第6話 どうして電気が点いているのか
うん、まぁあれだ、現実逃避はこれくらいにして
「漣さん、外の様子がすべからくおかしいんですけど・・・どう思います?」
「どうしました?ゾンビとかテロリストでも見つけちゃいました?あとすべからくの使い方がおかしいとおもいますよ?」
お、おう、その独り言、漣さんも聞いちゃってた感じなんだ?もし男なら頭部を強打して忘れさせてるところである。
「いえ、そうではなくてですね。とりあえず窓、窓の外をみてみてみて貰えます?」
「みてが一回多かったような・・・えー・・・魚っぽい顔の人が窓にベッタリと張り付いてるとかそう言う・・・ちょっと水玄さん!?外の景色が私の知っているモノとは全くの別物なんですけどっ!?」
いや、だから最初からそう言ってるじゃないですか。
「ああ、これはアレですか?マジシャンがエッフェル塔とか消しちゃう感じの」
「いえ、俺はそんな日○広告審査機構みたいな感じの名前をしたマジシャン的なことは出来ないです」
「ですよね。そもそもアレって建造物が消えたんじゃなく、スタッフぐるみでコッソリと部屋を回転させて見えている方角を変えただけですもんね?ですから他の建物が見えないように夜間の暗闇を利用するのがポイントらしいですよ?」
「ちょっと全国のマジシャン組織から命を狙われたくないので大掛かりなマジックのネタばらしは控えてもらっていいですかね?」
確かにその通りかもしれないけど『スタッフぐるみ』とか言い方が物凄く人聞きが悪いです。
あれだから、あくまでもマジックはエンターテイメントだから。推察も含めて楽しむものだから!
いや、どうして俺が手品師のフォローをしないといけないんだよ。
俺の好きなマジシャンなんて手品○輩くらいだよ?じけん○ゃけんとかだが○かしも好きだったけど。ん?それぞれの作品の繋がり?逆に聞くけどおっぱい以外に何があると言うのか?
あと『こっそりと部屋を回す』とか言うそこそこのパワーワードよ。さらに大人の女性の口から出る『エッフェル塔』はそこそこエッチな言葉だと思いました。
「水玄さん、とりあえず怒りませんので一旦もとに戻してもらえませんか?」
「あれ?どうして疑われちゃってるのかな?どうみても人畜無害な俺がこんな天変地異を起こせるわけが無いじゃないですか……」
そもそも現状で一番困ってるのって帰るすべと言うか帰る道が無くなった俺なんだからね?
習性的なものなのか、何となく困った状況になるとついつい取り出してしまうのはもちろんスマートフォン。ちなみにスマホの省略形をスマフォと呼ぶのは体中の力が抜けそうになるので止めていただきたい。
「てか電波は普通に県外……じゃなく圏外になってますね。えっと、食堂の電気とかガスは大丈夫そうな感じです?」
「ええ、電気は見てもらった通り点いてますしガスも……出てますね。あ、お水も大丈夫みたいです」
今のところライフラインは無事と。当然いつまで持つかはわからないけど。
てか、本当に何がどうなってこの状況なんだろう……これ以上は一人で出来そうなことも無いし……暇そうな先生でも探しに職員室にでも向かうか?
いや、そうじゃない。そんなことよりも今、もっと大切なことがある。そう、それは
「とりあえずカツカレー大盛りで!あと肉うどんと単品で唐揚げっ!漣さんもおば・・・おねえさん方も早めのまかないを済ませておくことをオススメします!!」
大急ぎで食券を購入して今のうちに力いっぱい腹ごしらえをしておく事だと思うんだ。
だってもしもここから出られないとなったらご飯は良くて配給制、最悪は部外者の俺なんて食べさせてもらえないからね?
うん?見つかる前に食材をトラックに隠しておけば良い?それはこの状況だと一番やっちゃいけないことなんだよなぁ。後々不信感を持たれる行動は自分を孤立させるだけだからね?非常事に食料の隠匿は駄目、絶対。もちろん隠しきれるなら問題無いんだけどさ。
食休み後、本校舎の方、学生さん達がかなりざわざわとし始めたがまだ大きな動きはないみたいなので俺にも出来そうなこと、ジュースを買って一休み。飲み終わった紙パックをプコプコいわす……ではなく、フェンスの内側から外の状況を確認する。
うん、外の景色一面どうみても森、植生的にはアマゾンみたいなみっちりと植物が詰まった熱帯雨林ではなくそれなりに木々に間隔のある富士の樹海……いや、カナダの大森林って感じかな?
木の高さまではわからないけど木の幹の太さから考えてもかなりのものだろう。
もちろん車で走れるような道もないし地面にはそれなりの高低差があるし背の高い草花も生えているのでオフロードバイクでも移動するのは相当な困難だろう。むしろ歩くのですら苦労するレベル。
そしてそんな大森林と校舎の間には測って整備したかのように10mほどの幅がある土がむき出しになった空間。うん、ここなら普通にトラックでも走れそうだ。
もちろん勝手に外に出て走ったりはしないんだけどね?富士の樹海は知らないけどカナダの大森林にはでっかいヘラジカとかビーバーとかアライグマ、いや、そんなあんまり害の無さそうな動物だったらいいんだけどさ。ハイイロオオカミとかハイイログマとかも居るじゃないですか?
ハイイログマに関しては裏門にある程度の門扉で留められる気がしないし狼なら普通にジャンプで乗り越えられそうだし。
そこそこ聴こえてくるんだよね、鳥っぽい鳴き声とか。ざわざわした感じの草擦れの音とか。
あれ?フェンスの内側にいても思ってたほど安全でもないんじゃね?
いや、そもそもここがカナダだと仮定するのもおかしいんだけどさ。マジでどこなんだよ一体……。
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