次の一手

「で、どうだった?」


居酒屋の半個室でビールジョッキを片手に

親友の七海がニヤリと笑う


既婚者向けの出会い系サイトをすすめてきた張本人だ


ベタベタせずに一定の距離感を保ち

相手のどんな話も

いつだって否定しないし軽蔑しない

そして

男の好みは全くといってかぶらない

そこが20年以上友情が長続きする理由だろう


私はジョッキのビールをぐいっと飲んで

深いため息をついた


「結論から言うと‥最後までは、出来なかったんだよね」


「ん?最後までは‥ってどこまでしたの?」


テーブルに両肘をついて前のめりになる七海に

顔を少し近づけて声のボリュームを落とす


「‥痛くて、入らなかった」


つられて七海も小声になる


「下手くそだったの?」


「いや、そうゆうわけじゃない」


「あ、大きすぎたとか?」


「大きかった‥顎、外れそうだった」


七海が口に含んだビールを吐き出しそうになって口元をおさえた


「あ、じゃあ最後はお口で?」


「してあげようとしたんだけど

俺は大丈夫だから無理しないで‥って

だから少し世間話して解散」


「へぇ‥そこまでしといて我慢できるってすごいね」


「私の方がショックだったよ‥

もう女として終わっちゃったのかな‥って」


「そんな‥まだまだこれからでしょ

また会おうとかは?」


「次は色んなもの使ったりして試してみようとか話してたけど

うーん‥なんかそこまで‥」


「気持ちがノらない?好みのタイプじゃなかった?」


「まぁ‥若くは見えるけどそれなりにおじさんって感じ」


「みっちゃんはイケメンマッチョ好きだもんね。

だからおじさんじゃ興奮できなかったんでしょ」


「イケメンマッチョは好きだけど‥私なんかもう相手にされないよ」


「あらら‥なんて弱気なことを

昔はモテる男ばっかりいって

結局遊ばれて泣いてたじゃない」


「子供産んだら胸は垂れるし腹も出るし

肌はかっさかさになるし

どんどん自信なくなってくよ」


「そんなに?私は産んだことないから知らないけどさぁ‥

ちょっと丸くなったくらいでしょ」


「だって旦那が私のこと見て

その腹やばいよって笑うんだよ」


「ひどい旦那‥

どうせまた外で女と遊んでんでしょ

みっちゃんも負けてないで遊んでやんなよ」


「別に対抗したいわけじゃないけど‥

またジムでも通おうかな‥でも結局いつも長続きしないんだよなぁ」


「やっぱりそこは男性に見てもらって励ましてもらないと」


また七海が悪い顔をしてニヤリと笑う


「まぁ‥ねぇ‥」


そう言いながら私はジョッキのビールをぐいっと飲み干した





「さてと。次はどうしようか?」


「あ、じゃあ私はそろそろサワーに‥」


「いやいや、次のお酒もだけど。

次の一手をどうするかって話

おじさんがダメなら若い子いってみなよ

ちょっとスマホ貸してごらん」


私のスマホを取り上げた七海が

出会い系 アプリ

と勝手に検索しはじめた

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