第5話事故か殺人か?

黒井川警部と戸川は現場に向かった。高さ20mほどの橋だった。

ポイントにはサンダルと、空のウイスキーボトルが転がっており、川は上流が雨なのであろう、茶色く濁っていた。

黒井川は、橋の欄干とボトルに指紋が付着していることから、事件は事故として捜査するだろうと思った。

そこに、部下の川崎が現れた。

「警部、こりゃ泥酔した女の事故ですね、

聞けば彼氏さんと婚前キャンプと言うじゃないですか。かわいそうに。宅間さんが」

「黒井川さん、我々の出番はなさそうです」

「ん、ワトソン君は今の話しに納得したの?」

「はい」

「詰めが甘いなぁ。欄干から手の指紋だけで自殺は考えられんよ。150cm位あるこの欄干には、手と裸足の足の指紋も残らなきゃいけない。まず、手だけでは上れない高さを疑問視している。ま、司法解剖の結果を待つか」

「先輩、悪いクセですよ。何でも事件に結び付けるという」


そこに、制服警察官が川崎に一通の紙を渡した。

川崎の顔色が変わる。

「どうした、川崎見せてみろ」

黒井川は解っていた様に、肺の中の水は水道水と判明した。川の水は昨日から濁っていたのだから。

「警部、殺人事件ですね」

「あぁ、キャンプ場の出入り口、裏手を警戒しろ。後、キャンプ客は1人も外に出すな!」

「はっ」

「僕は、キャンプ場にいた全員から調べていく。ワトソン手伝ってくれ」

「分かりました」

「川崎、特に宿泊者を警戒しろ」

こうして、またも、黒井川の休暇中に殺人事件に巻き込まれたのであった。

何者かが、浴槽で山根由理を溺死させ、橋から遺棄したのだ。

死亡推定時刻は昨夜の 7時から10時の間。

しかし、山根は夜中の12時まではキャンプ消えたファイヤーの前で酒を飲んでいたはずだった。

それを黒井川はランタン下の山根を目撃していたからだ。

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