第9話 生徒会が権力を持ってるとかおかしくない?

 食堂に居た全員で腹ごしらえもすませ、現実逃避気味にお茶をすすってた俺&学食メンバー。

 突然スピーカーから聞き慣れた校内放送のピンポンパンポン音がしたと思ったら


『校内の全校生徒の皆さん及び教職員の皆さん、その他校舎内にいらっしゃいます皆さん、緊急集会を行いますので校庭までお集まりください』


 と言うお呼び出し。

 いや、俺って完全に部外者なんだけど……参加しても大丈夫なのかな?

 もちろん参加しないって選択肢は無いんだけどさ。情報収集、とても大事。

 あと、その場の状況にもよるけど出来れば何らかの提案でもして『そこそこ役に立つ人間でしょ?』アピールもしておきたい。

 ここから追い出されたりとか食料の分配を減らされたりとかされないためにも。


 てことで校庭までみんなで移動することに。学食、校舎の外れにあるから校庭まではそこそこ遠いんだよなぁ。

 あとどうせこんな奇妙な事態に巻き込まれるなら共学ではなく女子校が良かったっ!ほら、女子校なら、女子校ならワンチャンあったかも知れないじゃないですかっ!

 なお俺の配達先リストに女子校は無いからそもそもの前提条件がクリア出来ていないのは置いておくモノとする。

 いや、今の状況もアレなんだよ?一緒に歩いてる女性の平均年齢にさえ目を瞑ればちょっとしたハーレムパーティと言えなくもないんだよ?とても目を瞑ることが出来ない事柄なだけで。


 てか学校の校庭で集会に参加するのなんておよそ十年ぶりだなぁ。特に感慨深いものはないけど高校生、主に女子高生がいっぱいでちょっと深呼吸しそうになった。でも同じ数の男もいるし、なおかつ俺が立つのは教員が集まるはじっこのさらにすみっこだし。近くにいる若い人は漣さんだけであとはおばちゃんしかいないのでギリギリで思い留まった。

 突然の異常事態にざわつく全校生徒。全校……生徒?何となくちょっと違和感。だって集団が二つしか無いんだもん。

 そんな中、壇上に立つのは凛とした感じの女生徒。生徒会長さんかな?あ、副会長さんなんだ?

 この状況で教師、教頭や校長じゃなく生徒会が集会を仕切るとかアニメみたいな学校だな。

 ほら、やたらと生徒会が権力持ってたりするじゃん?風紀委員が憲兵みたいだったり。


「お昼休憩の時間にも関わらず突然の全校集会、何事かと思われている方もいらっしゃいますかもしれませんが……そもそも現在この学園が置かれている状況、いきなりぐるっと高い木々に囲まれたこの状況こそが何事なのかみなさんに周知していただくために集まって頂きました」


 見た目だけでなく声もいい声してんなぁあの女の子……いや、そんなことは置いといて。

 そこから始まる学校側、というよりも生徒会側の見解。


 ・今回の異変は学校一つが対象となった『異世界転移』ではないかということ。

 ・何故その様な結論になったかと言えば一部生徒が叫んだ『ステータス・オープン』なるコマンドワードが使えたため。

 ・これにより全員『体力や魔力、筋力や素早さ』などの能力を数値として確認出来るようになったこと。

 ・能力値とは別に『スキル(技能)』と言われるものも確認できたこと。

 ・スキルは多種多様、戦闘に向いたもの、生産に向いたもの、採集や採掘などに向いたものまであるとのこと。


 が、淡々と説明されてゆく。

 うん、あまりにも荒唐無稽すぎる。戦国時代にタイムスリップするならまだしも異世界って。もちろん何が『まだしも』なのかはわかんないんだけどさ。

 まいったな……俺、ラノベは読むけどラブコメばっかりなんだよなぁ。

 小説の投稿サイト?もちろん読んでるよ?歴史モノとかホラーとか。


 アレだよ?面白いんだよ?歴史モノ。

 ここがもし戦国時代だったら今なら硝石でも石鹸でも木綿でもしいたけでも作れ……ないだろうな、きっと。だってどの作品も作り方の説明とかものすごくザックリしてたんだもん。詳しく話すのは避けてる感じ?

 でもこれだけは伝えておこう!『じゃがいもよりもさつまいものほうが良い』らしいよ!もちろん何が良かったのかは覚えていない。そもそもその時代にある芋とか里芋と山芋、そして父ちゃんがぶらぶらさせている種芋くらいのものである。いきなりのど下ネタ、すまないと思っている。

 てか学校なんだから理系の先生も居るし、校舎があるなら図書室もあるんだから別に覚えて無くても硝石とかは作れそうじゃね?


 そしてその次。何だよ『ステータス・オープン』って。27歳のギリギリ青年が大手を振って口に出せる言葉じゃないよ!隣には年の近い女の人とかおばちゃんもいる


「ステータス・オープン!」


 あ、漣さんそういうの口にできちゃう感じの人なんだ?それもなんとなくちょっと嬉しそうな感じで。

 てかホントに漣さんの前に何か光モノが浮かんでるんだけど!?もちろん光モノって言ってもアジとかサバじゃないからね?そもそも浮かんでるのは『ヒカリモノ』じゃなくて『ヒカルモノ』だしさ。

 ビッグでも無いウエーブに乗り遅れると今後一人で辱(はずかし)めを受けるかも知れないので気は進まないが……俺も「す、すてぃたす……おーぷん?」と半疑問形で、もちろん他人には聞こえない程度の小さな声で唱えてみる。

 目の前にあんなモノ(光る板?)が浮かんだらモロバレなんだけどね?

 だって、なんだかわからないけど、おじさんにはとてもはずかしい行為なんだもの。

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