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リューが見つけたこの植物は、「L-1」と名付けられた。


いずれたくさんの植物が他の地からも見つかるかもしれない。


希望を見つけた僕たちは、時々遠くへ出かけて行っては、植物がないか探して回った。


もちろんリューを連れて。


だって彼女は幸運の女神かもしれないのだから。


だから植物が見つからなくても、僕たちは笑っていられた。


彼女と一緒に出かけることが楽しかった。




そのうち「L-1」も数を増やし、毎日施設の全員が食べられるくらいになっていた。


コンベヤから出てくる彼女の食事は回数を減らすようにしていった。


彼女がそれを望み、赤い実を毎日食べた。


僕たちも毎日赤い実を食べた。


僕たちにその必要はなかったかもしれない。


僕たちの体に合わせて作られた栄養源が、必要な量だけ、毎日夜に摂れるのだから。


だけど、赤い実を食べることは必要だと思えた。


僕たちとリューと、同じことを毎日繰り返す。


それがなんだか嬉しかったのかもしれない。




そして、彼女はずいぶん、大きくなった。


僕たちとは違うスピードで命を燃やし続けていた。




ある日、施設からそう遠くないところに星が一つ落下した。


僕はリューと一緒にそれを見に行った。


「きれいだね!」


リューはそう言っているようだった。


おかしな物質は出ていないようだったが、危ないから近づきすぎないようにしようね、と、彼女を連れて施設に帰った。




ある日、落下した星の付近で新しい植物を見つけた。


もちろん彼女が。


だから名前は、「L-2」になった。


それに誰も反対しなかった。


「L-2」もまた施設で育てられ、黄色い実をつけた。


順に食べたが誰も体に不調を感じなかったし、新しい味と感触に、みな喜んだ。


そうして、また彼女は大きくなった。




ある日、空を見上げると色がおかしかった。


雲の動きも早い。


なにかが起こりそうな気がするが、なにかはわからない。


気にしすぎかもしれないが、リューを外に出さないように気をつけた。


「あらあら、お散歩したいと思ったのに残念ねえ」


そう言っているような気がした。


この頃、リューの思っていることが随分具体的に想像できるようになってきた。


合っているかを確かめる術は、ないけれど。


リューは少し、小さくなった気がする。




ある日、島に嵐が来た。


この施設は少々の災害ではびくともしない作りになっているようだが、彼女は少し怖がっていた。


何日もすることがなく退屈だったので、古い文献のデータを掘り起こし、彼女にお話を聞かせてあげた。


相変わらず言葉は通じないが、絵を見せゆっくり解読してやると、なんとなく彼女にも意味は伝わったようだ。


時折こちらをにっこり見ては、先をせがむ。


文献は山ほどある。


嵐の中でも、僕たちは退屈せずに済んだ。


彼女はまた、小さくなったような気がした。


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