第5話 賢者様なら……!
「よぉ、待たせたな。お姫様」
広がるのは青い翼。
見知った竜のものと似ているが、それよりも幾分か小柄なそれは、とある木こりの背から生えている。
「セイル!」
「さぁ、お嬢さん。ここが目的地だぜ、早く隠れな」
抱きかかえていた猫耳の少女をそっと降ろす。
「うん、ありがとう! セイルさん!」
「シャロール!」
これで役者は揃った。
それぞれのパートナーが感動の再開を果たす。
「なぁ、勇者とやら。派手にやっちゃってもいいよな!」
竜人になった彼は、チュートリアルのときとは打って変わって、ワクワクしている。
「あー……あんまりやると、ここらのモンスターが住処を失うからお手柔らかに……」
「わかったよ。大丈夫、俺なら一撃で蹴りがつくぜ」
青年は背中に背負っていたどでかい斧を構える。
斧も準備万端だったようで、力を込めた瞬間にキラリと光った。
「グガガガガ……!!」
「こいつぁ、とんでもねー半端者だな」
「半端者?」
佐藤が首を傾げた。
初めて聞く言葉だからだ。
「あ、あれは……あなた方がモンスターと呼んでいたあれは、人が竜の力を得ようとした成れの果てなのです」
「なるほど……」
「できれば話し合いでなんとかしたかったんだけど……」
シャロールがしょんぼりしながら言う。
「こいつはもう人の心なんてねーよ。諦めるんだな」
「……」
木こりの無慈悲な言葉が飛んでくる。
シャロールの顔がさらに曇ってしまった。
「シャロール……」
そんな彼女を心配そうに見つめるのは勇者だ。
「どうかしたんですか?」
「シャロールは……殺しあいが好きじゃないんだ」
彼女は心の優しい人物だ。
争いを好まない。
たとえ敵であっても、平和的解決策を探す。
「だから……最初はなんとかならないか僕も努力したんだけど……」
相手は初めて見る怪物だ。
どうしようもなかったのだ。
「い〜や、お前はよくやったと思うぜ。ただの人間、それも魔法も何も使わないでこいつと戦おうとしただけでもすごいぜ」
「そうだけど……僕はシャロールを悲しませたくないんだ」
相手を思いやる勇者の顔を見て、王女の心が動いた。
「なにか、方法はないんでしょうか! 賢者様なら……!」
「おいおい、いくらなんでもこの状況は……え、なんだって?」
姫様の必死の訴えに返事が来たようだ。
「なるほどな……。そんじゃあ、やるだけやってみるか」
「な、なんと賢者様は?」
「シャロール、お前のスキルを使えってよ」
「私の?」
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