第3話 いざ街へ
𩿎宙の後について行って、段々と足から伝わる感触が変わってきた。ふかふかの草原からレンガに続く乾いた地面。レンガと地面の境目には茶色いローブを纏った青年が二人。片方は資料で見たことがある。金で雇った、街の中の臨時協力者だ。
(門番……?どっちも能力者ってことか)
「お客様連れて来たよ~!!」
そう言って、𩿎宙は小走りで二人のもとへと向かっていく。
門番の外見は、片方が黒髪のベリーショート。もう片方が金髪の刈り上げが入ったツーブロック。黒髪の方は目つきが厳しく、金髪の方は柔和な雰囲気が特徴的。
(……臨時協力者、あの黒髪なんだよな)
資料と現実を何度見比べても、”裏切り”の三文字を想起させるにはまず程遠い容姿だ。
「サレン。シスターが待ってたぞ」
「ごめんごめん」
𩿎宙の小走りに合わせて後を追いかける。𩿎宙は黒髪に小言を言われていそうな様子だ。
「あ、置いてっちゃってごめん」
「いや、大丈夫。初めまして粕谷 京谷です」
そう言って、黒髪の方に手を差し伸べる。
ちらっと俺を睨んでから、にっと笑って俺の手を取る。
「ようこそ。カメの中の街【ニフラム】へ。シスターから話は聞いている。俺は【ショウ】。よろしく」
「あぁ」
手を放し、手の中で渡されたものをポケットにしまう。
(手癖が悪いな意外と……)
そう思いながら金髪と握手する。
「初めましてな~。わては【キレイ】。ショウと一緒にここの番を任されとる。よろしくしてな~?」
へらりと、なんというかかなりうさん臭くキレイは笑う。
「よろしく頼む。俺も呼びやすいように呼んでくれ」
「ほぉけ?ならきょーくんでええか?」
「あぁ。ショウは?」
「普通に粕谷で呼ぶよ。それよりサレン。シスターからのおつかいなんだろ?早くしないと怒られるぞ?」
「あ、そうそう!それじゃあ二人ともまたね!京谷君行こ!ついでに街を案内するね!!」
「お、おぅ」
𩿎宙に手を引っ張られて、二人の間を抜けてレンガに足を踏み入れる。
小さく、小さく、ショウの子声が聞こえた。
「何があっても自己責任だ。シーク」
その言葉を耳に焼き付けて、𩿎宙についていく。
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