酒飲んだテンションのやつ
おしだ
やまなしおちなしいみなし
今流行りの異世界転生すればいいのに、と、思った。
だってそうでしょう?
聖女だったり悪役だろうと由緒正しき令嬢だったり。
現代日本の常識と照らし合わせて摩訶不思議な能力を持ってようと持ってまいと自分の力で幸せになれる可能性が高い。
私だって車に轢かれた。
トラックにではなく軽車両だが。
幸か不幸か今生きてる世界では死ねずに足の骨折だけで毎日を謳歌している。
私は正直疲れていた。
20XX年からの感染症、戦争、ニュースサイトを開けば暗い話題ばかり。
毎日憂鬱だった、そしてそんな時に起きた事故だったのだ。
久びさに仕事帰りふわふわとお酒が入って夢見心地。
駅から家まで数分の道を歩いていた。
雨が降っていた、黒い服を着ていた、少しでも酒を飲んでいた。
悪いのはタイミングか。
もしも轢かれたのが大型トラックだったら転生出来たのかもしれない。
もしも轢かれたのが自転車なら怪我も軽かっなのかもしれない。
この事故は現実逃避している私に考えうる1番嫌な現実を突きつけた。
ただ願う。
あの事故は嘘なのだと、そう信じたい。
嘘であったなら私はSNSでキラキラしていて。
そして、そして。
現実と想像もつかない世界で泣いた。
心も体も疲れているのは解っていたが涙が止まらなかった。
私を轢いた運転手は逃げ去った。
きっと彼も全ての責任から逃げたかったのだろう。
私が助けを求めた公安組織もそっぽを向いた。
きっと先に私よりも重要な案件があったのたろう。
私はまだ死ねないから悪役令嬢にもまさかヒロインにもなれない。
怪我をして痛々しい足を見ながらまた私は逃げる。
きっとあの時に観た彼女達はこうしていた。
そう考えて逃げても逃げても残るのは傷だけ。
しかし疲れると考えてしまう。
「もしかして今なのかもしれない」
王子様も居ないしガラスの靴なんてない。
だから自分で捕まえに行かないと。
そのためには1日でも早く怪我を治さないと。
「可哀想」と同情してくれる神様も現実の友人も居ない。
だから腹を刺そうとした刃を降ろす。
もう嫌だ。
明日はこの世界から逃げれるだろうか。
ただ1つの願いを胸に眠りにつく。
明日はみんな不幸になりますように。
酒飲んだテンションのやつ おしだ @kagrouinu
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