第25話 捕獲

 膨れ上がった頬袋の名乗らぬゴールデンハムスターの口から、吹き矢のようにパチンコ玉が飛び出した。


 ひょいとパチンコ玉を避けた前田利家シマリスだが、突如地面から現われた長く鋭い爪の五本指に足をすくわれ前屈みに転けた。そこへ、長く鋭い爪の五本指の両手が地面から現われ、前田利家シマリスの首を締めかけた。


 前足を上げた名乗らぬタヌキが、前田利家シマリスの首に向かってヘッドスライディングした。気付いた長くて鋭い爪の五本指の両手が地面の中に引っ込んだ。


「モグラじゃな」


 名乗らぬタヌキは地面から神出鬼没に現われるその正体を悟った。


 剥製のように動かない織田信長ウサギだが、背後から飛んでくるパチンコ玉を長い耳で捉え、ひょいひょいと避けている。


「うっとうしい奴じゃ」


 ちっと舌打ちするように片髭を上下させた織田信長ウサギは、前田利家シマリスが名乗らぬゴールデンハムスターに向かっているのに気付くと、軽く地面を後足で蹴り、長い耳で持っていた刀を背後にいる名乗らぬゴールデンハムスターに向かって投げた。


 織田信長ウサギの警戒音を聞き取った前田利家シマリスは、すぐに地面にぴたりと伏せた。


 織田信長ウサギが放った刀は、名乗らぬゴールデンハムスターの眼前の地面に突き立った。


 びっくりして動けなくなった名乗らぬゴールデンハムスターの鼻を、前田利家シマリスの槍が突き刺しかけて止まった。


「捕まえた」


 意気揚々と前田利家シマリスは顎を持ち上げた。


 地面に耳を当てていた名乗らぬタヌキが、にやりと口元を歪めた。直後にはさっと移動し、激しく重たい足踏みで地面を連打した。


 地面から先程とは打って変わって動きの鈍い長く鋭い爪の五本指が出てきた。続いて地面から、突き出た鼻が出てきた。その鼻に噛み付いた名乗らぬタヌキは、地面からつまみ出すように名乗らぬモグラの全身を引っ張り出した。


 名乗らぬモグラは抵抗する気力が無いというように、大人しく名乗らぬタヌキに捕まった。


 両刀でナイフとフォークを封じ込めた豊臣秀吉リスザルだったが、フォークの三つ又の間に左手の刀が挟まれ、逆に左手の刀は名乗らぬコツメカワウソのフォークに封じ込められていた。


 ほくそ笑むように口を開けた名乗らぬコツメカワウソが、思いっきりフォークを横に振った。そのことで、強い衝撃を受けた豊臣秀吉リスザルの左手は、刀の柄を手放し、刀は飛んでいった。それと共に、ナイフを封じ込めていた右手の刀がゆるみ、ナイフは豊臣秀吉リスザルの首を切り裂く手前で止まった。フォークも豊臣秀吉リスザルの腹を突き刺しかけて止まった。


 つと、織田信長ウサギが疾風のように飛び跳ねて進んだ。


「カワウソ」


 怒鳴り上げるように鼻を鳴らした織田信長ウサギが、地面に取り残されている豊臣秀吉リスザルのヌンチャクを長い耳で拾い上げると、砲丸投げのようにくるりと回して投げ、再び疾風のように飛び跳ねた。


 呼ばれたことで驚いた名乗らぬコツメカワウソだが、余裕の表情で振り向いた。刹那、その首にヌンチャクは巻き付いた。


 余裕だった表情が焦りと変わった名乗らぬコツメカワウソは、豊臣秀吉リスザルの首を切り裂こうとし、腹を突き刺そうとした。だが、織田信長ウサギの強靱な後足が、名乗らぬコツメカワウソの横腹を強烈に蹴り上げた。


 よろめいた名乗らぬコツメカワウソの首に巻き付くヌンチャクの両端を握った豊臣秀吉リスザルは、それをぎゅっと締めた。首を絞められた名乗らぬコツメカワウソの両手から、ナイフとフォークが地面に落ちた。


「サル。わしはSDGsのニンジンじゃ」


 さらりと注文した織田信長ウサギは、さっと元の位置に戻って胸を張り動かなくなった。


「はい、はい。結果的にはわしが捕らえたことになるんじゃがな」

 首を竦めた豊臣秀吉リスザルがつと思い付いた。

「わしへの褒美はわし自身が出すことになるんじゃ」

 あんぐりと口が開いた。


 武田信玄ハトが急降下した。それを複眼で捉えた名乗らぬモンシロチョウは、自らが囮になるようにゆっくりふわふわと宙を舞った。案の定、黒色の細長い紐のようなものが名乗らぬモンシロチョウを目掛けて襲ってきた。


 優雅にふわりとかわした名乗らぬモンシロチョウの複眼は、武田信玄ハトが草むらに突っ込んだのを捉えた。

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