第10話 美少女のふともも
週末なのでこっそりと二話投稿・・・
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そしてそこに映し出された光景と言うか情報。
『名前:ミナモト ヒカル』『年齢:二十七歳』
うん、ここまでは何の問題もない、だってそのままだもん。
『前職:商人』『スキル:無し』
……いやいや、いやいやいやいや!
多種多様なスキルがあるって言ったよね?それなのに『無し』って何だよ『無し』って!
あと前職が『商人』ざっくりしすぎだろ!そもそも辞めても首になってもないのにどうして前職なんだよ!『職:商人』でいいだろうがよ!
それ以前の問題としてステータス画面どこ行った?
数字とかいっさい表示されてないんだけど?
大いに困惑する俺の耳に聞こえる
「では、今後の行動の指針とさせていただくためにみなさんの能力値の確認をさせていただきたいと思いますので任意の生徒会役員の前に一列になってお並びください」
の声。地獄、まさに地獄。
余所者のおっさんってだけでも若い子集団から浮いてるのにさらなる追加コンテンツ『無能』。
もうこれ、どうしようもなくね?追放とかされても不思議じゃなくね?まぁ仕方ないから学食のみんなと一緒に並ぶんだけどさ……。
どうせなら最後の想い出になっちゃうかもしれないし可愛い女の子とお話しがしたいので壇上を降りた副会長さんの前に並んでみた。
俺の名前ですか?水玄です!美しい貴女のお名前は……今は関係ない?確かに。はい、齢は二十七歳、納入業者なのですがたまたま一緒に巻き込まれたようでして……いえ、災難と言うならこの学校の関係者のみなさまも同じですので。それにこうして素敵過ぎる貴女、美しすぎる生徒会副会長さんと出会えた幸運も……そう言うのは今はいらない?確かに。スキル?無しです。はい、一つも無いです……それにステータスがですね……まったく表示されて無くてですね。確認をしても良いか?はい、どうぞ遠慮なく御覧ください。もっとこう頬と頬がくっつくくらい近くに!
「た、確かにスキルは無いですしステータスも表示されてないようですね?何でしょう、表示バグ?それともただの」
「『それともただの』の先は二人きりの時以外は口に出さないで貰えれば嬉しいかなー?なんて思ったり?」
雨に濡れた捨て猫を見るような目で、悲しそうな顔で俺に微笑む美少女。やめろ、その攻撃(表情)は俺の封印されし失恋の記憶を呼び起こす。
何だよ「まずは友達からが良かったかな?」って。じゃあ今まで二人は友達ですら無かったのかよ。赤の他人に告白してるとかいったいどんな状況なんだよ!
不必要な黒歴史(ダメージ)を膝に受け、そのままへたり込む俺。
「ああ!でも!でも車の運転が出来ます!簿記も二級ですし!頑張るから捨てないでくださいっ!!」
「わ、わかりました、わかりましたから、大丈夫ですから私の足にしがみつこうとしないでください!力いっぱい蹴り飛ばしますよ?」
チッ、あわよくば女子高生のふとももとスキンシップが取れるかと思ったのに!あと蹴られるのもやぶさかではないのでちょっと検討するお時間を頂けませんかね?
てかそこかしこからこちらに向けられる視線が痛いのは何故なんだぜ?
女子校の足にしがみつこうとする変態がいるから?どこのどいつだその裏山けしからん奴はっ!
俺?マジかよ、なかなかアクティブだな俺!
さて、そんな俺の茶番を無視して進んでゆく全校生徒の能力値の報告会。
てかこいつら……マジか?俺みたいに隠す物も失う物も、そもそも与えられたモノが何もない人間ならともかく。
いいのか?そんな自分の力を他人に赤裸々にさらしても。
「水玄さん、どうかしました?怖い顔になってますけど?」
「えっ?怖い顔?ちょっと真剣な顔になってただけなんですけど……俺の真面目顔って怖かったんだ?」
おおう、それなりにブルー、むしろダーク入ってる状況なのに漣さんが追加ダメージ、それもDOTダメージを与えてきたんだけど?
そして学校の生徒諸君の報告内容を精査(盗み聞き)したところだと『一年生』がまったく居ないんだけど。一学年だけこんな大イベントが有った日に限って全員休みとかおかしいと思うんだけど。遠足にでも行ってるのかな?
聞きたい、むっちゃ聞きたい、でもこの学校の生徒に知り合いなんて居るはずもなく。
……あ、見知った顔が一人こっちを見て……おい女子高生、どうして目が合った瞬間に視線をそらした!?確かに俺と君の出会いは良いものでは無かったかもしれない、それでも運命的な出会いだっただろうが!
てことであくまでもおどおどした感じで『俺と同じ様に周りを伺ってたその子』食堂の自販機でブ○ックを買っていた文学少女に声をかけてみる。
「いやぁ、とんでもないことになってしまいましたね?」
「うわぁ胡散臭い」
「おい、自分でもちょっとだけ自覚はあるけど出会い頭に不審者扱いするのは辞めたまへ」
「ふふっ、もっと挙動不審なおじさんかと思ったら普通のおじさんなんですね?」
「えっと、そのおじさん評価の部分はこの先どう努力すればお兄さんに変わるのかな?」
おう……、この子、地味な文系少女だとばかり思ったけどそこそこ笑顔に破壊力があるぞ?もちろん生徒会の副会長ちゃんほどでは無いけどな。
「とりあえず教えてほしいことが」
「副会長の名前ですか?」
「なんなのこの子……家政婦レベルで俺の行動を観察してるんだけど……もしかして惚れられてる?」
「はんっ」
鼻で笑い飛ばしやがったぞこいつ!?
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