第3話 おねがい!

(セ……ル……セイ……ル……)


「んん……」


 木こりはまたしても、城の中で目を覚ました。

 なんの偶然か、さっきと全く同じ光景が目に入る。


(やっと起きたね)


 親友が優しく語りかけた。

 自分はそんなに長く寝ていたのだろうか。


「さっき……変な夢を見たんだが」


 この場所で自分がナイトに殺される夢。

 どうしたことか、為す術もなく相手の剣を受け入れてしまった。

 なんというか、逆らえなかった。


(それなら、僕も見たさ)


 もし夢と同じなら。

 もうじき、あの扉が開いて……。


 ガチャ。


「……」


 ナイトが現れた。

 完全に夢と同じだ。


(セイル、一つ気になることがあってね)


「……なんだ」


 正夢にならぬよう戦闘態勢を取りながら、耳を傾ける。


「チュートリアルを開始します」


(このあと、彼は……)


「まずはステータス画面を出してください」


 よく耳を傾けると、さっきは聞き逃していたセリフが聞こえた。


(そう。問題はこのステータスなんだけど……)


 賢者が言い淀んだ。

 さすがの彼にもわからないことはあるらしい。


「出すって……どうやるんだ」


(すまない、それが僕にも……)


(目を瞑って右手を上げて! えっと、左手は下げたままね!)


 脳内に聞き慣れない声が響いた。

 けっして親友のものではない。

 幼い少女のような感じだ。


「……だれだ?」


 突然の乱入者―それも脳内への―に困惑するセイル。

 そうこうしているうちに、ナイトは腰の剣を引き抜こうとしている。


(おねがい! やらないとまた殺されちゃうから!)


 少女は必死に訴える。


(う〜ん。彼女の提案に乗ってみようじゃないか)


 賢者までそう言うのなら、仕方ない。

 青年は言われた通り、右手を上げ、左手は下げ、目を瞑り……。


(最後に「ステータス・オープン!」って言って!)


「ステータス……オープン……」


 あまり乗り気ではない声。

 だが、その声に応じてお望みのステータスが出てきた。


(へぇ……こんなもの初めてみたよ)


 目の前に出現した半透明の板には名前や職業が書かれている。

 中でも興味深いのは。


(あははっ、君のスキルは「竜人化」だってよ)


「……」


 木こりの彼は、どこが笑いどころなのだろうかと無表情だ。


(あのー、楽しんでるところ悪いんだけど、次の指示を出していいかな?)


(次の? まだやらなきゃいけないことがあるのかい?)


 相変わらず無口な青年の代わりに、親友が謎の声との対話を続ける。

 というか、賢者としては直接会話ができる相手に出会えたからか、いつもよりノリノリで話している。


(うん、まずは……)

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