若いのにその性癖はどうなのだろうか?えっ、もしかしてあのクールビューティさんとおっぱいの人もそう言う……俺の心と下半身が苦しくなりそう!!

 明石ちゃんのおかげでリア充グループの一員のふり、と言うより完全に俺は引き立て役だろ?って感じだけど孤立していないのでとてもありがたい今日この頃。

 おっぱいで目の保養も出来るしね?もちろん視線はさりげない感じで向けているので大丈夫!……な、はず。


 そしてそこからさらに……十日が経過する。

 今日は下着を洗濯してるからちん○んフリースタイルでズボン着用の日である!

 相変わらず必要のない、むしろ聞きたくもない情報だな。もちろんみんなには内緒だからな!

 西廻りで山を迂回(『うかい』じゃなくて左回りなんだから『さかい』じゃね?って勘違いしちゃう確率が微レ存)してた探索班、て言うか明石ちゃんが参加してる班が山の拓けたところから街らしきものを発見したとの報告が入った。

 まぁそのその前にも


「山頂に向かって左手に進んだ方向にですね、石灯籠みたいな感じの遺跡というか遺物というか異物が有ったんですけど何だと思います?」

「何故そのモノを見てない俺にソレが何なのかわかると思ったのかな?」


 などと言う報告もあったんだけどね?

 後日確認に行った『鑑定スキル持ち』の学生さんも何だかわからなかったらしい。

 そんな中俺はといえば特にこれと言った進展もなく近場で土木関係の工事、学校の外周を掘り起こして堀を造る作業に勤しんでいたりするんだけどさ。そろそろ単純労働じゃなくて変化のある仕事がしたい……。

 でも真面目にそして的確に仕事をするから雑用班の中では案外人気者だったりするんだよ?あくまでも雑用班の中だけなんだけどさ。

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