オモテ
6時10分
目覚ましのスヌーズを止めて
横を見ると
夫と子供たちが布団の反対側の端っこに集まって寝そべっている
子供たちはパパが大好きで
眠っていてもパパの方へと体が吸い寄せられて転がっていくのだ
はだけたタオルケットを3人にそっとかけなおし
リビングへとおりていくと
ノートパソコンと
空になったビールの缶とおつまみの容器ががテーブルの上に置いたままになっていた
また仕事‥忙しくなってきたんだな
平日は朝早く出て行き夜遅く帰ってくるのが当たり前の夫は
週末だけが子供たちと過ごす唯一の時間だ
‥その週末すら最近は休日出勤が続いている
テーブルの上を片付けて
夫のお弁当と子供たちの朝食を用意していると
目を覚ました三人が寝室から降りてくる
キッチンからおはよう、と声をかけると
まだ言葉を話せない下の子供がニコッと笑い
上の子供が目をこすりながらおはようと答える
夫は子供にトイレに行くように促し着替えをさせてから自分もシャワーに入って出社の準備をする
じゃあパパお仕事行ってくるね
朝食を頬張る子供たちの頭を撫でて
今日も足早に出ていく
忙しいながらも協力してくれる
とてもいい父親。
だけど、
今朝も彼は
私の顔を一度も見ることがない
だから下の子供が生まれて以来
久しぶりに髪を染めたことにも
気づくことがないのだ。
出産して3ヶ月が経った頃、
初めて子供たちを預けて美容室に行った
帰ってきた私を見て
あれ、カラーはして来なかったの?
いつも明るめの色に染めてたのに
と聞く夫に
うん、いいの。
どうせ誰にも会わないし誰にも見られないのに染めるのもったいなくて。
と笑ってこたえた
‥
ねえ、
ねぇ、
ねえ、
ちゃんとこっち見て。
久しぶりだしちょっと暗めに染めたんだけど
もっと明るくしてもよかったかなぁ?
って聞いたら
なんて答えてくれたの?
どうして急にまた髪染めたんだろう‥
なんてちょっとは考えてくれたりするのかな?
一瞬でもいいから
私の顔をちゃんと見てよ。
その日の午後
私は初めて
出会い系で知り合った男に会いに出かけた。
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