第8話 文学少女とスキル

本日は12時(お昼)と18時(今回)の二回更新です♪


―・―・―・―・―


 聴こえてくるのは皇子と王子が会話する声。


「そもそもアレなんだよなぁ……閉じ込められた空間、高校生、何も起こらないはずもなく。まず行動を起こすのはサッカー部だろうか?あいつら新人マネージャーを歓迎会と称してカラオケボックスと言う密室に連れ込み……(ピー)で(ピー)なことをした後写真をばら撒かれたくなければこれからも言うことを聞くんだぞと脅迫して」

「サッカー部ってそんなことしてたんだ!?てかどうして優がそんなこと知ってるのさ?」


「もちろん本で読んだから?」

「それ、もしかしなくてもただのエッチな漫画かなんかだよね?」

「まぁな!次はもちろん野球部。あいつらエースで四番であるキャプテンが彼女であるマネージャーとキスしてる写真でマネージャーを脅して」


「……もしかしてなんだけどその情報も」

「そう、本で読んだ」

「だからそれもただのエッチな漫画だよね?優、帰宅部なのに女子マネージャーに憧れでもあるのかい?ああ、あと、うちの学校のサッカー部も野球部も『何となく部室とかユニフォームとか放置されてるシューズが臭そう』って理由で女子マネージャーが入らなかったから男子がマネージャーしてるからね?」

「えっ、つまり彼らは薔薇が咲いてる的な関係なの!?」

「そういう意味じゃないんだよなぁ」


「まぁでもそいつらはまだマシな方なんだよ」

「とりあえずソースが『エッチな漫画』な話じゃないことを祈るよ」

「クッ、なら俺の言うべきことはこれ以上何もないな!」

「君はどうして少しキレ気味なのかな?あと情報源がエッチな漫画だけとかあまりにも酷すぎると思うんだけど」


 とりあえずそこそこ大きな声でそう言う話をするのは控えた方がよろしくてよ?

 私はまったく興味は無いけどその道のプロのお姉様方がざわついていらっしゃいますからね?

 怖いよね腐女子……。あと玻璃洲はもっと一般的なエッチ漫画を読むべきだと思いました。

 いや、今はカレーの性癖の話なんてどうでもいいのよ、もっと、もっと有益な情報はないのかしらっ!?


 そこから気配を殺して教室中に意識を飛ばして聞き耳を立てること約十分。コウモリか。

 有益な情報……かどうかはわからないけど色々(盗み)聞き出したところによると、ステータスの数値は現状似たりよったりではあるけどスキルの種類や持っている数にはずいぶんと差があるらしいこと。

 特にキラキラ……じゃなくて工藤君のグループは頭二つ分くらい性能が抜けているイメージだった。


 なんなのかしらっ?皇子にせよ王子にせよ一緒にいるエセお嬢様にせよ恵まれた資質(顔の良さ)だけでも十分に優遇されているのにチートまでガン積みされてるとかおかしいのではないのかしらっ!

 でもエセお嬢様よりも私のほうが心持ち『胸囲』は大きいんだからねっ!

 ……ウエストもお顔も完敗してる?○すぞ?あら、私としたことがお下品な言葉遣いを……オホホ。


 まぁそんな持つ者に嫉妬していても何も進まないので持たざる我らの話。もちろんその中でもかなり差は生まれるんだけど。私はかなり恵まれたほうみたい。

 傾向としては『それまでの行動』がスキルに影響してるのは確かだと思う。

 持ってるスキル、剣道男子が『両手剣術と速度向上』だったり弓道女子が『弓術と器用さ向上』だったりするもん。

 そんな中で気になるのは科学部男子の『雷魔法と魔力上昇』とか野球部男子の『片手鈍器と命中率低下』。科学部はまぁ……私もどうしてだか魔法が使えるからいいんだけどさ、野球部、当たらない鈍器振り回してるだけとかただの野蛮人じゃないかな?


 そんな中で特に異彩を放っていたのは我らが帰宅部代表熊田くん。

『二刀流、上級剣術、峰打ち、居合抜き』皇子達がいなかったら完全に主人公キャラである。

 てかどうして二刀流なんて……もしかして『二刀流(性的な意味で)』なのかな!?

 とりあえず彼にはしばらく近づくのを止めておこうと思いました。

 あ、もしかしたらあれかな?雨の日に折り畳み傘を二本振り回してたのが何らかの評価をされたとか?

 ちなみに二分くらいで二本とも折りたたみの繋ぎ目からポッキリと折れて涙目になってたけど。


 あの時、彼が叫んだ「世界よ……これが折り畳み傘ならぬ折れたためない傘だ!!」の名言が今でも忘れられない。

 お気づきであろうが『折れた為』と『畳めない』の二重の意味になっている。うん、特にわざわざ説明するほど上手くもなかったよ。

 何にしろ私と熊田くん、同じ帰宅部仲間(週に一度程度の朝の挨拶以上の会話をしたことはない間柄)として彼には是非とも頑張って頂きたいものである。


 そんな突然の事に唖然としたままの外囲先生以外、生徒がやいのやいのと騒がしい教室の中、そろそろお昼の時間だしお腹すいたなぁ、勝手にお弁当食べてもいいかなぁ、と思っている私の思惑とはウラハラに校内放送の『例の鉄琴音(ピンポンパンポン)』が響き渡り


『校内の全校生徒の皆さん及び教職員の皆さん、その他校舎内にいらっしゃいます皆さん、緊急集会を行いますので校庭までお集まりください』


 と、聞き慣れた声で放送部のお姉さんが二度繰り返す。

 うう……どうやら私のお弁当は今しばらくの間お預けらしい。

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